特定機能病院は高度医療に特化した病院です。高度な看護を学びたい、最先端の現場で自分を試したいという看護学生にとって、成長のチャンスに満ちた場所と言えます。
この記事では、特定機能病院の特徴や他の病院との違い、看護師の働き方、メリット・デメリット、就活対策までをわかりやすく解説します。 「自分に合う職場かどうか」を見極める判断材料として、ぜひ最後まで読んでみてください。
特定機能病院のキホン
まずは特定機能病院の役割や特徴などを見ていきましょう。
特定機能病院とは?どんな役割?
特定機能病院は、高度医療の提供や新たな治療技術の開発、高度医療の研修を担う医療機関です。医療法によって明確に位置づけられた病院で、次の4つの役割を果たすことが求められています。
特定機能病院 4つの役割
- 高度な医療の提供
- 高度な医療技術の開発・評価
- 高度医療に関する医療従事者への研修
- 高度な医療安全管理体制
特定機能病院の多くは大学病院であり、教育や研究にも力を入れています。看護師にとって、日々の業務そのものが学びとなり、それがさらに次の成長へとつながる「学びのサイクル」が確立されているのが特徴です。
病床数・診療科数などの要件は?
特定機能病院として承認されるには、次のような一定の基準を満たす必要があります。
特定機能病院の要件
- 病床数:400床以上
- 診療科:定められた16の診療科
- 対象患者:紹介率50%以上、逆紹介率40%以上
- 医師数:「通常の2倍」程度。医師の配置基準の半数以上は専門医
- 薬剤師:「入院患者数÷30」以上
- 看護師:「入院患者数÷2」以上
- 管理栄養士:1名以上
- その他:集中治療室、無菌病室、医療安全管理責任者の配置など
これらの基準・条件を満たすことで、特定機能病院として指定されます。
全国の特定機能病院【一覧】
2025年4月時点で、全国には88の特定機能病院があります。約8割が大学病院ですが、がんセンターなども指定されています。特定機能病院を志望する場合はエリアのほか、その病院が特に得意とする医療分野や研究分野は何かなどを調べて比較してみましょう。
特定機能病院の一覧はこちら(厚生労働省)

