ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【5-3】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本5巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

残り少ない幸太くんとの時間を、おうちで過ごす一家。お兄ちゃんが願ったクリスマスプレゼントは……?

 

前回のあらすじ

 

持田さんと榊原さんは、幸太君の家を訪ね、沐浴の指導をしました。「だーいじょーぶよー酸素入れて手早くやれば。ほら気持ちよさそう」と、経験のある榊原さんが持田さんと母親に優しく教えてあげます。「顔色もいいねー」と順調そうでしたが、「あぁーん、あぁ~ん」と幸太君が泣き、顔色が悪くなっていきました。「あらら泣くと顔色が真っ黒に…」と榊原さんが言い、母親も「酸素酸素」と焦ってしまいました。「ナルコーシスに気を付けて…」と持田さんが冷静に指示しました。

 

しばらくすると幸太君の顔色も落ち着きました。持田さんが部屋に飾っている似顔絵に気付き、「これ…お兄ちゃんが描いたんですか?」と母親に聞きました。「そうなんです弟大好きなんですよ」と母親が言い、「かわいい…」とこぼしました。「もうねーべったりなんです」と母親が嬉しそうに言い、「この子が家にいて一番喜んでるのはお兄ちゃんなんです」と話しました。

 

母親はしょう君と幸太君について、「昨日も抱っこしてたら顔色悪くなったんでやめさせたんですけど、お兄ちゃんは私みたくビクビクしないからもー心配でー」と話し、「でもね…こんな経験できるなんて幸せです。だって…帰れないと思ってたから。本当に皆さんには感謝しています」と続けました。「いえいえ」と榊原さんが言い、持田さんも微笑みながら母親を見ていました。それから、持田さんは幸太君の今後についてとうとう母親に伝えました。

 

持田さんと榊原さんが帰り、しばらくしてしょう君と父親が帰ってきました。しょう君は部屋に入ってすぐ「こうたーしょう君だよーにぃにだよ」と幸太君に声を掛けました。「正太がもう早く会いたいって大変で」と父親が言い、母親も「おかえり」と2人を出迎えました。母親は(息が止まったら、落ち着いて…連絡してください。すぐに連絡しなくていいですよ。ゆっくり家族の時間を過ごしてもいいです。)と持田さんから伝えられたことを思い出し、(大丈夫………できる。何かあれば看護師さんがついてる…)と幸太君を抱きながら思いました。「今日ねーお風呂入れてもらったんだよ」「へーこうたと一緒にしょう君も入りたかったなー」と夫婦で幸太君を見ながら話しました。

 

そして(神様、一日でも長くこの子をこの家にいさせてください)と思うのでした。持田さんが職場で馬淵さんに幸太君のことを報告しました。「沐浴は榊原さんに任せることにしたわ…」「…そう」「……」「……」この前のこともあり、少々気まずい空気が流れています。すると、持田さんが口を開きました。「あと亡くなった時のことも今日お話しできた。お母さんちゃんと受け止めてた…」と伝えました。

 

それを聞いた馬淵さんは「すごいね…」とだけ言い、持田さんも「…うん」と返しました。援助する者と援助されるものを二分すると、そこにズレが生じて上手にコミュニケーションできなくなることがある、ということを知り、自席に戻った持田さんは(責任感から私もそのワナにはまってたのかな…)と思いました。幸太君の家を再び訪問すると、「かんごしさんみてーきのう一緒に誕生日お祝いしたよ」としょう君が写真を見せてくれました。「あら!!お父さんの!?素敵~」と持田さんが言うと、「今度はクリスマスやるの!!クリスマスになったらサンタさんがプレゼント持ってくるの」としょう君が言いました。

 

持田さんは「プレゼントは何をお願いするの?」としょう君に聞きました。するとしょう君は「いのち」と答えました。「こうたにずっと生きててほしい。だってお空にいっちゃうから」持田さんを見てはっきり言うしょう君に、持田さんは「………」と何も言えませんでした。そこへ母親がきて、「あっ…看護師さんビックリしてるよもー…」と言いました。「違うんですよ絵本があってね…亡くなった人がお空に行くっていうその本を読んで…その…あんまり仲良いから私…心配で…ちょっと説明したんです」と話す母親に「なるほど…」と持田さんは言いました。

 

(こんな小さい子でもこの子なりに理解しようとしてるんだ…お母さんもすごい…)と持田さんは思いました。その日の夜、寝ている幸太君を父親、母親、しょう君が囲み、愛おしそうに見ていました。一日もつかと言われた命は結局1か月生きたのです。

 

「かわいいねー見飽きないよ…」と父親が言うと、「クリスマスだからね」としょう君が言いました。クエスチョンマークが浮かぶ2人に「クリスマスにサンタさんに頼んでおいたから」と続けました。それを聞いた両親は顔を見合わせ、少し悲しい顔をしました。「正太…神様…いのちくれるかなぁ…」と母親が心配して言うと、「もしもらえなくてもいいよ…」としょう君が言いました。父親が「えっ」と驚くと、「こうたをプレゼントしてくれたから」と幸太君を見ながら言うのでした。そんなしょう君を見て、(大人っぽいこと言うなぁ…)と母親は思いました。「そうだね…そうだよ」「…そうね」と両親がそろって言いました。

 

夜中、皆が寝静まっているとき、ふと母親が目を覚まし、幸太君の様子を見ると、呼吸が止まっていました。(呼吸が…!!)「大変!!大変!!」と幸太君を抱きかかえて焦ります。(そうだ病院!!)とハッとしました。

 

「今思うと…あの時皆を起こして…ううん看護師さんに連絡すれば良かったんですけど…なぜか病院に連れてかなきゃって思って…」母親はその時のことを思い出し、涙を流しながら後日家に来た持田さんに話し始めました。「一人で車を運転してあの子のせて病院に向かったんですけど…途中でハッとして…車をとめてあの子を抱いてあげたんです」と、母親は言いました。

 

気付くと外は満天の星が広がっていました。

 

召されるってこういうことなんだなと思った母親は、涙を流しながら「…こうちゃんありがとうね。こうちゃんママのとこ生まれてくれて…ありがとうね。こうちゃんありがとね…」と何度も我が子に言うのでした。

 

「不思議ですよね…悲しいことなのに…あの時間は神様が私にくれたんだと思うんです。私と幸太だけの時間なんです」と、泣きながら笑って持田さんに話す母親。クリスマスツリーの近くに寝ている亡くなった幸太君に寄り添い、「こうたーこうたいっちゃったんだって…お空に…でも大丈夫だよねーまた会えるよねー」と微笑みながら話しかけるしょう君。「そうだねー会えるよ…」と涙を流しながら、でも微笑みながら言う父親。

 

この家にサンタさんは来たのです。持田さんと馬淵さんがクリスマスの夜の街を一緒に帰っています。持田さんが「私の所にも来てほしい…」と言いました。馬淵さんが「…何頼むの?」と聞くと、「特に何も……」と無表情で持田さんが答え、「ないんかい!!」とツッコみました。
※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。

【おわり】

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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