就活中、志望する病院を探すなかで、「グループ病院」という言葉を見かけたことがある看護学生さんは少なくないでしょう。
「普通の病院とは何が違うの?」「希望しない病院に配属されることはある?」など、気になるポイントも多いですよね。
この記事では、グループ病院の仕組みや単体の病院との違い、新卒看護師として働くメリット・デメリット、就活で確認しておきたいポイントを解説します。
グループ病院とは?
グループ病院とは、複数の病院や施設を運営している医療グループに属する病院を指す総称です。
ここでは、グループ病院の特徴を簡単に解説します。
グループ病院の特徴
グループ病院は、急性期医療を担う病院、回復期・慢性期の患者さんを支える病院、専門分野に特化した病院、介護施設や訪問看護ステーションなど、同じグループ内でさまざまな領域の病院・施設が運営されていることがほとんどです。
そのため、働き方や身につく経験は配属される病院・施設によって異なります。グループ全体の規模や知名度だけでなく、実際に働く可能性のある病院がどんな役割を持っているのかをしっかりと確認しましょう。
また、全国に多くの病院を持つ大規模なグループもあれば、特定の地域で複数の病院や施設を運営している地域密着型のグループもあります。
グループ病院と単体の病院の違い
複数の病院・施設を運営する「グループ病院」と1つの病院・施設を運営する医療機関でどのような違いがあるかを比べてみました。
| グループ病院 | 単体の病院・施設 | |
|---|---|---|
| 運営 | 同一の法人・組織が複数の病院や施設を運営 | 1つの法人・組織が1つの病院・施設を運営 |
| 採用窓口 | 本部による「一括採用」と、病院別の「個別採用」がある | 病院・施設ごとの採用 |
| 配属先の決定 | 一括採用では、内定時や内定後に配属される病院が決まることもある | 応募・選考を受けた病院・施設に入職する |
| 異動・転勤 | キャリアアップや転居に合わせて、グループ内で異動・転籍できる可能性がある | 病院・施設をまたぐ異動・転勤は基本的にない |
| 教育体制 | グループ共通のキャリアラダーや集合研修を設けている場合がある | その病院・施設の機能や方針に合わせた教育が中心 |
グループ病院の主な種類
グループ病院は、大きく「公的なグループ病院」と「民間のグループ病院」に分けられます。
公的な病院グループ
公的な病院グループとは、医療法などで定められている公的医療機関※1や、独立行政法人・共済組合などの公共性の高い組織※2が運営する病院グループのことです。
代表的なものには、国立病院機構(NHO)、日本赤十字社、JCHO(地域医療機能推進機構)などがあります。
救急医療や災害医療、地域医療など、社会的な役割の大きい医療を担っていることが多いのが特徴です。
また、全国や各地域に病院があり、グループ全体で幅広い診療科や医療機能を備えている傾向があります。
※1 医療法第31条などで定められた機関
※2 独立行政法人通則法や地方公務員等共済組合法などで定められた組織
民間の医療グループ
民間の医療グループは、医療法人や社会福祉法人などが運営している病院グループのことです。
代表的なものには、徳洲会グループ、IMSグループ、AMG(上尾中央医科グループ)、TMG(戸田中央メディカルケアグループ)などがあります。
全国に病院を展開しているグループもあれば、特定の地域に複数の病院や施設を持つ地域密着型のグループもあります。
急性期病院、回復期リハビリテーション病院、慢性期病院、介護施設、訪問看護ステーションなどを運営し、地域の医療・介護を支えていることが多いのが特徴です。
看護学生が知っておきたいグループ病院一覧

ここでは、就活で目にする機会の多いであろう代表的なグループ病院を紹介※します。
※ 順不同
公的なグループ病院の代表例
国立病院機構(NHO)
国立病院機構(NHO)は日本最大の病院組織で、全国に病院を展開する独立行政法人の病院グループです。
全国を北海道東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州の6グループに分けて運営しています。