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特定機能病院、ほかの病院とどう違う?
特定機能病院がどんな病院なのかを理解するには、他の医療機関と比べてみるのが効果的です。役割や働き方の違いを把握することで、志望理由にも深みが出てきます。
| 特定機能病院 | 一般病院 | 地域医療支援病院 | 臨床研究中核病院 | |
|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | 高度医療・研究・教育・安全管理 | 地域の急性期〜慢性期医療 | かかりつけ医との地域連携・紹介患者さんの診療 | 治験・国際水準の研究の推進 |
| 病床数 の目安 | 400床以上 | 20床以上 | 200床以上 | 400床以上 |
| 診療科数 の目安 | 16科 以上 | 5〜10科 程度 | 20~30科程度 | 10科 以上 |
| 主な対象 患者さん | 重症・難治症例、三次救急の患者さん | 急性期から慢性期まで幅広い患者さん | 紹介患者さんや救急医療を必要とする患者さん | 治験・研究対象の患者さん(先進医療含む) |
| 看護師の 主な役割 | 急性期看護、高度な医療機器操作、看護研究や研究補助、チーム医療 | 急性期~慢性期看護、直接ケア全般、患者・家族支援、基本的看護技術の提供 | 急性期~回復期看護、退院調整・在宅支援、地域連携 | 急性期看護、最先端医療の研究・開発のサポート |
出典:厚生労働省「特定機能病院について」「医療施設の類型」「地域医療支援病院について」「臨床研究中核病院について」
「一般病院」との違い
一般病院は、軽症から中等症の患者さんを中心に診療し、地域の日常医療を支える役割を担います。
一方、特定機能病院は、三次救急や希少疾患など、一般病院で対応が難しい高度・難治症例を積極的に受け入れるため、看護にも高い専門性が求められます。重症度の高い患者さんが中心となり、病棟・部署ごとの領域に特化した専門性の高い看護が必要になるでしょう。
「地域医療支援病院」との違い
地域医療支援病院は、かかりつけ医との連携や、退院後の在宅療養のサポートなど、地域に根ざした役割を担います。一方、特定機能病院は主に紹介を受ける立場で、超急性期や高度専門治療に集中する病院です。
看護業務も大きく異なり、関わる範囲が変わります。地域医療支援病院では地域との橋渡し的な動きも求められますが、特定機能病院ではより集中的かつ専門的な看護が求められるでしょう。つまり、紹介患者さんへの高度医療提供が特定機能病院の中心的な役割といえます。
「臨床研究中核病院」との違い
特定機能病院の中でも臨床研究中核病院に指定されている全国15病院は、国際共同研究やハイレベルな臨床研究・治験など研究活動をリードする役割を担い、新たな治療法や医薬品の開発を支えています。研究・治験がメインとなるため、臨床研究中核病院では、CRC(臨床研究コーディネーター)看護師として働く看護師も多くいます。
一方、特定機能病院は臨床・研究・教育のバランス型といえるでしょう。研究は重視されているものの、臨床研究中核病院と比べると臨床の比重が大きくなります。看護師も研究に関わりながら、その知見を現場に活かす力が身につく環境です。
特定機能病院の看護師の働き方は?
特定機能病院に勤める看護師は、実際にどんな仕事をし、日々の流れはどうなっているのでしょう。ここでは具体的な業務イメージを紹介します。
特定機能病院の看護師の役割・仕事内容
特定機能病院の看護師は、高度な医療チームの一員として専門性の高い看護を実践します。ICUや手術室、救命救急センターなど、重症度・緊急度の高い部署への配属もあり、重篤な患者さんに対応することも少なくありません。
たとえば、ECMO(体外式膜型人工肺)、人工呼吸器、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」などの高度医療機器を扱う場面では、正確な操作サポートと機器や症状に応じたアセスメントと判断力が求められます。
また、クリニカルパス作成、看護研究、後輩指導、マニュアル整備などにも携わることができ、日常業務の中に教育的な業務も含まれているのが大きな特徴です。
看護師としての「現場力」に加え、「育成力」や「探究力」も同時に磨かれる環境といえます。
1日のスケジュール例(例:日勤)
1日の仕事はルーチン業務だけではなく、突発的な急変対応やカンファレンス、ミーティングなども含まれます。以下は、日勤帯の一例です。
| 08:30 | 情報収集・夜勤看護師から申し送り | ||
| 09:00 | 午前のラウンド・バイタル測定・体位変換・ 清潔ケアなど | ||
| 10:00 | 医師の診療補助・処置・検査出し・オペ出しなど | ||
| 12:00 | 配膳・食事介助 | ||
| 13:00 | 情報共有・引き継ぎをしてお昼の休憩へ | ||
| 14:00 | 午後のラウンド・緊急入院や手術後の受け入れなど | ||
| 15:00 | 医師も含めた多職種カンファレンス・後輩指導など | ||
| 16:30 | 夜勤看護師へ申し送り | ||
| 17:00 | 退勤 | ||
特定機能病院では、1日の中でも患者さんの状態変化に迅速に対応する柔軟性が求められます。慌ただしい中でもチームで支え合いながら働けるため、実践を通して成長を感じやすい職場です。
特定機能病院で働く看護師のメリット・デメリット

