不安障害、強迫性障害|一般病棟でもよく出会う精神疾患・症状の基礎と対応のヒント

『エキスパートナース』2014年10月号<精神症状への対応>より抜粋。
一般病棟でもよく出会う精神疾患のひとつ、不安障害・強迫性障害について、基礎知識と現れやすい症状への対応をまとめました。
治療の場での精神症状へのかかわり方』で解説した基本的なかかわり方を、実際に現場で、どのような言葉かけで生かしていけばいいのかを紹介します。

 

宮内倫也
可知記念病院精神科

 

〈目次〉

 

不安障害、強迫性障害の基礎知識

不安障害、強迫性障害

 

不安障害

こころが抱えられなくなったつらいできごとの主な表現形が“不安”であり、その不安にとらわれてしまい、思考がかたくなになるものです。代表的な障害は表1の通りです。

 

表1代表的な不安障害

代表的な不安障害

 

強迫性障害

不安を解消しようと同じことを何度も思い浮かべたり行ったりします。?の確認を何度もして外に出られなくなる、汚いものに触ったのではと思って何度も手を洗う、それに生活の大半を費やします。「わかってはいるけれどやめられない」と表現できますね。

 

不安障害、強迫性障害の薬剤治療の進み方

いずれも薬剤は抗うつ薬を使います。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使うこともありますが、依存形成や耐性が問題になります。

 

不安障害、強迫性障害の経過観察とアセスメントのポイント

不安の患者さんは見ていて落ち着かない感じがしますし、やはり眠れずにいることも多いです。

 

そのような様子を確認したら、“気になることがあるか”を聞いてみます。さらに、不安にはうつ病も合併しやすいので、不安を見たら抑うつの確認も忘れずに。

 

不安障害、強迫性障害の対応のポイント

不安についてもやはり“認証”で対応します。そして「不安はなくそうと思えば思うほど強くなります」と伝え、抑うつと同様に「でも1人で抱え込み過ぎると……」という流れにしましょう。

 

こんなとき、ナースに何ができる?:頻回のナースコールがあるとき

ナースコールは押すと人が来てくれるので、孤立や不安を一時的にでも癒してくれる、“つながり回復装置”みたいなもの。つらさを何とかしのぐための表現としてナースコールを押すことはしばしば。

 

「そんなに呼ばないで!」という本音をこらえて、何か押さざるを得ない背景をくみ取る姿勢と、長期戦になるかもという覚悟が求められます。

 

事例:比喩を用いて原因を探る

もともと不安の強いAさん。入院してしばらくしてから、夜間にナースコールが多くなりました。理由を聞いても「うん。何か……」と言うだけでそれ以上を話しません。

 

そこで、まずはお昼でも夜でも、訪室時は目線を合わせて話のスピードをゆっくりにし、ナース側がゆとりをもつ姿勢をこころがけました。患者さんとナースとの間の雰囲気を柔らかくすることから始め、そしてナースコールについては、比喩を使って聞いてみることにしました。

 

  • Ns:「Aさん。変なこと聞くけど、こころのお天気って今どう? 晴れてる? 雨が降ってる?」
  • Aさん:「お天気?うーん、曇ってるかなぁ……」
  • Ns:「曇ってるんだね。お昼も夜もかな?」
  • Aさん:「お昼は少し晴れてるけど、夜は曇り」
  • Ns:「夜になると曇りなんだ。その雲はどこから来たのかな」
  • Aさん:「……この先どうなっていくのかなぁって。親も忙しくて来られないし」
  • Ns:「この先どうなるのかなっていう不安と、親御さんがいらっしゃらなくて1人になる不安があるのね」
  • Aさん:「うん」
  • Ns:「そっか。それでお天気が曇ってたんだ。ひょっとしたら、晴れ間がほしくて夜は私たちの顔を見たくなるのかな」
  • Aさん:「うん」

 

Aさんは、「自分の病気がどうなっていくのか」、そして「面会者がいない」という2つの点で不安になり、孤立感が強くなったようです。そこで医者を含めたスタッフ間で会議をし、疾患の見通しについて話をすること、ご家族に少しでもいいので面会に来てもらうこと、可能であれば外泊なども試みることなどを共有しました。

 

それらを実行すると、Aさんのナースコールはだんだん静まっていきました。

 

比喩は“良好な関係”を築いてから用いよう

こころのお天気”は幅広く使えますし、症状を的確に述べられない子どもにも有用です。ただ、最初から比喩を使ってしまうと難しいかもしれません。

 

この事例では、外堀を埋めるようにして、ナースとAさんとの間を良好にしていったことが効いていたのでしょう。

 

そして、話のなかでは、Aさんの言葉をうまく繰り返したあとに、ナース側の意見をそっと添えるような感じにしていますね。患者さんとの話では、まずこのようななぞって繰り返すという技術が大切になります。

 

ここが大切!

  • まずはゆとりをもった関係づくりが大切。
  • 言葉をなぞって繰り返しながら、“こころのお天気”を聞いて、“悪天候”の原因と解決策を見つけましょう。

 

(illustration:江田 ななえ)

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2014照林社

 

P.83~「治療の場での精神症状へのかかわり方」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2014年10月号/ 照林社

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