医療の提供に加えて、医療に関する調査・研究、医療技術者の研修なども行っています。がん、循環器、精神、感染症、重症心身障害、神経・筋疾患など、政策医療や専門性の高い医療を担う病院もあります。
採用情報は地域グループごとに確認できるため、就活では自分が希望する地域のグループ・病院情報を確認しましょう。
日本赤十字社
日本赤十字社は、全国で赤十字病院を運営している病院グループです。
赤十字病院は、救急医療、がんなどの高度専門診療、生活習慣病の予防、介護支援、へき地医療などを通じて、地域に根ざした医療を提供しています。
また、災害時には医療チームを派遣し、救護活動を行うなど、赤十字社ならではの活動も特徴です。
さらに、世界最大級の赤十字ネットワークを活かし、海外の災害・紛争地域への緊急救援や復興支援、開発協力にも取り組んでいます。
JCHO(地域医療機能推進機構)
JCHOは、地域医療や地域包括ケアを支えることを使命とする病院グループです。
全国の病院に加えて、健康管理センター、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、看護専門学校などを持ち、地域の医療・介護を支える役割を担っています。
急性期医療だけでなく、回復期、慢性期、在宅療養、介護との連携など、地域の中で患者さんの生活を支える医療に関わっている点が特徴です。
済生会
済生会は、医療・保健・福祉を総合的に提供する社会福祉法人です。
病院だけでなく、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、障害者福祉施設、児童福祉施設なども展開しています。
無料低額診療事業や生活困窮者支援事業などにも取り組んでおり、医療だけでなく福祉の面からも地域の暮らしを支えていることが特徴です。
その他
- 労災病院グループ(JOHAS):勤労者医療や職場復帰支援、治療と仕事の両立支援などに関わる
- JADECOM(地域医療振興協会):全国のへき地・離島を中心に病院・診療所を運営し、医師派遣や地域医療を担う総合医の育成にも取り組む
- KKR(国家公務員共済組合連合会):国家公務員の年金・福祉事業の一環として病院を運営する組織
民間のグループ病院の代表例
徳洲会グループ
徳洲会グループは、全国に病院・診療所・介護施設などを展開する大規模な民間医療グループです。
救命救急医療をはじめ、予防医療、慢性期医療、先進医療など、地域のニーズに応じた医療を提供しています。離島・へき地医療にも取り組んでおり、都市部の病院と離島・へき地の病院が連携する体制を整えています。
IMSグループ
IMSグループは、急性期・回復期・慢性期・予防医療から、施設介護・在宅介護までを展開する総合医療・福祉グループです。
関東・東北・北海道などを中心に、病院、介護老人保健施設、クリニック、訪問看護ステーションなどを運営しており、ハワイにも拠点を持っています。
TMG(戸田中央メディカルケアグループ)
TMGは、東京・埼玉・千葉・神奈川・静岡の一都四県を中心に、病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、クリニック、健診センター、訪問看護ステーションなどを展開する医療グループです。
首都圏の各エリアで、医療・介護・保健・福祉を担うトータルヘルスケアネットワークを形成していることが特徴です。急性期から回復期、介護・在宅まで、地域の中で切れ目なく患者さんを支える体制を整えています。
AMG(上尾中央医科グループ)
AMGは、埼玉県を中心に、首都圏1都6県で病院や介護老人保健施設を展開する医療グループです。
病院、クリニック、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、看護・医療専門学校などを運営し、地域でのトータルケアを提供しています。
武田病院グループ
武田病院グループは、京都を中心に医療・介護・福祉に関わる施設を展開している医療グループです。
医療機関のほか、介護老人保健施設、訪問看護、居宅介護支援事業所など、施設から在宅まで幅広いサービスを提供しています。
天満病院グループ
