公務員看護師とは？民間病院との違いとメリット・デメリット、採用ルートを解説

看護師には、国や自治体が運営する病院などで働く「公務員看護師」という働き方があります。進路について考えている看護学生のみなさんも気になっている方が多いのではないでしょうか？

• 公務員看護師って具体的にどんな看護師？
• 民間病院と比べて何が違う？
• そもそも私に合っている？

こんな疑問を持つ皆さんに向けて、この記事では、公務員看護師の基本から、民間との違いやメリット・デメリット、そして公務員看護師になるための具体的な方法までをわかりやすく解説します。

公務員看護師って？

「公務員看護師」と聞くと、なんだか堅そうに思えるかもしれません。ですが、看護学生が目指す病院の中にも、働くスタッフが「公務員扱い」になる職場があります。

公務員看護師の種類と職場例

公務員看護師には、大きく分けて3つのタイプがあります。

国家公務員

国が運営する医療機関や省庁で働く看護師です。採用も国レベルで行われます。

勤務先・職種	所属
厚生労働省の看護系技官	厚生労働省 （本省、地方厚生局）
自衛隊中央病院 ほか	防衛省（自衛隊）
医療刑務所・矯正施設	法務省（矯正局）
国立ハンセン病療養所・ 国立障害者リハビリテーションセンターなど国の直轄施設	厚生労働省

地方公務員

都道府県や市町村が運営する病院や保健所などで働く看護師です。自治体ごとに採用枠が設けられています。保健所で働くのは保健師が多いですが、看護師の採用・配置もある自治体があります。

勤務先・機関	所属
都道府県立病院・ 市区町村立病院	都道府県、市区町村
保健所・市町村保健センター	都道府県、市区町村
市区町村立の高齢者施設・ 障害者支援施設	市区町村
都道府県立・市区町村立の幼稚園・保育園・学校（特別支援学校 ほか）	都道府県、市区町村

準公務員（みなし公務員）

独立行政法人や社会福祉法人など、公務員に準ずる施設で働く看護師です。正確には公務員ではありませんが、基本的な待遇は公務員に準じるため、安定性のある働き方が特徴です。

勤務先・機関	所属
国立病院機構 （東京医療センターなど）	独立行政法人
地方独立行政法人病院 （東京都立病院機構など）	地方独立行政法人
赤十字病院、JCHO病院、労災病院など	日本赤十字社、地域医療機能推進機構、労働者健康安全機構など
国立大学病院	国立大学法人 （文部科学省所管）

公務員看護師のメリット・デメリット、民間病院との違いは？

「公務員って安定してそうだけど、民間の病院とどう違うの？」そんな疑問を持つ方も多いはず。公務員看護師と民間病院の看護師について働き方や給与の違いなどを比べ、自分に合った働き方を考えるヒントを紹介します。

公務員看護師のメリット

安定性・福利厚生が充実している

公務員は法律で守られた身分があり、解雇のリスクが非常に低いという特徴があります。給与も安定していて、住宅手当、通勤手当、扶養手当、病気休暇や育児休業制度などの福利厚生が民間に比べて手厚いです。

長く安心して働ける環境が整っているので、結婚や出産後も働き続けたい人には大きなメリットです。

教育制度が整い、キャリアアップしやすい

公務員看護師が勤務する職場では、昇任試験や院内研修なども国や自治体の制度にならうため、制度的なキャリアアップ支援が整っていることが多いようです。

外部研修や資格取得を支援する制度も用意されている職場が多いので、「将来は専門看護師や認定看護師を目指したい」という人にとっても、目標を持って成長できる環境です。

給与水準が高め

公務員は地方自治体や国家の給与表に基づいて支給され、民間病院よりも基本給が高めに設定されている場合が多いようです。

特に、ボーナスが民間よりも安定して多い傾向にあるのが特徴的。民間病院では業績によって変動しやすいボーナスも、安定収入として見通しが立てやすいのは魅力の一つです。

公務員看護師の給料やボーナスはどのくらい？

高度医療や政策医療など幅広い経験が積める

公務員が勤務する病院では、急性期から慢性期、専門医療まで幅広い医療を提供する施設が多く、さまざまな看護経験を積むことができます。

特に大学病院や国立・公立の中核病院では、最先端の医療機器や設備が積極的に導入されており、ドクターヘリの受け入れに対応したヘリポートを備えている施設も少なくありません。

