救急医療の現場で活躍するフライトナース。興味がある看護学生さんも少なくないでしょう。
一方で、「どうやったらなれるの?」「新卒でどんな病院を選べばいい?」など、目指し方に疑問をもつ人も多いと思います。
フライトナースは、新卒ですぐになれる職種ではありませんが、必要な経験を積むための最初の病院選びは大切です。
この記事では、フライトナースの仕事内容、必要な資格や経験、看護学生のうちから意識したい就職先選びのポイントをわかりやすく紹介します。
フライトナースとは?役割と仕事内容

フライトナースは、医師(フライトドクター)と一緒にドクターヘリに搭乗し、現場や搬送中に患者さんに必要な救命処置を行う救急看護師です。
待機中は基地病院の救命救急センターやICUなどで勤務することが多く、病院の内外で救急看護師としての役割を果たします。
ここでは、フライトナースの主な仕事内容と1日の流れを見ていきましょう。
フライトナースの主な役割・仕事内容
フライトナースの主な業務は次のとおりです。
- 処置や搬送に必要な医療機器・薬剤・物品の準備、点検
- 現場到着後の観察とアセスメント
- 医師の診療補助や処置の介助
- 搬送中の全身状態の観察、点滴や呼吸管理のサポート
- 患者さんのご家族への声かけや状況説明の補助
- 搬送先病院への申し送りや情報共有
- 帰着後の記録、使用した資機材の補充や点検
限られた時間と資機材の中で状況を判断し、医師や救急隊、搬送先のスタッフと連携しながら、迅速かつ的確な処置やケアを提供します。
フライトナースの1日|勤務スケジュール例
フライトナースは普段、救急看護師として救命救急センターやICUなどに所属して業務をします。
フライト当番の日のみ、ドクターヘリの要請に合わせて出動します。
| 【例】フライトナースの1日(フライト当番の日) | |||
| 8:00 | 医療機器・薬剤の点検。ドクターヘリ機内の機材、薬剤、医療器具などに不足や不備がないかを確認 | ||
| 8:20 | ブリーフィング。天候情報、スケジュールなど注意事項や情報を共有 | ||
| 9:30 | 救急外来・ICUなどで勤務しながら待機救急看護師として勤務。患者さんの受け持ちはせず、いつでも出動できるように待機 | ||
| 11:00 | 出動要請が入ると、患者さんの最低限の情報のみ確認し、医師やパイロットとともに迅速に出動 | ||
| 11:05 | 離陸後は基地病院と無線で連絡をとり情報収集。医師と打ち合わせて物品を準備 | ||
| 11:15 | 現場で初期対応。患者さんの状態観察、処置の介助、家族対応など | ||
| 11:30 | 搬送。バイタルサインの観察や処置。搬送先病院へ受け入れ準備の依頼連絡 | ||
| 11:45 | 帰着・申し送り。患者さんを引き渡し、行った処置や経過を申し送り | ||
| 12:30 | 資機材の補充・洗浄。使った物品の補充や機器の確認を行う。次の出動に備えて準備 | ||
| 13:00 | 記録。使用した資材や経過などをカルテに記載 | ||
| 16:30 | デブリーフィング。症例や出動時の対応を振り返り、改善点などを共有 | ||
| 17:30 | 業務終了 | ||
実際の流れは病院や当番体制、その日の出動状況によって異なります。
フライトナースの勤務は予測が難しく、突発的な搬送や急変対応が日常的に発生します。
新卒でフライトナースになれる?必要な資格と経験
新卒でいきなりフライトナースになることは、基本的にはないと考えておきましょう。
フライトナースになるための基準を確認した上で、必要な経験とスキルを身につけられる病院に就職することが近道になるでしょう。
フライトナースに求められる資格・経験
厚生労働省「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」では、フライトナースは次のような要件を満たすことが望ましいとされています。
- 救急医療の臨床経験と知識を有している
- 心肺蘇生法および外傷初期治療について、十分な知識・技術を有している
- ドクターヘリ事業従事者研修等を受講している
また、日本航空医療学会フライトナース委員会は、フライトナースに以下のような選考基準を示しています。
- 看護師経験5年以上、救急看護経験3年以上、または同等の能力があり、リーダーシップがとれる。
- ACLSプロバイダーおよびJPTECプロバイダー資格、もしくは同等の知識・技術を有している
- 日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講している
※ACLSプロバイダー:心停止や重い不整脈、脳卒中などの心血管エマージェンシー対応を学ぶ医療従事者向けの資格。
※JPTECプロバイダー:搬送前の外傷初期対応を学ぶ救急隊員・医師・看護師向けの資格。
実際の選考基準や育成の流れは、病院ごとに異なる場合があります。
ただ、フライトナースは看護師の資格を取ってすぐに就ける仕事ではなく、救急分野で十分な経験を積んだうえで目指すことができるキャリアということは間違いないでしょう。
フライトナースになる最短ステップ
新卒ですぐにフライトナースになることは難しいですが、最初の就職先や配属先の選び方によって、目指しやすくなる可能性があります。
ここでは、フライトナースを目指す看護学生さん向けに、フライトナースになるための最短ステップを紹介します。
STEP1:救急経験を積みやすい病院を就職先に選ぶ
病院選びをする際は、救命救急センターやICUなど、急性期の経験を積みやすい環境が整っているかどうかが重要です。
必ずしも希望の領域に配属されるとは限りませんが、高度な救命救急医療を学べる病院に入職することがフライトナースになる第一歩になります。
「できれば転職はしたくない」という方は、ドクターヘリを運航・管理する「基地病院」であるかどうかも優先条件にしましょう。
STEP2:救急外来・ICUなどで経験を積む(最短5年程度)
入職後は救急領域で、急な病気や事故・災害によるけがなど、緊急度の高い患者さんに対する医療処置やケアを学びます。最短で5年程度の経験が必要です。
日々の業務を通して、正確な観察力やスピーディーな判断力、適切な処置スキルを身につけていきます。
【新卒向け】救急看護師に向いてる人チェック!仕事内容・必要スキルを徹底解説
ICU看護師になるには?看護学生が知りたい向き不向き・やりがい・仕事内容
STEP3:教育プログラムを受ける
院内や日本航空医療学会のドクターヘリ講習会をはじめ、ACLS・JPTECプロバイダー資格のプログラムなどを受講し、必要な知識を身につけます。
フライトナースの選考条件や育成の流れは病院によって異なるため、見学会や説明会で確認してみるのも良いでしょう。

