「患者さんの生活に深く寄り添う看護がしたい」
そんな思いから訪問看護に興味を持った看護学生さんに向けて、この記事では、新卒で訪問看護師として働くためのポイントを解説します。
訪問看護師の仕事内容から役割、必要な心構え、初任給、その後のキャリアプラン、面接対策まで、ぜひ参考にしてください。
訪問看護は高齢社会を支える最前線

日本は世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。 「最期まで自宅で過ごしたい」と希望する人が増えており、それに応える形で訪問看護の需要も急拡大しています。
たとえば、訪問看護ステーションの数はこの10年で2倍以上に増えています。国も在宅医療・看護の体制整備を後押ししており、訪問看護は、今後ますます重要な分野になっていくと予想されているのです。
こうした社会状況を背景に、訪問看護師からキャリアをスタートすることも決して不可能ではありません。患者さんの「生活」に寄り添うケアに関心のある看護学生にとって、訪問看護は自分らしい看護を実現できる場として大きな魅力となります。
訪問看護師の仕事内容・役割まるっと解説
訪問看護師の仕事は、医師の指示に基づいて利用者さんの自宅や施設を訪問し、療養生活を支えることです。「生活全体を看る」視点が病棟看護との大きな違いです。
訪問看護師の主な仕事内容
訪問看護師の仕事内容は次のようなものです。これらを利用者さんの個別性を重視しながら対応します。臨床判断力とコミュニケーション力が求められる分、やりがいも大きい仕事です。
健康状態のアセスメント
- バイタルサインの測定
(血圧・脈拍・体温・呼吸など) - 症状の観察と記録
- 状態変化の早期発見
療養生活のお世話
- 清潔ケア(清拭・洗髪・入浴介助など)
- 栄養管理・経管栄養の確認
- 排泄の援助とケア
- 療養環境の整備や助言(転倒予防など)
医療処置
- 医師の指示による点滴・注射・褥瘡処置などの医療行為
- 在宅酸素療法の管理や吸引、服薬管理、インスリン注射
病状悪化の防止やリハビリ
- 拘縮・褥瘡・誤嚥性肺炎などの予防的ケア
- 自立支援を意識した日常生活動作の促進
ターミナルケア
- 苦痛の緩和と心のケア
- ご家族の支援、看取りのサポート
訪問看護と病棟看護、5つのポイント比較
訪問看護と病棟看護の違いを整理してみました。訪問看護では、患者さんやご家族と信頼関係を築きながら「その人らしい生活」を支えるといった看護の本質に近い関わりができるのが醍醐味です。
| 病棟看護 (急性期) | 訪問看護 | |
|---|---|---|
| 関わり方 | 複数の患者さんを同時に担当 | 1対1でじっくり関わる |
| ケアの範囲 | 医療処置が中心 | 生活支援を中心に、医療ケア、家族のサポートを実施 |
| 主な活動場所 | 病院内 (ナースステーション・病室など) | 利用者さんの自宅・施設など |
| チーム構成 | 看護師・医師・薬剤師などが常時連携 | 多職種(PT・OT・ケアマネジャーなど)との地域連携 |
| 判断の場面 | 医師の指示に沿って動く | 看護師自身の判断力が求められる場面も多い |
