脳神経の画像検査

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は脳神経領域で行う画像検査について解説します。

 

野島美穂
東海大学医学部付属八王子病院看護部師長
清水貴仁
東海大学医学部付属八王子病院部看護部

 

 

どんな検査?

脳画像では、出血や炎症、腫瘍といった病巣の状態を確認し、ケアの根拠につなげることができます。

 

脳画像検査にはさまざまな種類があり、侵襲の大きさや検査時間も異なるため、特徴をおさえておきましょう。

 

単純な骨折の有無はX線単純撮影(XP;X-ray photograph)で診断ができます。外傷や出血などの救急疾患にはCT(computed tomography)、傷病の検査にはMRI(magnetic resonance imaging)が適しています。

 

 

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XP(X線単純撮影)

X線単純撮影とは、X線の透過度を利用して、身体内部の様子を画像にしたものです。空気はX線が透過するため黒く写りますが、骨、筋肉はX線が透過しにくいため、白く写ります(図1)。

 

図1頭部のX線画像

図1頭部のX線画像

 

特徴

検査が簡便で、骨の情報が得られます。

 

見逃しを防ぐために2方向以上撮影します。

 

骨折線(図2)とまぎらわしいものとして、頭蓋骨の内側を走る血管溝があります。

 

図2右側頭部のX線画像

図2側頭部のX線画像

 

 

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CT(コンピュータ断層撮影)

CTとは、X線で撮影した画像をコンピュータ処理することで、身体を輪切りにしたような断面図を得られるものです(図3図4図5表1)。

 

図3正常頭部CT

図3正常頭部CT

 

図4画像検査の断面図

図4画像検査の断面図

 

図5脳のCT画像のみかた

図5脳のCT画像のみかた

★1 慢性硬膜下血腫
★2 クモ膜下出血

 

表1CT画像の写り方

2CT画像の写り方

 

特徴

短時間(数分程度)で検査でき、緊急時やスクリーニング検査に有用です。

 

頭蓋骨評価にも適しています。脳出血や頭部外傷に特に有用です。

 

造影剤を使用すれば、脳腫瘍の診断や血管の評価も可能となります。

 

フキダシ:CTとMRIは、いずれも造影剤を用いることで、臓器の構造や小さな病変についてより精密に検査することができ、正確な診断が可能となります

 

CTとMRIの違いは表2のとおりです。また、それぞれの血管の撮影画像の違いを図6に示します。

 

表2CTとMRIの比較

表1CTとMRIの比較

 

図6CT、MRIを使った血管の撮影

図6CT、MRIを使った血管の撮影

★1 CTA(CT Angiography)
★2 脳動脈瘤
★3 MRA(MR Angiography)
★4 前大脳動脈(ACA;anterior cerebral artery)
★5 中大脳動脈(MCA;middle cerebral artery)
★6 内頸動脈(ICA;internal artery)
★7 脳底動脈(BA;basilar artery)
★8 椎骨動脈(VA;vertebral artery)
★9 外頸動脈(ECA;external carotid artery)

 

 

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MRI(磁気共鳴画像法)

MRIは放射線を使用せず、強い磁石と電磁波を使って、脳内部の情報を画像化したものです(図7図8)。

 

図7MRIの断面

図7MRIの断面

 

図8脳出血のMRI

図8脳出血のMRI

 

CTとは異なり、脳を輪切りにした水平断だけでなく、矢状断、冠状断など垂直方向に切った画像も撮ることができます(図9)。

 

図9脳腫瘍のMRI

図9脳腫瘍のMRI

 

 

特徴

少し時間がかかります(10~20分)。

 

脳や神経の詳細な評価が可能です。

 

いろいろな撮影方法があり、見たい部分や疾患により適した撮影方法が異なります。

 

造影MRIでは、血管内に造影剤を注入して脳血管をX線で撮影します。脳腫瘍や炎症性疾患(脳炎、脳膿瘍など)の詳細な評価が可能となります。

 

磁気の力を利用するため、体内金属(ペースメーカ、人工弁など)がある人は撮影できません。また、身に着けている金属ははずしてもらいます。

 

MRI画像の種類と特徴

基本的に、CTと同様に水が黒、脳が灰色に見える「T1強調画像」、白黒を逆転させたような「T2強調画像」、脳梗塞の病巣がよりはっきりわかる「FLAIR画像」の3種類をよく用います(図10)。

 

加えて、新しい病巣だけが非常に早い時期からわかる「拡散強調画像」も使うことがあります。

 

フキダシ:MRIにはいくつかの画像の種類があり、それぞれによく見えるものが異なっているため、目的に合わせた方法で撮影します

 

図10MRI画像の特徴と種類

図10MRI画像の特徴と種類

 

フキダシ:T2強調画像は、T1強調画像を白黒逆転させたような画像です

 

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DSA(脳血管撮影)

DSA(digital subtraction angiography)は、大腿動脈からカテーテルを挿入し造影剤を注入してX線撮影を行う検査です。血管内治療が同時に行われることも多いです(図11図12)。

 

図11右内頸動脈のDSA

図11右内頸動脈のDSA(digital subtraction angiography)

★1 OA(ophthalmic artery

 

図12右椎骨動脈のDSA

図12右椎骨動脈のDSA

★1 PCA(posterior cerebellar artery)
★2 AICA(anterior inferior cerebellar artery)

 

特徴

基本的に4つの血管(four vessel study:左右椎骨動脈、左右総頸動脈)を撮影します。脳の動脈を図13に示します。

 

図13脳の動脈

図13脳の動脈

 

検査時間は1~2時間程度です。

 

対象疾患は脳動脈瘤、脳動静脈奇形(AVM)、動脈閉塞、脳腫瘍の術前検査などです。

 

造影剤(ヨード剤)を使用するため、アレルギー腎機能低下に注意が必要です。

 

ビグアナイド系糖尿病薬を使用している患者さんでは禁忌です。

 

 

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SPECT(単光子放射型コンピュータ断層撮影)

SPECT(single photon emission computed tomography)は、さまざまな放射性同位元素を静脈に注射して、断層写真を撮影する検査です(図14)。

 

図14前頭側頭型認知症のSPECT画像

図14前頭側頭型認知症のSPECTSPECT(single photon emission computed tomography)画像

 

特徴

使用する放射性同位元素の種類により、脳血流や代謝を評価できます。

 

SPECTによる血流評価は準備と時間がかかるため、急性期治療の適応評価には適しません。

 

血流が多い部分は赤く、血流が少ない部分は青く抽出されます。

 

 

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PET(陽電子放射断層撮影)

PET(positron emission tomography)は、放射性薬剤を投与し、全身の細胞のうち、がん細胞と他の細胞とを区別しやすくして撮影する検査です(図15)。

 

図15神経サルコイドーシスのPET画像

図15神経サルコイドーシスのPET画像

 

特徴

一度の撮影で、ほぼ全身をみることができます。

 

放射性薬剤を投与することで、小さながんも見つけやすくなります。

 

PET検査のしくみ

がん細胞は正常な細胞よりも盛んに増殖するため、正常の細胞より多くのブドウ糖を取り込みます。

 

そのため、ブドウ糖に似た構造の放射性薬剤(FDG;fluorodeoxyglucose)を注射すると、がん細胞に薬剤が集まります。

 

それをPETカメラで撮影し、薬剤が集まっている部位をみることで、がん細胞のある場所がわかります。

 

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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