なぜ体温を一定に保つ必要があるの?

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。

 

今回は体温の恒常性について説明します。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

なぜ体温を一定に保つ必要があるの?

ヒトは恒温動物なので健康であれば、ー30°Cの寒波に襲われても、40°Cの熱波にさらされても、体温はほとんど変わりません。なぜ、体温は一定に保たれる必要があるのでしょうか。

 

それは、生命を維持するために絶えず行われている化学反応に関係します。体内では摂取した食物を、身体に必要な栄養素に分解したり、細胞が活動する時に必要なエネルギーに転換するなど、休みなく化学反応が行われています。その際、触媒(MEMO1)としての役割を果たすのが酵素です。

 

酵素は大変な働き者なのですが、力を発揮できる条件の範囲がとても狭いという特徴があります。

 

たとえば、酵素が触媒になって起こる反応の速度(酵素触媒反応速度)は、温度が増すにつれて増大します。多くの生物学的反応速度は、温度が10°C高くなると2倍の速度になります。

 

しかし、温度が上昇しすぎると、反応速度が遅くなります。酵素はタンパク質なので、60°Cを超えると熱変性を起こすからです。逆に、温度が10°C下がると酵素触媒反応速度は1/2の速さになります。すなわちある一定の温度を超えた場合、または、ある温度以下の場合、ともに酵素の働きが悪くなるのです(図1)。

 

図1酵素触媒反応速度に及ぼす温度の効果

酵素触媒反応速度に及ぼす温度の効果

 

そこで、体温を一定に保つ必要性が出てきます。酵素が最も活性化されるのは37°Cのときで、これを至適温度といいます。酵素がいちばん働きやすい環境をつくり出すため、体温はホメオスタシスによって一定に保たれています。

 

MEMO1触媒

化学反応のときにほかの物質の仲立ちになり、反応を早める物質を触媒といいます。触媒そのものは反応の前後で変化しません。

 

※編集部注※

当記事は、2019年4月1日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版

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