訪問看護師の1日の流れ
訪問看護の仕事は日勤が中心です。1日の流れの一例をご紹介しましょう。
| 08:30 | 出勤・朝のミーティングで情報共有 | ||
| 09:00 | 1件目訪問:糖尿病の方のバイタルチェックと服薬確認 | ||
| 10:30 | 2件目訪問:終末期の利用者さんの清潔ケア・褥瘡処置 | ||
| 12:00 | 昼休憩(移動中のコンビニや事務所などで) | ||
| 13:30 | 3件目訪問:難病を抱える方の排泄ケア | ||
| 15:30 | 4件目訪問:小児在宅酸素児の家族指導と観察 | ||
| 17:00 | 帰所後、記録・報告・必要書類の作成・ミーティング | ||
| 17:30 | 退勤(またはオンコール当番の引き継ぎ) | ||
1日に訪問する件数は平均4〜5件です。訪問時間が決められているため、時間管理能力やトラブル発生時の柔軟な対応も求められます。その分、自分のペースで動けるという魅力もあります。
新卒でもなれる?訪問看護師を目指す就活ステップ
「新卒からいきなり訪問看護って本当にできるの?」と不安に感じる学生さんも多いはず。でも実は、新卒ナースを積極的に採用している訪問看護ステーションは年々増えています。
新卒で訪問看護師になるには、次の5つの就活ステップを参考にしてみてください。
訪問看護師を目指す
5つの就活STEP
- 新卒OKの訪問看護ステーションを探す
(最終学年の1年前の春〜夏にスタート) - 見学やインターンで現場の雰囲気を知る
- エントリーシート・面接・内定
(志望動機のポイントは後述) - 国家試験に合格・卒業
- 入職後、OJTで先輩の同行訪問からスタート
新卒OKの訪看ステーションの特徴5つ
「訪問看護師は現場で一人になるから、新卒では不安…」と感じる看護学生さんも多いでしょう。ですが、初めは先輩との同行訪問からスタートするなど、教育体制の整ったステーションを選べば、新卒でも安心です。
次の「新卒OKの訪問看護ステーション」の特徴を参考に、自分に合ったステーションを探してみましょう。
新卒OKの
訪問看護ステーションの特徴
- 新卒採用の実績がある
- 同行訪問の期間が3カ月~1年ほどある
- プリセプター制度や外部研修などの教育サポートがある
- 業務の流れやマニュアルなどが整っている
- 離職率・オンコール頻度などリアルな情報を教えてくれる
規模の大きなステーションや複数のステーションを運営する法人、病院が運営する訪問看護ステーションなどは、新卒ナースの受け入れ体制が充実している傾向です。
また、各都道府県の看護協会では新卒向けの訪問看護師育成プログラムが用意されているなど、看護業界全体で新人訪問看護師をサポートしています。
訪問看護の教育体制は?プリセプターはいるの?
新卒で訪問看護ステーションに入職した場合、入職後3カ月~1年は同行訪問中心のOJTを受けます。同行訪問では先輩について回り、記録の仕方や利用者さんとの接し方、訪問ルートの工夫などを実地で学びます。
また、病棟と同じようにプリセプターが固定でつくステーションもあり、「困ったらすぐ相談できる」という安心感が新卒ナースには心強いでしょう。

