最終更新日 2018/02/21

再生不良性貧血

再生不良性貧血とは・・・

再生不良性貧血(さいせいふりょうせいひんけつ、aplastic anemia)とは末梢血における赤血球白血球血小板の減少(汎血球減少)と骨髄の低形成を特徴とする症候群である。造血幹細胞の持続的な減少がその本質と考えられている。

厚生労働省の特定疾患(難病)にも指定されており、所定の重症度以上であれば、医療費助成の対象となる。赤血球系のみの産生障害を赤芽球癆(せきがきゅうろう)という。

【原因】
先天性が約10%、後天性が約90%(80%が原因不明の特発性、10%が薬剤性や肝炎後)である。
成人の再生不良性貧血では、感染や薬剤投与を契機とした造血幹細胞に対する免疫学的な障害によるものがほとんどであるが、一部は造血幹細胞自体の異常による。先天性の再生不良性貧血にはファンコニ貧血や先天性角化不全症があり、赤芽球癆はダイアモンドブラックファン貧血と呼ばれる。先天性再生不良性貧血では身体奇形を伴うことがある。

【臨床所見】
(1)顔色不良・息切れ動悸などの貧血症状、(2)皮下出血・粘膜出血などの出血症状、(3)白血球(特に好中球)減少による易感染性が主な症状である。

【検査所見】
末梢血で(1)ヘモグロビン濃度10.0g/dL未満、(2)好中球数1,500/μL未満、(3)血小板数10万/μL未満、の3項目のうち2つ以上に当てはまれば、診断基準を満たす。
貧血は正球性または大球性を示し、網状赤血球の増加はみられない。骨髄穿刺および生検では、有細胞数の減少がみられ、特に幼弱顆粒球・赤芽球・巨核球が減少する。発症初期には全身の骨髄で細胞減少がみられるわけではないので、胸腰椎MRIで造血組織の減少を確認することも重要である。

【鑑別診断】
再生不良性貧血と同様の末梢血液所見を呈する、骨髄異形成症候群(特に不応性貧血)や発作性夜間血色素尿症(PNH)、末梢血に芽球が認められない急性白血病や悪性腫瘍の骨髄転移との鑑別が必要になる。

【治療】
血球減少の程度により、ステージ1(軽症)から5(最重症)の重症度分類があり、ステージに応じて治療法が選択される。
ステージ1および2(中等症)で輸血を必要としない例では、数カ月経過を観察した後、血球減少の進行があるか血小板が5万/μL以下となる場合、免疫抑制療法(シクロスポリンCsA±抗胸腺グロブリンATG)を行う。
ステージ3(やや重症)からステージ5または輸血依存性の場合、40歳未満でHLA一致同胞ドナーが得られる場合には同種骨髄移植を行う。同種骨髄移植を実施できない場合はCsA+ATG の免疫抑制療法を行う。同種骨髄移植後の長期生存率は80~90%、免疫抑制療法の有効率は約70%である。易感染性に対してはG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)投与、貧血・血小板減少に対しては輸血が行われる。

執筆: 梶原道子

東京医科歯科大学医学部附属病院  輸血・細胞治療センター 副センター長/講師

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