胸膜中皮腫

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』より転載。
今回は胸膜中皮腫について解説します。

 

 

佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師

 

 

胸膜中皮腫とは?

胸膜中皮腫は、胸膜中皮細胞から発生する腫瘍です。良性と悪性に分けられますが、大部分は悪性であり、良性は限局性で予後は良好です。悪性は早期発見しにくく、予後は5年生存率が5%以下と、きわめて不良とされています。

 

悪性胸膜中皮腫は一定量以上の石綿(アスベスト)に曝露した人に、20~40年の期間を経て発生します。石綿曝露の可能性が高い職業として、港湾労働者(石材の積み下ろし)、建設業(石綿の吹き付け工事)、電気配線業、石綿を使用する作業衣などを取り扱う職業が挙げられます。石綿工場近隣の住民などにも、石綿曝露の可能性があります。

 

 

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患者さんはどんな状態?

悪性胸膜中皮腫は、最初は壁側胸膜内に発生し、胸水の貯留をきたします。その後、臓側胸膜に播種し、腫瘍の小結節が次第に融合して、広範囲に胸膜が肥厚します。

 

胸水貯留に伴う呼吸困難や、胸膜刺激症状である咳嗽、胸痛が生じます。

 

 

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どんな検査をして診断する?

問診(職業歴):石綿高濃度曝露歴を確認します。

 

X線、CT :胸膜に沿った腫瘤影、不規則に肥厚した胸膜、胸水がみられます(図1)。

 

図1 悪性胸膜中皮腫のX線、CT

悪性胸膜中皮腫のX線、CT

 

胸膜生検:胸水細胞診では診断率が低いため、胸腔鏡下生検を実施します(図2)。

 

図2 胸腔鏡下胸膜生検

図2

胸腔鏡下胸膜生検

 

胸水検査:ヒアルロン酸濃度の上昇がみられます(上皮型中皮腫)。

 

 

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どんな治療を行う?

手術療法:手術適応があるのはTNM分類の病期Ⅰ・Ⅱ期とⅢ期の一部となっています。術式として胸膜肺全摘術胸膜切除術肺剥皮術があります。呼吸困難と胸水貯留で発見されることが多く、診断確定時には病期的にも進行していることが多いため、手術適応は少なくなっています。

 

放射線療法:胸膜肺全摘術後、局所再発予防のために実施されます。また、再発予防として実施することもあります。

 

薬物療法:手術適応がない症例で、主にシスプラチン、ペメトレキセドが用いられます。近年ではニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬も使用されています。

 

 

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看護師は何に注意する?

職業歴は診断につながる情報になるため、必ず確認します。

 

石綿の高濃度曝露歴がある場合、離職後も肺がんや中皮腫発症の危険があるため、じん肺法に基づいた定期健康診断を受けることの重要性を説明します。

 

残存肺機能の維持のため、禁煙指導が重要です。

 

呼吸器感染症の予防を指導します。

 

 

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胸膜中皮腫の看護の経過

胸膜中皮腫の看護の経過は以下のとおりです(表1-1表1-2表1-3表1)。

 

表1-1 胸膜中皮腫の看護の経過(発症から入院・診断)

胸膜中皮腫の看護の経過(発症から入院・診断)

 

表1-2 胸膜中皮腫の看護の経過(入院直後・急性期)

胸膜中皮腫の看護の経過(入院直後・急性期)

 

表1-3 胸膜中皮腫の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

胸膜中皮腫の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

 

表1 胸膜中皮腫の看護の経過

※横にスクロールしてご覧ください。

胸膜中皮腫の看護の経過

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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