病院の見学会・説明会に行ってみよう
STEP4:院内の育成・選考に進む
それぞれの病院が設ける必要な経験や資格を満たしたあと候補者に選ばれ、院内研修や選考に進んでいくのが一般的です。
具体的な選考方法は病院ごとに異なりますが、救急看護の知識に関する試験や技術チェック、症例レポートなどが実施されるようです。具体的な内容を説明会や見学で確認しておけると良いでしょう。
フライトナースに向いている人は?

「興味はあるけど、自分がフライトナースとして働けるのか不安…」という人に向けて、ここでは、救急の現場で求められる適性の傾向を紹介します。
フライトナースに向いている人の特徴
- 救急領域に興味・関心がある
「急変対応を学びたい」「緊急度の高い患者さんに関わる看護に興味がある」と強く感じている人は、フライトナースの仕事にやりがいを感じられるでしょう。 - 臨機応変に動ける
救急の現場では、患者さんの状態や周囲の状況に応じて、その場で判断しながら動くことが大切です。予定外のことが起きても「今何をすべきか」を考えて動けた経験のある人は、その力を活かせるでしょう。 - チームで連携しながら動くことが苦にならない
フライトナースは、医師や救急隊、搬送先のスタッフなどと連携しながら働く仕事です。グループワークや実習で、「周りと相談しながら進めるのが苦ではない」「役割分担して動くのが好き」と感じた人は向いているでしょう。 - 緊張感のある状況でもやりがいを感じられる
緊張感のある場面での判断や対応が求められます。実習や演習、課題が重なって大変なときでも、「しんどいけれど学びがあった」「達成感があった」と感じられる人は、多忙な現場でも前向きに働けるでしょう。
向いていないかもしれない人の傾向
- 急な変化にストレスを感じやすい
急な出動要請が入ったり、現場の状況に合わせて対応を変えることが多い現場です。予定外のことが続くと強いストレスを感じやすい人は、負担が大きくなるかもしれません。 - 体力的に不安がある
頭をフル回転させて動き回る必要があります。体力面に不安がある人は大変に感じることもあるでしょう。 - 多重タスクが苦手で混乱しやすい
患者さんの状態観察、処置の介助、情報共有などを同時に考えながら動く力が求められます。マルチタスクが得意でない人は、負担を感じる場面があるかもしれません。 - 緊張感のある場面で不安になりやすい
救急現場や搬送中など、緊張感のある場面で対応する仕事です。プレッシャーがかかると強い不安を感じやすい人は、慣れるまでは大変に感じることもあるでしょう。
ただし、こうした傾向があるからといって、フライトナースに向いていないわけではありません。
救急外来やICUなどで経験を積む中で、判断力や対応力が身についていくこともあります。

