離職率が高い病院・低い病院って? 看護師の離職率は12% 離職の理由と傾向
看護師は離職率が高いと言われますが、実際はどのくらいなのでしょうか? 最新データと離職理由について見てみましょう。
看護師の離職率
まずは、看護師全体の離職率について見てみましょう。
看護師の離職率は約12%
日本看護協会が全国の病院を対象に行った調査によると、2019年度の看護師の離職率は平均で11.5%でした。
看護師の離職率はここ数年、10~11%台で横ばいの傾向ですが、最新の離職率は例年よりやや高くなっています。
日本看護協会は「新型コロナウイルス感染症の流行初期(2020年1~3月)の影響が及んだ可能性もある」と見ています。
一方、全職種の2019年度の全職種の平均離職率は11.4%(パートタイム労働者を除く)で、看護師の離職率とほぼ同じでした。
「看護師=離職率が高い」というイメージがありますが、ここ数年の傾向を比べてみると必ずしも「看護師の離職率は高い」とは言い切れないようです。
離職率が高い病院の特徴
離職率の高い病院・低い病院には、どんな特徴があるのでしょうか?
1小さい病院ほど離職率は高い
まずひとつは病院(病床)の規模。病床規模の小さい病院ほど離職率が高い傾向があります。
200床未満の小規模病院では、入職後の教育・研修体制が大病院ほど手厚くない場合もあり、給与などの待遇面でも不満を感じやすいことが離職につながっているとみられます。
2国公立病院より民間病院の方が離職率が高い
国公立病院か民間病院かなどによっても離職率に差があります。
例年の傾向からみると、看護師の離職率は、自治体病院や日赤病院で低め、医療法人や個人病院などの民間病院で高めとなっています。
2019年度のデータをみると、離職率が高い順に「個人」(20.3%)、「その他公的医療機関」(17.7%)、「済生会」(14.9%)でした。
一方、離職率が低いのは「公立」(8.5%)、「会社」(8.9%)、「日本赤十字社」(9.4%)でした。
公的病院よりも民間病院の離職率が高い傾向にある背景には、民間病院は都市部に多く、次の転職先が見つかりやすいことや、公的病院に比べて規模の小さい病院も多いことなどが影響しているとみられます。
新卒看護師の離職率
厳しい看護実習や国試を乗り越え、晴れて看護師として働き始めたものの、理想と現実のギャップに悩み、退職を考える新卒看護師も少なくありません。
1年目で離職する新卒看護師は8.6%
日本看護協会の全国調査によると、2019年度の新卒看護師の離職率は8.6%でした。
看護師全体の離職率と同じく、新卒看護師の離職率も横ばいが続いていますが、最新データではやや高めとなっています。
ここ数年のデータを見ると、新卒ナースは20人に1~2人が1年以内に病院を辞めているという計算になります。
「1年目で辞めちゃうなんてダメかな…」「新卒なのにすぐ辞める人なんていないよね…」と考える人は多いと思いますが、新卒でも毎年、一定の人数が離職しているんですね。
ただ、全職種の新卒者の離職率と比べると、看護師は低めです。
看護師の場合、一定期間勤務することで返還が免除される病院の奨学金を利用していた人も多く、「返還免除の期間を過ぎるまでは…」と踏みとどまるケースがあることも影響しているでしょう。
新卒の離職率が高い病院の特徴は?
新卒ナースの場合も全体の傾向と同じく、「病床規模が小さいほど離職率が高い」「公的病院より民間病院のほうが離職率が高い」傾向です。
特に「99床以下の小規模病院」では例年、新卒の離職率の高さが目立ちます。
都道府県別 看護師の離職率
看護師の離職率には「今の病院を辞めたとしても、通勤できるエリア内に医療機関が多く、次の就職先が見つかりやすいかどうか」といった地域事情も影響します。
そこで、都道府県別の離職率を見てみましょう。
全国
北海道・東北
関東
北陸・甲信越
東海
関西
中国
四国
九州・沖縄
看護師全体の離職率を見ると、最も高い東京(14.9%)をはじめ、大都市圏で高い傾向があります。
やはり地域内の病院の数が多く、転職先を見つけやすいことが影響しているようです。
一方、新卒の場合、大まかな傾向としてはやはり都市部での離職率が高いものの、上位に愛媛(12.7%)、香川(12.2%)が入るなど、調査年によってばらつきもあるようです。
看護師が離職する4つの理由
看護師が病院を辞めるのには、どんな理由・背景があるのでしょうか。
大きくわけると、主に4つの理由が挙げられます。
勤務環境に不満がある
病院は、慢性的に看護師不足で、現場は常に余裕がありません。
看護師1人あたりの業務量は増える一方です。
前残業や後残業が当たり前で勤務時間が長い、夜勤の回数が多い、心身への負担が大きくボロボロ…など、過酷な勤務に離職を決意するケースが多いようです。
また、ハードワークのわりに給料が少ない、休みの日なのに院内の勉強会が多い、時間外手当がつかないなどの待遇面の不満も、離職のきっかけになります。
人間関係がしんどい
他の職種に比べ、看護師の場合、人間関係に疲れてしまったという人は多いでしょう。
看護師という命を預かる仕事の性質上、ミスに対するお互いの目が厳しくなりがち。
忙しさや疲れからか、コミュニケーションにも余裕がなくなって、人間関係のきしみを感じるような職場では、なかなか踏ん張りがききません。
「患者さんのために、もっと自分らしく働ける場所」を探そうと離職する人も多いようです。
結婚・出産で続けられない
看護師は圧倒的に女性が多い職業。結婚や出産・育児のライフイベントを迎える20~30代は、離職率も高まります。
最近は、希望通りに育児休暇を取得できたり、院内保育所を整備したりと、復帰をサポートする病院が増えていますが、「子どもが小さいうちは復職しても夜勤ができないから」「しばらく育児に専念したい」などで、いったん看護の仕事から離れる選択をする人もいます。
スキルアップ、キャリアアップしたい
看護師はステップアップ・キャリアアップを目的とした離職が多いのも特徴です。
関心のある領域・業務に携われる病院で働いてみたい、教育・研修の体制が充実したところで認定看護師を目指したい、留学・進学したいなど、新たな成長を求めて離職する人が多いのは、資格職である看護師ならではかもしれません。
<データ参照>
日本看護協会「2018年病院看護実態調査」
厚生労働省「雇用動向調査」
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」