就職活動を始めたばかりの看護学生のみなさん、「自己分析って必要なの?」と感じたことはありませんか?
自己分析は、エントリーシートの作成や面接対策だけでなく、自分に合った病院や診療科を選ぶうえで、とても大切なプロセスです。
この記事では、就活中の看護学生の方に向けて、自己分析のやり方や活かし方を解説します。
「志望動機がうまく書けない」「面接で何を話せばいいかわからない」。そんな不安を解消し、納得のいく進路選びができるよう、自己分析の5つのステップを見ていきましょう。
そもそも就活の「自己分析」って?

自己分析とは「自分自身を深く知るための作業」です。
具体的には、自分の考え方や大切にしている価値観、強み・弱み、行動パターンなどを言葉にしていくプロセスを指します。
なぜ看護学生の就活に必要なの?
自己分析をしておくことで、次のように就活に役立ちます。
- 自分に合った職場(病院)や診療科を選べる
- 面接で聞かれる質問に、自分の言葉で答えられる
- 志望動機や自己PRが「伝わる」形で書ける
就活でよく聞かれる「あなたはどんな看護師になりたいですか?」という質問も、自己分析ができていれば、自分の学びや経験の中から具体的な場面をあげて話せるようになり、自信をもって答えられるようになります。
看護学生のための自己分析 5ステップ
この章では、看護学生の皆さんが取り組みやすいように、自己分析の流れを5つのステップに分けてご紹介します。
5つのステップに沿って整理できる書き込み式の自己分析シート(PDF)も用意しています。ぜひダウンロードして活用してみてください。

STEP1:実習・学生生活をふりかえる
まずは、あなたがどんな経験をしてきて、そのときにどう感じたかを整理するところから始めましょう。たとえば、次のようなイメージです。
- 印象に残った実習中のできごとや場面は?
【例】成人看護の実習で、患者さんから「あなたの笑顔に元気をもらった」と言われた。
→ 自分は「人の役に立てた」と実感できてうれしかった。 - 授業・演習でうれしかったこと、悔しかったことは?
【例】技術演習でうまくできず、一度で合格できなかったが、繰り返し練習して合格した。
→ 合格できなかったときは悔しかったが、「努力すれば結果につながる」と感じられた。 - サークルやアルバイトで頑張ったことは?
【例】飲食店のアルバイトでは、忙しい中でもお客さんへの気配りを忘れず対応した。
→ 自分は「どんなときでも人を気づかえる力がある」と感じて、やりがいにつながった。
直近のエピソードに限らず、小学生や中学生のころの体験でも構いません。たとえば「家族の看病をきっかけに看護師を志した」「小学校のころに助けられた体験が今の価値観につながっている」など、長く心に残っているできごとからもヒントが得られます。
STEP2:印象に残った場面から「価値観」を見つける
次は、STEP1で振り返った体験をもとに「自分が大切にしていること、自分らしさ=価値観」を言葉にしてみましょう。
難しいときは「自分がなぜその行動をとったのか」がヒントになります。たとえば、STEP1の実習でのエピソードをもとに考えると以下のようになります。
- エピソード
実習中、患者さんに声掛けをしたら「あなたの笑顔に元気をもらった」と言ってもらえた。 - あなたは、なぜその行動をとったのか
患者さんが不安そうだった。笑顔で声かけをすることで少しでも和らいだ気持ちになってもらいたかったから。 - 導き出せる価値観
自分は 「寄り添う姿勢」 や 「相手の気持ちに共感すること」 を大切にしている。
このように考えていくと、たとえば、STEP1の技術チェックで失敗したエピソードでは「努力し続ける力」「失敗から学ぼうとする前向きさ」、飲食店バイトのエピソードでは「周囲への気配り」「相手の立場に立つ力」などの価値観が導き出せるでしょう。
価値観に正解・不正解はありません。
「なんでそのとき、そうしたんだろう?」「どうしてうれしかったのかな?悔しかったのかな?」。そんな気持ちを振り返ることで、自然と「自分らしさ」が見えてきます。
STEP3:「強み」と「弱み」を言葉にしてみる
次は、STEP1・STEP2で振り返ったエピソード、そこで感じた気持ち・価値観をもとに、「自分の強みと弱み」を整理してみましょう。
ここで言う「強み」とは「あなたらしい良さ・得意なこと」、「弱み」とは「つまずきやすい傾向・改善したい部分」です。
参考として、わかりやすいように一つの表にまとめてみると、次のようになります。
| エピソード (体験) | そのときの気持ち | 見えてきた価値観 | 強み | 弱み(課題) |
|---|---|---|---|---|
| 実習で患者さんに感謝された | 人の役に立てたことがうれしかった | 寄り添う姿勢、やさしさ | 思いやり、共感力 | 相手の気持ちを考えすぎる |
| 技術試験で失敗したが練習を重ねて合格した | 努力が結果につながってうれしかった | 継続力、成長志向 | 粘り強さ、真面目さ | 焦りやすい |
| バイトで忙しい中でも接客に気を配った | 相手の反応を見てやりがいを感じた | 気配り、協調性 | 周囲を見る力、対応力 | 心配性な面がある |
ひとつの体験から「自分らしさ」が自然とつながって見えてくるのが自己分析の面白いところです。
<弱みの考え方>
弱みを考えるときは「強み・長所の裏返し」と考えるとわかりやすいでしょう。
- 行動力がある→焦りやすい
- 正確さを大切にする→慎重すぎる
- 協調性がある→自分の意見を抑えがち
弱みが導き出せたら、どんな工夫で乗り越えようとしているかも合わせて考えてみるのがおすすめです。
- 焦りやすい →優先順位を書き出して行動を整理するようにしている
- 慎重すぎる →締め切りや時間を意識して、決断するタイミングを決めている
- 自分の意見を控えがち→話す機会を意識的に作る
完璧を目指す必要はなく、自己分析を通して少しずつ自分を理解し、行動に活かしていくことが大切です。
STEP4:「自分にとっての看護」を考える
ここまでの3つのSTEPで、あなたの体験・価値観・強みや弱みが見えてきました。STEP4では、それらをヒントに「自分がどんな看護師として働きたいか」を考えてみましょう。
例1:人との関わりを大切にしたい
- エピソード(STEP1)
患者さんから「笑顔に元気をもらった」と言われた - 価値観(STEP2)
寄り添う姿勢を大切にしている - 強み(STEP3)
共感力や思いやり - どんな看護師として働きたい(STEP4)
患者さんへの寄り添いを大事にした、温かい看護ができる人になりたい
例2:着実に努力を重ねていきたい
- エピソード(STEP1)
失敗しても努力して乗り越えた経験 - 価値観(STEP2)
コツコツ努力する姿勢を大切にしている - 強み(STEP3)
粘り強さ、真面目さ - どんな看護師として働きたい(STEP4)
信頼される存在として、継続的に学び成長していきたい
こうした組み合わせから、あなたらしい「働く姿」が浮かび上がってきます。さらに、次のような視点もヒントになります。
- どんな働き方をしたいか
専門性を高めたい、チーム医療に関わりたい など - どんなキャリアを築きたいか
認定看護師を目指したい、将来は訪問看護に携わりたい など - プライベートとのバランスをどのように考えているか
趣味や家族との時間を大事にしたい など
今の自分の気持ちを大切に、少しずつ「自分にとっての看護」を言葉にしてみてください。
STEP5:自分に合う病院を分析する
ここまでの自己分析で見えてきた自分らしさを「病院選び」に役立てましょう。
たとえば「専門性を身につけたい」という価値観が見えたなら、「高度急性期病院」のほか、「教育制度や資格取得のサポートが充実している病院」が就職先を検討するときの軸になるでしょう。
「じっくり患者さんと向き合いたい」「プライベートの時間も大切にしたい」など、あなたが大切にする価値観を軸に、条件の優先順位を考えたり複数の病院を比較したりしてみましょう。
自己分析を志望動機や自己PRに活かそう