特定機能病院で働くことには、看護師としての専門性や経験値を高められるという大きなメリットがありますが、一方で、業務の厳しさや負担の大きさといった面もあります。
ここでは、実際に特定機能病院で働くうえで感じやすいメリット・デメリット、さらに向いている人の特徴まで詳しく見ていきましょう。
特定機能病院の看護師のメリット
スキルの成長スピードが早い
重症例や最新治療に日常的に関わるので、観察力や判断力が自然と身につきます。クリニカルラダーなどの成長指標を取り入れている病院も多く、自分のレベルアップが目に見えてわかり、「1年でこんなに成長した!」を実感しやすい環境です。
研究や学会発表の機会が豊富
看護研究が活発で、論文作成や学会発表の機会も多数。キャリアアップや進学を考えている人には絶好の環境です。
高い知名度の「ブランド力」
特定機能病院は全国的にも知られる知名度の高い病院が多く指定されています。そんな病院での勤務経験は、転職や進学の際にも強みになるでしょう。「あの病院で働いているんですね」と一目置かれることも。
充実した教育・サポート体制
新人研修制度やプリセプター制度が充実しており、安心してスキルアップできます。先輩のフォローも手厚いのが特徴です。
特定機能病院の看護師のデメリット
専門分野に特化しすぎることも
高度な専門性を学べる反面、特定の診療科に偏った経験になる場合があります。幅広く経験したい場合は、配属や部署異動の方針を事前に確認しておくと安心です。
業務のスピード感と責任の重さ
重症度の高い患者さんが多く、診療のスピードも速いため、看護師にも迅速な判断と対応力が求められます。チーム全体の流れについていく必要があり、プレッシャーを感じやすい場面も少なくありません。
精神的な負荷が大きい場面もある
命に直結する処置や、急変・看取り対応といったシビアな現場があるため、感情との向き合い方が課題になることもあります。精神的な切り替えやセルフケアの習慣づけが大切です。

個人的にマイナスかなと感じたのは、大学病院では採血・ルート確保・経管栄養のチューブ挿入などを研修医が行うことが多いこと。手技を実践できる機会が少なく、その後に転職したときにちょっぴり苦労しました。
でも、最新の医療機器の扱いに慣れたこと、高度な病態理解を身につけられたことは特定機能病院ならではの魅力でした! 高度医療の現場経験はなかなか積めないので、貴重なキャリアだったと感じています。
特定機能病院に向いているのはこんな人
- 高度専門領域でスペシャリストを目指したい人
- 新しい知識や技術を積極的に学び、成長を楽しめる人
- 多職種と協力しながら、自分の考えを伝えられる人
- 忙しさやプレッシャーを“やりがい”として前向きにとらえられる人
ハードな環境でも「学びたい」「チャレンジしたい」という気持ちがある人には、まさにピッタリの職場です。

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特定機能病院の就活対策!志望動機&面接で“刺さる”ポイント
就活で特定機能病院を志望する際は、成長意欲やチームでの役割意識を明確に伝えることが重要です。ここでは、志望動機のポイントと、よくある面接質問への回答例を紹介します。
特定機能病院の志望動機はココをアピール
- 「最先端医療の現場でスキルを磨きたい」という成長意欲
- 「多職種連携の中で役割を果たしたい」というチーム志向
- 実習での気づきや研究活動を交えてオリジナリティを出す
特定機能病院 志望動機の例文(新卒向け)
私は貴院が持つ研究機能と教育体制に魅力を感じ、志望いたしました。実習で参加させていただいたチームカンファレンスでは、各職種が専門的な視点から患者さんの状態を検討し、看護師の皆さんも積極的にチームに貢献されていました。私もそのような多職種連携の中で、最新の治療法や医療技術を学びながら、エビデンスに基づいた看護を実践したいと考えています。特定機能病院ならではの高度で専門的な医療現場で経験を積み、チーム医療の一員として成長していきたいです
特定機能病院 面接Q&A
まとめ
特定機能病院は、看護師として専門性を高めたい人にとって、多くの学びとチャンスがある環境です。確かに忙しさや責任の重さはありますが、その分、自分の成長を実感しやすい職場でもあります。
まずは病院見学や説明会に足を運び、実際の雰囲気を感じてみるのがおすすめです。あなたらしい一歩が、未来のキャリアを築いていくはずです。

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