「HCUって聞いたことはあるけど、実際どんなところなんだろう?」
「ICUとは何が違うの?」
そんな疑問や不安を抱えている看護学生さんもいるでしょう。
HCU(高度治療室)は、ICU(集中治療室)よりも重症度の低い患者さんを対象にした病棟です。
それでも一般病棟に比べて急性期度が高く、「高度急性期の看護」を経験できる職場の一つです。
この記事では、HCUの役割やICUとの違い、仕事内容、向いている人の特徴ややりがい・大変さなどを、就活中の看護学生向けにわかりやすく解説します。HCUへの理解を深め、職場選びや面接対策のヒントにしてください。
そもそもHCUとは?
HCUは「High Care Unit(ハイケアユニット)」の略で「高度治療室」などと訳されます。
HCUはICUと一般病棟の中間的な病棟という位置付けのため、「ICUほど重篤ではないけれど、一般病棟では心配」という患者さんが対象です。
具体的には、以下のような患者さんを受け入れます。
- ICUでの治療を受けて状態がやや安定した患者さん
- 救急搬送された後、一般病棟では受け入れが難しい患者さん
- 大きな手術の後、集中的な術後管理が必要な患者さん
対象疾患の限定はなく、幅広い領域を扱います。HCUは、ICUと一般病棟の中間的なポジションとして急性期医療を支えており、近年多くの病院で設置が進んでいます。
ICUとHCUの違いを比較
ICUとHCUの違いをわかりやすく整理してみましょう。
| ICU(集中治療室) | HCU(高度治療室) | |
|---|---|---|
| 看護配置 | 2対1 | 4対1または5対1 |
| 主な対象患者さん | 生命維持に危険がある最重症患者さん(意識がない患者さんが多い) | ICUほどではない、あるいはICUでの治療は脱したものの、重症化のリスクがある患者さん(意識のある患者さんが多い) |
| 看護内容 | 集中治療のサポート、生命維持装置(人工呼吸器など)の管理やモニタリング、緻密な観察とケア、緊急処置対応 | 高度な治療のサポートや術後管理、中等度の呼吸・循環管理、継続的な観察 とケア、急変対応、長期臥床による精神面へのケアなど |
| 平均在室日数 | 2~5日程度 | 3~10日程度 |
| 全国の病床数(概数) | 約6,000床 | 約8,000床 |
出典:厚生労働省「集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会について」「入院(その6)高度急性期入院医療について」一般社団法人日本集中治療医学会「各都道府県別 ICUおよびICUに準ずる治療室のベッド数」
HCUで扱う主な対象疾患
HCUでは疾患の種類に関わらず幅広い領域を扱います。一般的には以下のような患者さんが対象です。
- 循環器系疾患
:脳血管疾患、心筋梗塞、急性心不全、大動脈解離、肺血栓塞栓症など - 大きな手術の術後管理
:心臓・脳・呼吸器の手術後、開腹手術後など - 救急疾患
:重症外傷、中等症熱傷、急性呼吸不全、急性中毒、ショック状態など - 敗血症などの重症感染症、多臓器不全
- 一般病棟での呼吸・循環状態の悪化
HCUでの看護師の仕事って?