フライトナースを目指す人の志望動機の書き方

フライトナースを目指していること自体は、志望動機として伝えて問題ありません。
ただし、すぐにフライトナースになりたいと伝えるのではなく、「まずは看護師としての基礎的な技術を学び、救急の現場で経験を積みながら成長したい」という姿勢を示すことが大切です。
ここでは、フライトナースを目指す人の志望動機のまとめ方と、考え方がわかる例文を紹介します。
志望動機を書くときの3つのポイント
- 救急の領域に興味を持ったきっかけ
実習や授業などを通して、なぜ救急や急性期看護に関心を持ったのかを伝えます。 - なぜこの病院なのか
救命救急センターの有無や教育体制など、自分の目標と病院の特徴を結びつけて書きます。 - 実現したいことや意気込み
将来の目標に加えて、まずは救急の現場で経験を積み、学んでいきたい姿勢を伝えます。
【例文】
私は将来、救急現場で患者さんを支えられる看護師になりたいと考えています。
実習で、急変リスクのある患者さんを受け持った際、わずかな状態の変化を見逃さずに観察し、すぐに報告・対応していた看護師さんの姿を見て、限られた時間の中で適切に判断して動くことの大切さを実感しました。この経験から、救急や急性期看護への関心が強くなりました。
貴院は救命救急センターを有し、急性期看護を学べる環境と教育体制が整っているため、将来の目標につながる経験を積めると考え、志望いたしました。
入職後は、救急領域で経験を積み、患者さんの状態を的確にとらえる観察力やアセスメント力、チームで連携して動く力などを着実に身につけ、将来的には推奨資格などを取得してフライトナースを目指したいです。
フライトナースの給料は?
厚生労働省によると、看護師全体の平均年収は約524万円です。基本的にはフライトナースもほぼ同じ相場とみてよいでしょう。
ただし、病院によってはフライトナースに以下のような手当がつく場合があります。
- 搭乗手当
ドクターヘリへの搭乗回数や勤務内容に応じて支給 - 特殊勤務手当・危険手当
特殊な環境での活動や、緊張感の高い業務に対して支給
手当の名称は病院によって異なりますが、このような手当がつく場合、一般病棟の看護師より年収が高くなることもあるでしょう。
具体的な給与規定については、募集要項などの資料で確認しておくことが大切です。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」

気になる病院の資料請求をしてみる
病院見学で確認したいポイント
病院見学会は、パンフレットや採用サイトだけでは分からないことを確認できる貴重な機会です。
将来フライトナースを目指したい人は、救急領域で経験を積みやすい環境があるかを確認しておくことが大切です。見学では、次のようなポイントを見ておきましょう。
- 新卒で救急外来やICUに配属された実績があるか
- 将来的に救急部門へ異動できる可能性があるか
- 救急の専門的・高度なスキルを学べる研修会などはあるか
- フライトナースを目指せるキャリアパスがあるか
質問する機会があれば、次のような聞き方がおすすめです。
「新卒で救急外来やICUに配属されることはありますか」
「将来的に救急部門を希望した場合、異動の機会はありますか」
「フライトナースを目指す方は、どのような経験を積んでいることが多いですか」
フライトナースになる目標を伝えたうえで、そのためにどんな経験を積めるかを知りたいという姿勢で聞くと、意欲を示すことができるでしょう。
まとめ
フライトナースは、ドラマのような出動場面だけでなく、機材点検や救急外来での勤務など、地道な積み重ねの時間が欠かせない仕事です。
また、新卒ですぐになることは基本ありません。
ただ、看護学生のうちから就職先や配属先の考え方を意識しておくことで、将来につながる経験を積みやすくなります。
まずは、気になる病院の見学や説明会に参加して、救急領域を学べる環境があるかを見てみましょう。

病院の見学会・説明会に行ってみよう