また、民間病院では採算が取りにくい政策医療（感染症、高度医療、救急医療など）に携わる機会が多いのも特徴です。

公務員看護師のデメリット

年功序列で評価がわかりにくい

公務員は「年功序列型」の評価制度を取っているところが多く、若手でも成果を出している人がすぐに昇進・昇給する、というシステムではない場合があります。

安定雇用の裏返しではありますが、「実力主義でどんどんキャリアアップを目指したい」と思う人には物足りなさを感じることもあるかもしれません。

異動や転勤の希望が必ずしも通らない

自治体や組織の方針により、定期的な異動や転勤が発生することがあります。
院内の異動があるのは民間も同じかもしれませんが、たとえば県立病院の公務員看護師の場合、同じ県内の別の県立病院に配属が決まることも。

通勤時間が長くなったり、引っ越しを伴う転勤になったりなど負担も大きいので、気になる人は事前によく調べておきましょう。

副業が制限される

国家公務員法・地方公務員法により、原則として副業は認められていません。収入を増やすために副業を考えている人にとっては大きな制約になります。

公務員看護師の給料やボーナスはどのくらい？

やっぱり気になるのは「お給料」。ここでは、公務員看護師の年収や手当について、わかりやすく紹介します。

公務員看護師は民間より給与が高め

日本看護協会によると、看護師の月額給与の平均は以下の通りです（常勤）。

勤務先	初任給	勤続10年目 （非管理職）
国立病院 （国立病院機構・JCHO病院なども含む）	292,734円	350,582円
公立病院	293,473円	354,488円
日本赤十字社	308,461円	370,679円
民間病院 （医療法人）	279,189円	321,891円

出典：日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」

国公立病院など公務員看護師の職場は、基本給・手当・賞与の制度が整っているため、給与面では民間よりもやや高めで安定している傾向があります。

ただ、全国の病院の多くを占める民間病院の給与額は、病院によってもかなり幅があります。「公務員看護師のほうが給与が高い」はあくまでも全体の傾向として理解しておきましょう。

公務員看護師になるには？

「興味はあるけど、公務員看護師はどうやったらなれるの？」という方向けに、就職までのステップをわかりやすく整理します。

公務員試験は必要なの？

看護学生が「公務員看護師を目指す」とき、多くの場合、公務員試験の合格は必要ありません。それぞれの病院の採用募集に応募し、通常の選考を通過すればOKです。

ただ、国や自治体の行政職として働く場合は、大卒以上の学歴や実務経験が必要なケース、保健師または助産師資格の取得を必須としているケースもあります。応募資格等をよく確認しましょう

採用情報はどうやって探す？

公務員看護師の職場となる病院では、民間病院と同じく毎年3～6月ごろに新卒採用の募集があるのが一般的です。

公務員看護師の募集は人気が高いので、次のようなところから早めに情報収集をスタートし、病院見学や説明会のタイミングを逃さないようにしましょう。

• 各病院の採用情報ページ
• 自治体の職員採用ページ
• 看護学生向けの就活サイト

公務員看護師に向いている人の特徴

公務員看護師として働くのに向いている人は、たとえば次のようなタイプです。

• 安定した環境で腰を据えて長く働きたい人
• プライベートと仕事のバランスを大切にしたい人
• 教育制度やキャリアパスが整っている職場で成長したい人
• 地域医療や行政看護に関心がある人

反対に、「自分の力で早くステップアップしたい」「自由な働き方をしたい」「副業をしたい」という人は民間病院の方が合っているかもしれません。

まとめ：公務員看護師を目指すなら

公務員看護師は、安定した働き方や充実した制度が魅力。その一方で、デメリットもあります。「公務員看護師ってなんとなく良さそう！」と感じた方もいるかもしれませんが、大切なのは自分に合っているかどうか。

病院見学や説明会では、

• 公務員・準公務員としての雇用形態・待遇
• 配属・異動・転勤の仕組み
• 新人看護師の育成制度やキャリア支援体制

などを確認しながら、民間病院との比較も含めて検討してみましょう。