天満病院グループは、大阪府・兵庫県・徳島県を中心に、医療・介護・福祉の事業を展開しているグループです。近年はマレーシア・フィリピンにも事業を広げています。
医療、介護、福祉の3分野を通じて、地域の人々の生活を支えることを掲げています。
その他
- CUCグループ:医療機関の経営支援、訪問看護、ホスピス型住宅の運営などを行う医療関連グループで、近年は海外(アメリカ・ベトナムなど)にも事業を広げる
- 北九州病院グループ:北九州エリアを中心に、医療・介護・福祉を展開する
- 葵会グループ:全国で病院・介護老人保健施設・保育施設・教育機関・ホテルなどを運営する
- セコム提携医療機関:セコムと提携する医療法人が、急性期から在宅医療・介護まで多岐にわたる医療サービスを提供する
- YMG(横浜メディカルグループ):横浜北部地域を中心に関東・中部で病院・診療所、介護福祉施設などを展開する

興味のあるグループ病院を探してみる
グループ病院で働くメリット・デメリット

新卒看護師としてグループ病院で働くメリット・デメリットを整理して見ていきましょう。
グループ病院で働くメリット
- 経営基盤が比較的安定している
複数の病院や施設を運営しているため、経営基盤が比較的安定しやすいです。経営が安定していることは給与や福利厚生だけでなく、設備投資や人材確保にもつながるため、長く働く職場を考えるうえで安心材料のひとつになります。 - 教育・研修制度が整っている
グループ病院では、新人看護師向けの研修やキャリアラダーをグループ共通で用意していることがあります。同期が集まる集合研修や、段階的に看護技術を学べる仕組みがあると、入職後の成長イメージを持ちやすいでしょう。 - 福利厚生や生活面のサポートが整っていることがある
大規模な病院グループでは、寮や住宅手当、休暇制度、研修支援など、福利厚生が整っていることがあります。特に新卒で一人暮らしを始める人にとっては、寮の有無や家賃補助、通勤のしやすさも大切なポイントです。
看護師の福利厚生、何が大切?看護学生が就活で見るべきポイント - 将来的にキャリアの選択肢を広げやすい
グループによっては急性期から在宅・介護まで幅広い領域を運営しており、経験を積むなかで関心が変わっても、グループ内での異動や転籍を相談できることがあります。また、専門看護師・認定看護師の資格取得支援や、看護学校・大学を持つグループでは教育の道に進む選択肢もあり、専門性を深めたい人にとっても幅を広げやすいでしょう。


グループ病院で働くデメリット
- 希望通りの病院・病棟に配属されるとは限らない
グループ一括採用の場合、内定時や内定後に配属先の病院・病棟が決まることがあります。希望は確認されることが多いものの、各病院の人員状況や募集状況によって、必ずしも希望通りになるとは限りません。 - グループ内で異動・転勤の可能性がある
転勤の位置づけはグループによって異なり、「原則転勤なし・本人希望時のみ」の組織もあれば、キャリア形成や人員配置などのために、グループ内で異動・転勤が行われる可能性があります。希望に合えばキャリアの幅を広げる機会になりますが、勤務地を変えたくない人にとっては負担に感じることもあるかもしれません。 - 同じグループでも病院ごとに雰囲気や忙しさが違う
同じグループに属していても、病院の規模や診療科、救急受け入れの有無、患者さんの状態によって、現場の雰囲気や忙しさは変わります。グループ名だけで「どの病院も同じ」と考えず、実際に応募する病院の特徴を確認しておくことが大切です。 - ルールや手続きが多いと感じることがある
組織全体で共通のルールやマニュアルが存在することがあります。研修や勉強会への参加ルール、評価の基準、勤務・物品の管理など、グループ全体で方針や手順が決められていると、病院や診療科ごとの事情に合わせた柔軟な対応が取りにくいと感じることもあります。

就活で確認したいグループ病院の7つのポイント
採用方法や配属先の決まり方、異動・転勤の有無などは各グループ病院ごとに異なります。
入職後のギャップやミスマッチを減らすために、次のポイントは事前に確認しておきましょう。
採用方式は「グループ一括採用」か「病院別採用」か
