整形外科の看護師は、骨折や脱臼などの運動器疾患を抱える患者さんに対し、術前・術後のケアやADL(日常生活動作)の支援、リハビリ職との連携などを通じて、回復を支える重要な役割を担います。
この記事では、これから就職を考える新卒の看護学生さんに向けて「整形外科って自分に向いてる?」「仕事内容は?」「どんな成長ができる?」といった疑問に答えます。
整形外科ってどんな科?看護の役割と特徴

実習や授業で整形外科を学んでいても、いざ就職先として整形外科を選ぶとなると具体的なイメージが湧きにくいものです。
ここでは、整形外科の基本的な特徴と、看護師の役割をわかりやすく紹介します。
整形外科とは?扱う疾患と患者層
整形外科は、骨・関節・筋肉・靭帯など「運動器」に関わる疾患やけがを対象とした診療科です。
さらに、整形外科の中でも医師によって専門分野が分かれています。主な専門分野は以下のとおりです。
- 脊椎(腰椎ヘルニア・脊柱管狭窄症など)
- 手(手根管症候群・ばね指など)
- 肩(五十肩・腱板断裂など)
- 肘(野球肘・テニス肘など)
- 股関節(変形性股関節症・大腿骨頭壊死症など)
- 膝関節・足関節(変形性膝関節症・アキレス腱断裂など)
- 骨・軟部腫瘍
- 関節リウマチ
- スポーツ整形
- 骨粗しょう症
配属される病棟や担当医によっても関わる疾患や患者層、看護が変わってきます。たとえば、スポーツ整形なら比較的若い患者さんが多く、骨粗しょう症なら高齢者との関わりが主体となるでしょう。
病院によって変わる整形外科の特徴
一般的な整形外科では、骨折や関節疾患の患者さんが中心となり、「動けない状態から歩けるようになる」といった機能回復の過程を支える看護が多いです。
一方、より専門的な大学病院などの整形外科では、骨肉腫や軟部肉腫といった悪性腫瘍の患者さんも受け入れているため、化学療法看護や緩和ケア、時には終末期ケアも含まれることがあります。
また、脊椎センターや人工関節センターなど特化した整形外科では、より専門的な術前・術後の観察やケア、痛みのコントロール、機能回復支援などが中心です。


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整形外科看護師の仕事内容とは?
ここでは、整形外科の中でも新卒看護師が配属されることの多い「病棟勤務」に焦点を当て、仕事内容を詳しく紹介します。
整形外科病棟での主な看護業務
多くの患者さんが「動くのがつらい」「生活動作が不自由」といった課題を抱えているため、身体的な支援だけでなく、心理的なケアや退院後の生活を見据えた支援も重要になります。
看護師の主な業務は以下の通りです。
- 術前・術後の全身状態の観察、バイタルチェック
- 疼痛コントロール、体位変換、褥瘡予防
- 排泄・清潔・移動などADL(日常生活動作)の支援
- リハビリスタッフと連携した離床・歩行介助
- 転倒・再骨折予防のための環境整備や指導
- 入退院支援やカンファレンスへの参加
- 不安を抱える患者さんの心理的サポート
- 家族への説明・ケア支援、退院調整
これらのケアを通じて、患者さんの身体的・心理的な回復をサポートし、生活機能の回復を目指すのが整形外科看護の特徴です。
整形外科病棟で働く看護師の1日
ここでは、病棟で日勤をする看護師の1日の例を紹介します。実際は病院によって差がありますが、概要を描いています。
| 8:30 | 情報収集・夜勤看護師から申し送り | ||
| 9:00 | バイタル測定・処置(創処置やシーネの包帯巻き直しなど)・清潔ケア・体位変換 | ||
| 10:00 | 点滴準備・オペ出し・検査出し・入院対応など | ||
| 10:30 | リハビリ送り出し、看護師によるリハビリ実施(CPM:持続的他動運動装置)など | ||
| 11:00 | 手術後の受け入れ・観察強化・術後の痛み止め準備など | ||
| 12:00 | 昼食準備・配膳・食事介助・配薬など | ||
| 12:30 | 看護記録・引き継ぎをしてお昼の休憩へ | ||
| 14:00 | バイタル測定・観察・処置・午前できなかったケアなど | ||
| 15:00 | 多職種カンファレンス・退院支援など | ||
| 16:30 | 看護記録・夜勤看護師へ申し送り | ||
| 17:30 | 退勤 | ||
このように、整形外科病棟では術後管理からリハビリや退院支援まで、患者さんの機能回復に関わる幅広い業務を経験できます。
整形外科看護師に向いている人の特徴とは?