HCUで働く看護師は、疾患の知識はもちろん、患者さんの小さな変化に気づく観察力と先を読む力、医療機器の操作技術、そして患者さんや家族への心理的サポートなど、急性期看護の中でも広範かつ実践的なスキルが求められます。
HCU看護師の主な業務
HCU看護師の主な業務・仕事内容をまとめました。
高度な医療機器の操作や管理
人工呼吸器や除細動器など、患者さんの命に直結する医療機器を扱うため、安全な操作やメンテナンスが必要になります。
急変対応
患者さんが急変した場合、医師の指示に従って薬剤投与などの緊急処置や心臓マッサージ、除細動器操作などの救命処置も担うため、冷静かつ迅速な対応が求められます。
術後・急性期患者の全身管理
点滴・酸素療法・ドレーン管理などの侵襲的処置を行いながら、呼吸・循環・意識レベルなどを多角的に観察しながらケアを行います。
バイタルサインなど全身状態の頻回な観察と記録
HCUの患者さんは重症化リスクが高く、急変が起きやすいため、こまめな観察と早期対応が重要です。
医師や他職種との密な情報共有・連携
診療密度の高いHCUでは、医師の回診、多職種カンファレンスなど、一般病棟よりも密な連携が求められます。
患者・家族への説明や精神的サポート
入退院・転棟のサイクルが早いため、限られた時間での関係構築や不安軽減も担います。転棟に伴う申し送りや引き継ぎなどの業務も多くなります。
これらの業務は観察力や判断力、業務の優先順位づけ、そしてチームワークが必要とされる領域です。
日勤スケジュール例(8:30〜17:00)
新人のうちは先輩とペアで行動することが多く、時間ごとのバイタル測定や全身観察、点滴やドレーンの管理、記録、申し送りなどが中心です。
| HCUで働く看護師のスケジュール例(日勤) | |||
| 8:30 | 情報収集・夜勤看護師から申し送り・救急カートのチェック | ||
| 9:00 | バイタルチェック・観察・ドレーン管理・吸引・清潔ケアなど | ||
| 10:00 | 医師の回診介助・治療方針についてのカンファレンス・検査出し・オペ出しなど | ||
| 11:00 | バイタルチェック・観察・看護記録・一般病棟への転棟出しなど | ||
| 12:00 | 交代で休憩 | ||
| 13:00 | バイタルチェック・午後の観察・看護記録など | ||
| 14:00 | 手術後の受け入れ・状態観察 | ||
| 15:00 | バイタルチェック・観察・多職種カンファレンス | ||
| 16:30 | 夜勤看護師への申し送り・看護記録 | ||
| 17:00 | 退勤 | ||
夜勤スケジュール例(16:30〜翌9:00)
HCUでは夜勤帯でも看護配置4対1が維持されており、夜間でも患者さん4人に対して看護師1人が基本です。そのうえで、少人数で効率よく動くことが求められ、チームワークと冷静な判断力が重要になります。
| HCUで働く看護師のスケジュール例(夜勤) | |||
| 16:30 | 情報収集・日勤看護師からの申し送り | ||
| 17:00 | バイタルチェック・観察・ドレーン管理・吸引・点滴管理など | ||
| 18:00 | 夕食の配膳・介助・与薬・口腔ケアなど | ||
| 19:00 | 交代で休憩 | ||
| 20:00 | バイタルチェック・観察 | ||
| 21:00 | 消灯・看護記録 | ||
| 23:00~5:00 | 2〜3時間ごとにバイタルチェック・看護記録・交代で休憩 | ||
| 6:00 | バイタルチェック・観察・早朝のケア | ||
| 8:30 | 日勤者へ申し送り・看護記録 | ||
| 9:00 | 退勤 | ||
HCUで働く魅力と大変さ|やりがいと現場のリアル
「HCUは大変そう…」「でも成長できそう」という気持ち、どちらも本音ではないでしょうか。ここでは実際に働く先輩看護師の声を交えながら、HCUならではのやりがいとリアルな大変さを紹介します。
HCUの魅力・やりがい|看護師として成長できる場
急性期の観察・判断力が身につく
幅広い疾患の術後管理や急変対応を通じて、的確な観察力と判断力を養うことができます。
全身のフィジカルアセスメント能力が向上する
各種モニターやドレーン類、全身状態などを細かく観察して、患者さんの身体を総合的に把握する力が身につきます。
看護技術を幅広く習得できる
一般病棟にはない高度な医療機器を扱うことから、人工呼吸器管理、CHDF(持続的血液濾過透析法)、各種ドレーン管理など、より専門的な技術が身につきます。
患者さんの回復過程を間近で見られる
重篤な状態から回復していく患者さんの姿を見ることで、大きなやりがいを感じられます。
チームワークの良い環境で働ける
緊張感のある現場だからこそスタッフ同士の結束が強く、お互いにサポートし合う文化があります。
HCUで働く先輩たちの声