ここでは、STEP1〜5で見つけた「自分らしさ」を、志望動機や自己PRにどう活かすかを整理していきます。
自己分析を「志望動機」に活かす
自己分析で明らかになった自分の価値観や経験と、病院の特徴を関連付けましょう。あなたらしさがわかりやすく伝わり、説得力のある志望動機にできます。
志望動機の構成に悩んだときには「PREP法」を使うのがおすすめです。
PREP法でつくる志望動機
- P(Point):結論
私は〇〇な看護師を目指しています - R(Reason):理由
なぜそう思ったのか - E(Episode):具体例
実習などの具体的なエピソード - P(Point):まとめ
そのため貴院でこんなふうに働きたい
志望動機の例文:
私は、患者さん一人ひとりに寄り添った看護ができる看護師を目指しています。患者さんから言っていただいた「あなたの笑顔に元気をもらった」という言葉から、患者さんの気持ちに寄り添う大切さを実感したためです。
回復期リハビリ病棟での実習で、入院生活が長く不安を抱える患者さんに対して、声かけや日常生活のサポートを意識して行いました。その結果「元気をもらった」と患者さんが安心してリハビリに取り組む姿を見て、自分の関わりが患者さんの回復につながる喜びを実感しました。
そのため、貴院の回復期病棟で、患者さん一人ひとりに寄り添いながら、安心して療養できる環境を提供したいと考えています。
自己分析を「自己PR」に活かす
自己PRでは、STEP3で見つけた強みと、それを発揮したエピソードが役立ちます。
- あなたの強み
- 具体的な行動
- 得られた学び
をセットで伝えられるので、説得力が増します。
自己PRの例文:
私の強みは「粘り強さ」です。
注射技術の演習でなかなかうまくいかず悩んだ時期がありましたが、先生や仲間にアドバイスをもらいながら、繰り返し練習を重ねて合格することができました。
その経験から、失敗しても前向きに取り組む力と、丁寧に課題に向き合う姿勢が身についたと思います。
現場でも、患者さん一人ひとりに向き合いながら着実に学び、成長し続けていきたいと考えています。
看護学生の自己分析 よくあるQ&A
自己分析をしていると「これで合ってるの?」「うまく言葉にできない…」と迷うことがあります。ここでは、就活中の看護学生によくある質問とそのヒントをQ&A形式でまとめました。
自己PRを書くのに、特別な体験は必要ありません。大きなエピソードでなくても、日常や実習で「大事にしていたこと」や「うれしかったこと」から、書き出してみましょう。
最初は箇条書きでOKです。「いつ・どこで・誰と・どう感じたか」をメモするだけでも整理が進みます。人に話してみるのもおすすめです。
「なぜその行動を選んだのか」「何にこだわったのか」じっくりを考えてみましょう。そこにあなたらしさが隠れています。先生や友人と話す中でヒントをもらうのもおすすめです。
志望動機・自己PR・病院選び・面接の質問対策など、就活に関するすべての場面のベースになります。迷ったときの軸としても活躍します。
誰でも最初は手探りなので、焦らなくて大丈夫です。少しずつ「自分らしさ」を言葉にしていきましょう。
自己分析で就活に自信!
自己分析は「どんな看護師になりたいか」「どんな職場が自分に合うか」を知る大切なステップです。
最初は書き方に迷ったり戸惑ったりするかもしれませんが、自分自身と向き合う時間がきっとあなたの自信につながります。
少しずつでも大丈夫です。あなたのペースで、一歩ずつ進んでいきましょう。