「整形外科の看護師に求められる力って何だろう?」そんな疑問を持つ学生さんもいるかもしれません。技術的なスキルに加えて、以下のような特徴がある方は整形外科で力を発揮できるでしょう。
整形外科に向いている人 5つの特徴
- 観察力があり、変化に気づける
術後の合併症や感染兆候など、検査データも含めて小さな変化にいち早く気づく力が求められます。 - 手先が器用
指や関節など、包帯を巻くのが難しい部位への処置、ギプスや装具装着、患者さんへの慎重な介助など、整形外科では手先の器用さが活かされる場面が多くあります。 - 体力に自信がある、動き回るのが好き
離床・歩行介助や体位変換など、整形外科は身体介助が多め。元気に動けることは大きな強みです。 - 回復期のケアにやりがいを感じる
「動けなかった人が自分の足で歩けるようになる」など、患者さんの回復を一緒に喜べる人に向いています。 - リハビリや多職種との連携に興味がある
理学療法士・作業療法士などとの連携が日常的。チーム医療に前向きに取り組める人が活躍しやすい分野です。
逆に、「じっくり話を聴くことが好き」「じっと座って記録や観察を丁寧に進めたい」といった人にとっては、整形外科のスピード感や身体的負担が合わないと感じることがあるかもしれません。
自分の性格や働き方の相性などと照らし合わせて考えてみましょう。
整形外科看護師のやりがいってどこにある?
実際に働く先輩看護師さんに、整形外科のやりがいについてリアルな声を聞いてみました。



整形外科の看護師は“使えない”?
「整形外科はスキルが身につかないのでは?」という声を耳にすることがありますが、これは大きな誤解です。
確かに整形外科は、内科のような複雑な薬物管理、一般外科のような急性期管理とは異なりますが、それは「スキルが少ない」ことを意味するわけではありません。
実際には、急性期から回復期まで幅広い看護を経験でき、配属先によってはがん看護や高度な術後管理も含まれます。そのため、他科でも十分に活用できる専門性と汎用性を兼ね備えたスキルが身につく分野なのです。
身につくスキル一覧|他科でも活用できる看護技術
- 外固定技術:ギプス・包帯・装具管理
外科系全般で活用可能。 - 周術期管理:術後観察、ドレーン管理、合併症予防
あらゆる手術後ケアに応用可能。 - 安全管理:転倒リスク評価、予防策の実践
高齢者の多い全診療科で必須となるスキル。 - 機能評価:ADL評価、リハビリ連携
回復期・慢性期・在宅などでも重要。 - 退院支援:多職種連携、家族調整
どの診療科でも求められるスキル。
整形外科看護師のキャリアパスは?

整形外科での経験は、さまざまなキャリアの出発点にもなります。整形外科で得たスキルや経験、患者さんの回復を支える看護をベースに、次のようなキャリアを描くことができます。
- 整形外科やADL改善を極めたスペシャリストになる
日本運動器看護学会認定の「学会認定運動器看護師(JSMNC)」や回復期リハビリテーション病棟協会の「回復期リハビリテーション看護師」など、整形外科分野に強い資格を取得し、専門性を高めていく道があります。 - 急性期から慢性期まで対応できるジェネラリストになる
術前・術後のケアから在宅移行支援まで、幅広い看護力を活かして、どの診療科でも柔軟に対応できる看護師を目指すこともできます。 - 周術期や他診療科へ領域を広げる
周術期管理や手術室看護など、整形外科での術後管理の経験を土台に、外科系の分野へステップアップすることも可能です。 - 美容クリニックでQOLをサポートする
身体的な外見に関わる整形外科での経験を活かして、美容医療の分野でQOLやセルフイメージの向上を支援する看護師へキャリアチェンジする選択肢もあります。

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整形外科を選んだ理由をうまく伝えるには、自分の経験や関心と結びつけるのがコツです。
整形外科の志望動機
意識したいキーワード
- 回復過程を支えるやりがい
- 患者さんとの信頼関係
- リハビリ・多職種連携への興味
【例文】整形外科の志望動機(新卒向け)
【例1:成長意欲タイプ】
私は、急性期の現場で術前・術後の看護に携わり、患者さんの早期回復を支える看護師になりたいと考えています。病院実習で整形外科の患者さんが、術後の強い痛みを乗り越えて立ち上がり、ADLが少しずつ回復していく様子を見て、日々のケアの積み重ねが回復につながることに感動しました。
特に、離床支援や歩行練習などでは、医師や理学療法士と連携して患者さんの機能回復を促すチーム医療の大切さを学びました。貴院のように、早期離床やADL向上に積極的に取り組む体制の中で、患者さんの生活を支える看護師になりたいと考え、志望いたしました。
【例2:経験共感タイプ】
私は学生時代、足を骨折して整形外科に入院した経験があります。術後の強い痛みと不安を抱えていたとき、毎日丁寧に声をかけ、的確なケアをしてくださった看護師さんの姿が強く印象に残っています。短い入院期間でも、安心感を与えられる関わりに感動し、「自分も同じように患者さんを支えたい」と思うようになりました。整形外科では、急性期ならではのスピード感の中でも、患者さんの気持ちに寄り添った看護が求められると感じています。患者さんが抱える不安や痛みに共感し、一人ひとりに合わせた温かい看護を提供できる看護師になりたいと考えています。
まとめ:整形外科看護師に向いているか迷っているあなたへ
整形外科の看護師は「スキルが低い」と思われがちですが、実際には身体・心理・社会面すべてに寄り添う力が求められる、奥深い分野です。
自分の看護観や働き方のイメージと照らして、少しでも興味を持ったら、ぜひ病院見学やインターンシップに参加して先輩の話を聞いてみましょう!

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