通常なら中堅になってから学ぶ技術を、1年目から身につけられるのは大きなアドバンテージと言えるでしょう。
HCUの大変なところ|責任感と緊張感のある環境
急変対応への緊張感とプレッシャー
患者さんの状態が急変する可能性があり、常に緊張感を持って業務にあたる必要があります。
時間ごとの観察と記録業務の多さ
頻繁なバイタルチェックや詳細な記録が求められ、業務量が多くなりがちです。
患者さんとじっくり関わる時間の不足
医療処置や観察業務が中心となるため、患者さんとのコミュニケーション時間は限られる傾向があります。
夜勤や高い看護必要度による体力的負担
重症患者さんの看護は体力的にも精神的にも負担が大きく、特に夜勤時の責任は重大です。
常に最新の知識をアップデートしていくことが必要
最新の医療技術を扱うHCUでは特に、常に新しい知識や技術を身につける努力が求められます。
HCUで働く先輩たちの声


HCUは慣れるまでは大変ですが、新人のうちは先輩と一緒にほぼマンツーマンで対応します。また、院内研修や勉強会が充実しているなど、学習環境が整っている職場が多いでしょう。
HCUに向いている人って?|こんな人が活躍してます

「HCUを希望したいけど、私に向いているかな…?」と不安に思うこともあるかもしれません。HCUに向いている人の傾向を知って適性を考えるヒントにしてみてください。
実際に活躍している人の特徴
小さな変化に気づける観察力がある人
バイタルサインや表情、会話の微妙な違いなどを見逃さず、早期対応につなげる力が求められます。
状況に応じて冷静に動ける人
急変やトラブル時でも焦らずに対応できる落ち着きがあると、患者さんにも安心感を与えられます。
コミュニケーション力と協調性がある人
医師や他職種との連携、家族への説明など、関係づくりが多いため、対人関係力が活かされます。
集中して物事に取り組むのが得意な人
観察や記録の正確さが求められるため、注意力と持続力のある人が活躍しやすいです。
こんな人は苦労するかも?
急な変化にストレスを感じやすい
HCUでは患者さんの状態が急に変化することがあるため、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。緊張感のある場面でプレッシャーを感じやすい人は、最初は負担になることもあります。
マルチタスクが極端に苦手
観察・処置・記録・報告などを同時進行で行う場面が多くあります。複数の業務を並行して進めるのが苦手な人には、最初はハードルが高く感じられるかもしれません。
そんな方も「苦手=ダメ」ではありません。プリセプター制度や先輩のサポートがあれば、自分のペースで成長していけます。病院見学やインターンシップで教育体制や実際の雰囲気を確かめてみましょう。

病院の見学会・インターンシップに行ってみよう
HCUがある病院を見学するときのポイント
HCUは実習ではあまり関わることがない分、見学時にどんな点を見るかが大切です。以下のようなポイントに注目すると、自分に合うかどうかが見えてきます。
- HCUの雰囲気(忙しさ・落ち着き・チームの関係性)
- 看護体制(受け持ち人数・教育担当の有無)
- 夜勤体制(2交代・3交代、休憩のとりやすさ)
- 看護師の年齢層や雰囲気(質問しやすさ)
- 看護必要度や記録方法(紙?電子?)
見学時は遠慮せずに質問し、実際に働く自分をイメージしながら観察することが大切です。

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HCUを経験するとどんなキャリアにつながる?

HCUでの経験は、さまざまなキャリアパスの基礎になります。
たとえば…
- ICU、救急外来など、高度急性期の経験をさらに広げる
- 呼吸療法認定士や集中ケア認定看護師、救急看護認定看護師などの資格取得でスペシャリストを目指す
- HCUで幅広い疾患をケアした経験を生かし、ジェネラリストとして急性期病棟で活躍する
高度急性期に関心があるなら、ファーストキャリアにHCUを選択するのは最適かもしれません。病院説明会やインターンシップなどの機会を利用して情報収集してみてください。
まとめ|HCUは「わからない」から「知ってる」へ
「HCUってどんなところ?」と曖昧だった方も、少しイメージがわいてきたのではないでしょうか。
HCUは確かに責任の重い現場ですが、一般病棟とICUの中間的な立ち位置だからこそ、幅広い知識と技術をバランスよく身につけることができます。
配属先は必ずしも希望通りに選べないこともありますが、HCUに興味がわいたら、ぜひチャレンジしてみてください。

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