地域包括ケア病棟とは？一般病棟との違いと看護師の役割を解説！

「地域包括ケア病棟ってよく聞くけど、実はあんまりわかってない…」という看護学生さんも多いのではないでしょうか？ 

この記事では、地域包括ケア病棟の特徴について、急性期病棟や回復期リハビリテーション病棟との違い、地域包括ケア病棟で働く看護師の役割などをわかりやすく解説します。

地域包括ケア病棟がある病院への就職が気になる方はぜひ参考にしてみてください。

地域包括ケア病棟とは？

地域包括ケア病棟は、急性期から在宅復帰への“橋渡し”を担う病棟です。

高齢化が進む中、急性期病院から自宅・施設へとスムーズに移行するための中間的な機能をもつ病棟が必要となり、2014年に地域包括ケア病棟が誕生しました。

地域包括ケア病棟の役割と機能は？

地域包括ケア病棟は、主に次のような役割を担っています。

1）急性期を過ぎた患者さんの受け入れ

• 急性期の治療後も医療的なフォローが必要な患者さんへの対応
• 症状が安定し、自立した日常生活を送るためのリハビリ提供

2）在宅療養を行っている患者さんの受け入れ

• 在宅療養中に状態が悪化した軽・中等症の患者さんへの対応
• 家族の介護負担を一時的に軽減するための短期入院（レスパイト入院）

3）在宅復帰支援

• 生活の場に戻るための準備（ADLの維持・向上、生活環境の調整）
• 退院支援・調整（家族を交えた退院計画、在宅サービスの導入支援）

地域包括ケア病棟は、急性期病棟のように集中的な治療を行うわけでも、回復期リハビリテーション病棟のようにリハビリに特化するわけでもありません。

医療・看護・リハビリ・福祉をバランスよく組み合わせて、患者さんと家族が安心して生活を送れるよう総合的にサポートするのが地域包括ケア病棟の特徴です。

どんな患者さんが入院するの？

対象疾患の限定はありませんが、高齢の患者さんが多く、主に次のような方が入院します。

また、在宅介護を行う家族が一時的に介護を休むための「レスパイトケア」目的の入院も含まれます。

地域包括ケア病棟と一般病棟との違いは？

「一般病棟との違いって何？」「どっちが大変なの？」そんな疑問を持つ看護学生さんに向けて、わかりやすく違いを解説します。

	急性期病棟 （一般病棟）	地域包括ケア病棟	回復期リハビリテーション病棟
主な目的	病気やケガの治療 （急性期治療）	急性期治療後の 在宅復帰支援	急性期治療後の 機能回復・在宅復帰支援
特徴	医療的な関わりが中心	「医療＋生活支援」のバランス型	ADL自立に向けて長期的に関わる
対象患者	積極的な治療が必要な患者さん	急性期を過ぎて、在宅復帰のためリハビリ・経過観察・療養などが必要な患者さん ※対象疾患なし	急性期を過ぎて、在宅復帰のため集中的なリハビリが必要な患者さん ※対象疾患あり
看護の特徴	迅速なアセスメント、医療的なケア、急変対応、処置など	在宅復帰を見据えた包括的なケア（リハビリ・退院支援・他職種連携など）	リハビリ支援、・ADL自立支援、社会復帰支援など
入院期間	【7対1】 16日以内 【10対1】 21日以内	最大60日	最大180日（疾患ごとに異なる）
看護配置	7対1 または 10対1	13対1	13対1 または 15対1

出典：厚生労働省「令和6年度診療報酬改定説明資料等について」

病棟の目的の違い

一般病棟と言う場合、「急性期病棟」を指すことが多いでしょう。急性期病棟は「治療する」「症状を改善する」ことが主な目的です。
一方、地域包括ケア病棟は「住み慣れた場所に戻るための準備をサポートする」のが目的です。ゴールが違うことで、看護の視点や関わり方も変わってきます。

対象となる患者さんや入院条件の違い

急性期の一般病棟は、手術直後や治療中で状態が安定していない患者さんを対象としています。
一方、地域包括ケア病棟は、急性期治療を終えて比較的状態は安定しているものの、もう少し経過観察が必要な患者さんや、在宅療養まではまだ難しい状態の患者さんが対象です。

