看護師派遣のしくみ
看護師派遣とは、そもそもどのような働き方?
医療機関の正職員/正社員ではなく、派遣会社の従業員として医療機関に派遣される、派遣看護師のしくみと働き方について、詳しく解説していきます。
※2015年10月改正の新派遣法に対応しました。
この記事のポイント
- 派遣看護師は派遣会社の従業員として医療機関に派遣される
- 勤務先は医療機関だが、勤務条件・待遇は派遣会社のものが適用される
- 派遣期間は「抵触日」まで。最大3年
- 抵触日が来たら別の職場へ移る
1. 看護師派遣のしくみ
看護師派遣は、看護師さんが特定の医療機関に入職するのではなく、派遣会社の従業員として、病院やクリニック、介護施設などに派遣されます。
勤務先は医療機関ですが、お給料や勤務時間、休日などの勤務条件は、派遣会社のルールに従います。具体的にはどういうことなのか、下記の図で説明していきましょう。
派遣は、派遣スタッフ(看護師のみなさん)、派遣先(各種医療機関)、派遣会社の三者間で契約が成り立ちます。
- 派遣スタッフは派遣会社と雇用契約を結ぶ(=派遣会社の従業員)
- 働く場所は派遣先の医療機関
仕事の指示は派遣先の医療機関から受けますが、給料や社会保険、福利厚生といった各種待遇・サービスは、派遣会社から提供されます。
2. 看護師派遣の派遣期間
派遣看護師は同じ職場で1日~3年間働く
派遣看護師は、自分で決めた期間だけ働くことができます。最短では1日の超短期からスタート可能。長期のものでは、数ヶ月ごとに契約を更新することで、最長で3年まで“同じ職場”で働き続けることができます。
この、最長で働ける場合の期限日のことを、派遣法では「抵触日」と言います。
まだ働きたいのに契約更新に至らなかったり、3年を超えてしまった場合、他の派遣先に移って就業を継続します。このように、ずっと同じ職場ではなく、様々な職場を経験できるのも、看護師派遣の魅力の1つです。
“同じ職場”=シフト管理や仕事の配分の管理者が同じ組織という意味
「同じ職場」というのは、勤怠管理などの労務管理や仕事の割り振りの業務配分の責任者が同じ組織(職場)という意味であって、同じ会社という意味ではありません。看護師の場合、シフト管理や仕事の配分をする人が変われば、別の職場とみなされます。
つまり、大病院の病棟なら、シフト管理や仕事の配分はフロア毎に看護師長が責任者として行われています。ですから、同じ病院内でも別のフロアなら「別の職場」と見なされるため、3年を越えても働き続けることができます(派遣契約が結べた場合に限る)。
一部の派遣先によっては3年未満で抵触日が来てしまう場合も…
「契約を更新することで、最長で3年まで同じ職場で働き続けることができます」と説明しましたが、全ての派遣先で3年まで認められるとは限りません。
派遣で働く看護師側にも、最大でいつまで働けるという“抵触日”があるように、派遣先側にも、最大いつまで派遣スタッフを雇い入れられるかという“抵触日”が定められています。
その期間は同様に3年間であるため、もしあなたよりも先に派遣スタッフとして働いている人が同じ事業所(※)に居た場合は、その人の入職日から3年後があなたの抵触日になります。
※同じ事業所とは“同じ職場”のような狭い範囲ではなく、病院内あるいは同じ都道府県内の系列病院などが該当します。厳密には雇用保険の適用事業所番号が同じであれば、全て同じ事業所と見なされます。
抵触日の例
直近3ヶ月以内にAさんしか派遣スタッフが居なかった場合
Aさんが派遣される前にBさんという人が既に派遣で働いていた場合
仮にBさんが6ヶ月働いていたら、Aさんは最長2年半しか働けないことになります。
但し、派遣先は3年ごとに職場で「派遣を今後も受け入れるか」意見聴取をする(※)ことで、抵触日を延長し、その後も派遣スタッフを雇い入れることができます。この場合、Aさんは他に派遣スタッフが働いていない場合と同様、自分自身の抵触日である最大3年が来るまで、同じ職場で働き続けることができます。
Aさんの前にBさんが派遣で働いていたが、派遣先が意見聴取を行い抵触日を延長した場合
派遣先の抵触日は延長されることがほとんど。ですが、まれに「異議あり」となり延長できなかったり、意見聴取を行わない職場では、抵触日が延長されないという事態が発生します。
※正確には派遣先が過半数労組または労働者の過半数代表者に派遣延長について異議がないか意見を聴き、3年間抵触日が延長されることになります。
なお、抵触日がいつかになるか(契約更新できる上限がいつか)は、実際に働き始める際に交わされる派遣スタッフの雇用契約書に明示されていますから、都度自分で計算する必要はありません。
一度抵触日を迎えた医療機関(事業所)は、ずっと派遣を受け入れできないの?
抵触日が来てしまった医療機関が、その後もずっと派遣スタッフを受け入れられないとしたら、看護師が派遣で働ける職場はどんどん減っていってしまいますね。
意見聴取を行わなかったり、行っても反対多数となって抵触日を延長しなかった医療機関でも、ある条件を満たせばまた派遣スタッフを受け入れられるようになります。
その条件とは、「クーリング期間」といって、派遣スタッフがゼロの状態で3ヶ月+1日以上経過することです。誰も派遣スタッフがいない状態を3ヶ月と1日継続すれば、抵触日のカウントがリセットされるため、あなたが派遣で働く4ヶ月前まで派遣で働いていた人が居たとしても、その事業所の抵触日はあなたが入職した瞬間から3年となります。
但し、派遣先の看護師の産休代替として就業する場合は「最大3年」の適用外
産休代替は、派遣先の看護師(正職員/正社員など)が産休・育休に入る間だけ、代理で入るもの。この場合は、産休・育休を取得した看護師が復帰するまでの間働くため、一般的には1年強程度となります。
また、この場合も「Aさんの産休代替として派遣で就業したが、Aさんが復帰するのと同時に今度は同じ職場のBさんが産休に入ることになり…」といった事態が発生した際は、そのままBさんの代替で引き続き派遣される場合もあるため、まれに2年・3年の派遣期間となる場合があります。
抵触日が来たら/派遣期間が満了したら…
先述の通り、抵触日を迎えてしまった看護師は、同じ職場で派遣スタッフとして働き続けることはできません。派遣先から直接雇用の申し入れがあり、それを受けた場合のみ、継続して同じ職場で働くことができます。特に申し入れがない場合は、別の派遣先で就業することになります。
抵触日がいつなのかは、あらかじめ判明しているため、一般的には抵触日が来る1~2ヶ月前から、次の職場を探すことになります。希望に合う派遣先がある場合は派遣会社の方から紹介があります。なかなか自分に合う派遣先が見つからない場合を除き、転職活動ほど負荷がかかることなく、次の職場に移ることができます。