グループ全体でまとめて採用するのか、病院ごとに採用しているのかを確認しましょう。一括採用の場合、内定後に配属先の病院が決まることもあります。希望する病院がある人は、選考時点でどこまで配属先が決まるのかを病院見学や説明会などで確認しておくと安心です。
配属希望はいつ・どのように出せるか
希望する病院や病棟がある場合は、配属希望を伝えるタイミングも大切です。エントリー時に希望を出すのか、内定後の面談で伝えるのか、研修後に決まるのかはグループによって異なります。希望がどの程度考慮されるのかも確認しておきましょう。
新人教育はグループ共通か、病院ごとか
グループ病院では、グループ共通の新人研修やキャリアラダーを用意していることがあります。一方で、配属後のOJTや夜勤開始のタイミングは、病院や病棟ごとの判断になることもあります。共通研修の内容だけでなく、配属後にどのようなフォローを受けられるのかも確認しておくと安心です。
グループ内にどんな機能・領域の病院があるか
グループ病院といっても、急性期病院が中心のグループもあれば、回復期・慢性期、在宅、介護施設まで幅広く運営しているグループもあります。グループ全体の規模だけでなく、どのような病院・施設があるのかを見ておくと、キャリアを通して経験できる看護のイメージが持ちやすくなります。
希望しない異動・転勤の可能性はあるか
グループ病院では、入職後にグループ内で異動・転勤が行われることがあります。本人の希望をふまえて異動するケースもありますが、人員配置や昇任など組織の事情で勤務地が変わる可能性もあります。特に、全国展開しているグループや複数エリアに病院を持つグループでは、異動の範囲や頻度は病院見学や説明会などで確認しておくと良いでしょう。
奨学金制度の勤務条件はどうなっているか
病院の奨学金制度を利用している人、これから利用を考えている人は、返済免除の条件を必ず確認しましょう。勤務先が特定の病院に限られるのか、グループ内の異動でも条件が引き継がれるのかは重要です。
本当に返済しなくていい?看護師向け「返済不要の奨学金制度」まとめ&注意点
引っ越しが必要になっても問題ないか
配属先によっては、引っ越しが必要になることもあるでしょう。寮の有無、住宅手当の金額などはしっかりと確認しておくことが大切です。配属先が内定後に決まる場合は、引っ越しが伴う初期配属もあり得るのかを説明会などで先に聞いておけると安心できます。
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説明会や見学会で病院を詳しく知ろう!
【Q&A】グループ病院に関するよくある疑問
最後に、グループ病院を検討するときに気になりやすい疑問をまとめました。
給与が同じとは限りません。基本給や給与規程が統一されているグループもあれば、地域性を考慮して多少違いがあるケースもあるようです。
平均夜勤回数や残業時間なども病院によって異なるため、実際の支給額は病院ごとに変わることが多いでしょう。
教育制度や福利厚生が整った環境で、安心して新人時代をスタートしたい人には合いやすいでしょう。
また、将来的に急性期から回復期や慢性期、在宅、介護など、複数の領域を視野に入れたい人にも向いています。グループ病院は、転職せずにグループ内で異動・転勤が可能なため、幅広い経験を積みたい人や、同じ組織で長く働き続けたい人にも向いている環境と言えます。
ただし、配属や異動の仕組みはグループによって異なるため、事前の確認が大切です。
多くの病院がプリセプター(指導役)やメンター(精神面のフォロー役)を配置し、新人看護師が相談しやすい体制を整えています。
これはグループ病院に限った制度ではありませんが、グループ内で共通のルールとして整備されていることもあります。
実際のサポート体制は病院によって差があるため、説明会や見学の際に確認しておくと安心です。
まとめ
グループ病院は、経営の安定面や、複数の領域を経験できるキャリアの広がりなど、単体の病院にはない魅力があります。
ただ、中心となる領域や教育制度などはそれぞれのグループ、病院で異なります。
グループ名だけで判断せず、実際に働く病院の特徴や、自分が大切にしたい条件と合っているかをしっかりと確認しながら、病院選びを進めましょう。