看護のアプローチ・役割の違い

急性期の一般病棟では、観察や処置のスピード・正確さが求められますが、地域包括ケア病棟では、より患者さんの生活に寄り添った看護（例：ADL支援、退院調整、多職種連携など）が重要になります。

制度上のルール・入院期間・看護配置の違い

地域包括ケア病棟は入院期間が最大60日と定められていたり、リハビリの単位数に制限があるなど、制度的なルールが細かく決められています。こうした制度の理解も、看護の質につながります。

回復期リハビリテーション病棟との違いは？

地域包括ケア病棟と回復期リハビリ病棟は、どちらも「在宅復帰」を目指す病棟ですが、明確な違いがあります。

回復期リハビリ病棟は、脳血管疾患や大腿骨・骨盤等の骨折といった特定の疾患をもつ患者さんが対象で、リハビリに重点を置いています。1日最大3時間のリハビリが提供されるのが特徴です。

一方、地域包括ケア病棟には特定の対象疾患はなく、医療・看護・リハビリ・生活支援をバランスよく行います。医療依存度がやや高い患者さんも含まれ、柔軟な支援が求められる点が特徴です。

地域包括医療病棟（2024年新設）との違いは？

2024年度診療報酬改定で「地域包括医療病棟」が誕生しました。地域包括ケア病棟と名前がとても似ていますが、まったく別の病棟です。

この地域包括医療病棟は「軽症・中等症の高齢の救急患者」の受け入れに特化しています。

看護配置は10対1。急性期と回復期の中間的な機能を持ち、地域包括ケア病棟よりも医療寄りの看護が求められるのが特徴です。

地域包括ケア病棟で働く看護師の役割とは？

地域包括ケア病棟に配属されたら、どんな働き方になるのでしょうか？
ここでは、地域包括ケア病棟で働く看護師の業務内容や1日の流れを具体的に紹介します。

地域包括ケア病棟の看護師の1日

地域包括ケア病棟で働く 看護師のスケジュール例（日勤）
8:30	情報収集・夜勤看護師から申し送り
9:00	バイタルチェック・点滴交換・清潔ケア
12:00	配膳・食事介助・与薬・口腔ケア・記録
13:00	お昼の休憩
14:00	リハビリスタッフなど他職種とのカンファレンス
15:00	患者家族と面談・退院調整
16:30	記録・夜勤看護師へ申し送り

午前中は情報収集、バイタルサイン測定、清拭や配膳などのケアを行います。午後はカンファレンスや退院支援の準備、他職種との連携が増える時間帯です。

患者さんとコミュニケーションを取る時間も比較的じっくり確保できるほか、医師・リハビリスタッフ・MSW（医療ソーシャルワーカー）などと密に連携し、チームで患者さんを支えるのが特徴です。

地域包括ケア病棟に向いている人・やりがい

「新卒で地域包括ケア病棟ってどうなのかな？」。そんな迷いや不安のある看護学生のみなさんへ、地域包括ケア病棟の魅力と向いている人の特徴を紹介します。

地域包括ケア病棟に向いている人って？

急性期よりも在宅に近い地域包括ケア病棟は、患者さんの退院後の生活を見据えた関わり方が求められます。地域包括ケア病棟に向いている人の特徴は、たとえば次のようなタイプです。

入院期間が急性期病棟よりも長いので、患者さん・ご家族との信頼関係を築く時間があるのも魅力。

「まずは急性期で基礎を固めて…」と考える方も多いですが、地域包括ケア病棟は新卒看護師にとっても学びの多い職場です。

やりがいと大変さ、どちらもリアルに知っておこう

退院調整や在宅復帰のサポートが大切な地域包括ケア病棟。患者さんが退院していく姿を見守れるのはやはりやりがいがある反面、他職種や患者さん・ご家族との調整力、コミュニケーション力が求められる場面もあります。

思い通りにいかないときもあるけれど、そのぶん“看護の幅”が広がる職場でもあります。

まとめ

地域包括ケア病棟は、「治す」だけでなく「その人らしく生活できるよう支える」より幅広い視点での看護が求められる職場です。

就活中は急性期を意識する方が多いと思いますが、「急性期からのスタート」だけが正解ではありません。地域包括ケア病棟でしか得られない経験やスキルもあるので、「ここなら自分らしい看護ができるかも」と関心を持ったら、ぜひ病院説明会やインターンシップに参加してみましょう！