新卒採用のある訪問看護ステーションを探してみよう
訪問看護師の平均給料は?
実際に訪問看護師として働いた場合、給料はどのくらいなのでしょうか。日本看護協会の最新データから、病棟勤務と訪問看護での年収の違いを見てみましょう。
病棟看護師と訪問看護師の給料を比較
| 勤務形態 | 平均月給 | ボーナス | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 病棟看護師 (平均年齢38.2歳) | 約38万円 | 約103万円 | 約559万円 |
| 訪問看護師 (平均年齢47.0歳) | 約35万円 | 約95万円 | 約515万円 |
訪問看護師は夜勤がなく残業も少ない分、給料額はやや下がりますが、日勤中心の働き方でワークライフバランスが整いやすいのがメリット。
ステーションや働き方によっては、オンコール手当や訪問件数手当(インセンティブ手当)が上乗せされる場合もあります。
【新卒向け】訪問看護師の志望動機&面接の質問

志望動機は、面接で必ず聞かれる質問のひとつ。答え方のポイントは、自分が大切にしている看護観と、訪問看護の特徴が合っていると伝えることです。
志望動機の考え方と例文3パターン
志望動機を書くときのポイントは以下の3つです。
- なぜ訪問看護に関心を持ったか
- どんな看護をしたいか
- そのステーションで働きたい理由
希望する働き方のタイプ別の例文を参考に、自分の言葉で具体的に伝えましょう!
例文1. 地域に寄り添う看護がしたい
志望動機の例文:
私が訪問看護に興味を持ったきっかけは、実習で関わった在宅療養中の方の笑顔でした。在宅では、利用者さんの生活環境やご家族の想いに寄り添って、生活全体を支える看護ができることに魅力を感じました。今後は地域の一員として、多職種と連携しながら、その方らしい暮らしを支える看護を実践したいと考えています。
例文2. 学びながら成長したい
志望動機の例文:
学生時代の実習で、訪問看護では患者さんの生活そのものに深く関わることを実感しました。年齢や疾患だけでなく、利用者さんの生活環境や家族構成、価値観などに合わせた個別性の高い対応が求められる点に、訪問看護の幅広さと奥深さを実感しました。新人教育の体制が整っている貴ステーションで経験を積み、将来的には在宅ケア認定看護師を目指して学び続けていきたいです。
例文3. 安定して長く働きたい
志望動機の例文:
看護師として長く働き続けたいという思いから、生活リズムを安定させながら働ける訪問看護を志望しました。在宅では利用者さんとじっくり向き合う看護を実践できる点にも魅力を感じております。貴ステーションでは、20代の先輩方も多くいらっしゃり、私もじっくり経験を積んで訪問看護師としてのキャリアを築いていきたいと考えています。
訪問看護の面接でよく聞かれる質問5選&回答例
面接では「なぜ訪問看護なのか?」「どんな看護がしたいか?」など、あなたの考えや覚悟を確かめるような質問がよく出ます。
それぞれの質問には「実習での経験」や「自分の看護観」「不安に対する準備・工夫」など、自分の言葉で前向きに伝えることが大切です。
訪問看護師に向いている人&やりがい
「そもそも自分は訪問看護師に向いているのかな?」と感じている学生さんもいるでしょう。
ここでは、訪問看護師に向いている人の特徴と、訪問看護ならではの魅力を紹介します。「こんな働き方をしたい」と思える部分があれば、訪問看護が合っているかもしれません。
訪問看護師に向いている人の特徴
- 一人の利用者さんと長く・深く関わる看護がしたい
- その人らしさを支える看護に関心がある
- 夜勤や残業のない生活リズムが整う場所で働きたい
- 急かされずに自分のペースで動きたい
- 他職種との連携を大切にできる
- 臨機応変に判断・対応するのが得意
訪問看護師のやりがい
- 「最期まで自宅で過ごしたい」という思いを叶える支援ができた
- 退院直後の不安な時期に「また来てくれて安心する」と言われたときに信頼されていると感じた
- 同じ利用者さんに継続して関わることで、わずかな変化にも気づけるようになった
- 自分の観察・判断・行動がそのまま看護の質につながる実感がある
- 病院とは違い、患者さんと一緒に生活を整えていく感覚がある

疾患だけでなく、その人の暮らし全体に目を向けるからこそ、自分の関わりが患者さんの日常そのものに役立っていると実感できます。
訪問看護師のキャリアプランは?

訪問看護の現場で実践を積んだ先には、さまざまなステップアップの道があります。
資格取得で訪問看護の専門性を高める
「在宅ケア認定看護師」や「在宅看護専門看護師」の資格を取得し、スペシャリストを目指すことができます。緩和ケア、小児、精神科など、在宅の現場でも専門的な判断や介入が求められる場面が増えており、活躍が期待されています。
ケアマネジャーや訪問看護ステーションの開設者になる
将来的にはケアマネジャーとして利用者さんの支援に関わったり、管理者としてステーションの運営に携わったりする道もあります。起業して自分のステーションを立ち上げる看護師も増えており、経営に関心のある人にとっても挑戦のチャンスが広がっています。
病棟や介護施設で経験の幅を広げる
「訪問看護から病棟へ」「介護施設での看護へ」といったように、訪問看護を経験した後で他の分野に転職する看護師もいます。訪問看護で得た生活に寄り添う視点は、急性期や回復期医療、長期療養施設でも活かされます。
訪問看護師のよくある不安Q&A
新卒ナースが、訪問看護に対して抱きやすい疑問や不安にQ&Aでお答えします!
新卒でも訪問看護師は目指せる
訪問看護は、患者さんの暮らしに寄り添いながら、自分のペースで成長できる働き方です。病院とは違ったやりがいや学びがあり、新卒からでもしっかり学べる体制が整ったステーションも増えています。
訪問看護師からのキャリアスタートが少しでも気になったら、ぜひ見学やインターンシップに参加してみましょう。

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