最終更新日 2018/04/10

排尿障害

排尿障害とは・・・

排尿障害(はいにょうしょうがい、urination disorder)は膀胱に尿をためるときに障害のある畜尿障害、ためた尿を膀胱から体外に排泄するときに障害のある排出障害に大別され、これらは同時にみられることもある。
膀胱と尿道(男性では前立腺含む)、尿道括約筋で構成される下部尿路に原因がある場合、下部尿路機能障害(lower urinary tract dysfunction;LUTD)という。
畜尿障害は多尿を除き膀胱知覚亢進、排尿筋過活動、尿道閉鎖機能低下による。排出障害は、排尿筋収縮力の低下や尿道括約筋の弛緩不十分、下部尿路通過障害が原因となる。

【症状】
症状は大きく畜尿症状、排尿症状、排尿後症状に分けられる。
■畜尿症状
頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、夜間頻尿、夜尿症など尿が我慢できない症状である。
■排尿症状
尿勢低下、尿線途絶、腹圧排尿といった尿が出しにくい症状がある。
■排尿後症状
残尿感、排尿後滴下と排尿後にすっきりしない症状を指す。
さらに畜尿、排尿障害に伴って尿路感染や結石形成、腎機能低下が二次的に生じることもある。

【検査】
排尿障害の診断と治療は問診と残尿測定だけで行うことができるとされる。
さらに排尿障害の詳細な病態を知るために尿流動態検査(ウロダイナミクス検査)が行われる。尿流動態検査には膀胱内圧測定、外尿道括約筋筋電図、尿道内圧測定、尿流測定、内圧尿流検査、残尿量測定がある。また、排尿時間と排尿量を数日にわたって記録すると、尿量や夜間尿量もわかり、治療方針を立てる上で有用である。

【治療】
排尿障害の治療は行動療法と薬物療法が行われる。
畜尿障害の治療薬は抗コリン薬が中心となる。他にα1受容体刺激薬、β3受容体刺激薬,
三環系抗うつ薬が使用されることもある。副作用として尿閉溢流性尿失禁が起こり得る。
排出障害の治療にはコリン作動薬、α1受容体拮抗薬が用いられる。男性の排出機能障害は前立腺肥大症によることが多く、その場合はα1受容体拮抗薬が中心となる。副作用として尿失禁が起こり得る。
畜尿障害と排出障害がともにあるときは畜尿障害の治療薬が排出障害を悪化させる可能性が高いため、原則として排出障害から治療する。治療前に残尿が100mL以上ある場合は間欠自己導尿と併用で薬物療法が行われる。膀胱留置カテーテルは畜尿障害、排出障害どちらにも対処できるが、尿路感染のリスクが高くなり、使用には十分な検討が必要である。

執筆: 上村恵理

長崎大学病院 高度救命救急センター助教

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