看護師として第一歩を踏み出す場所は「急性期病棟」が多いイメージですが、「急性期はバタバタして大変そう」「もう少し患者さんとじっくり関われる場所がいいかも」と感じる看護学生さんもいるかもしれません。
そんな学生さんにとって、回復期リハビリテーション病棟はとても魅力的な選択肢の一つです。
この記事では、回復期リハビリテーション病棟の特徴や仕事内容、向いている人の傾向、志望動機の考え方、面接対策まで、就活中の看護学生に必要な情報をわかりやすくまとめました。自分に合ったキャリアを考えるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
回復期リハビリテーション病棟とは?

回復期リハビリテーション病棟は、急性期の治療を終えた患者さんが、在宅復帰を目指してリハビリを行うための病棟です。ここでは回復期リハビリテーション病棟の特徴をわかりやすく解説します。
回復期リハビリテーション病棟の患者さんは?
回復期リハビリテーション病棟の対象となるのは、脳卒中や骨折などで急性期に入院した後、症状が安定してきたものの日常生活の動作(ADL)に支援が必要な方々です。
回復期リハビリテーション病棟の大きな特徴のひとつが、対象疾患が明確に定められていること。以下のような疾患が厚生労働省の基準で指定されています。
- 脳卒中や脳外傷による運動・言語機能の障害がある方
- 大腿骨骨折や脊椎損傷後で歩行・ADLに支援が必要な方
- 長期臥床などによる廃用症候群の方
これらの患者さんが自宅や施設での生活に戻れるように、約2〜3カ月の間、集中的なリハビリと生活支援を受けるのが回復期リハビリテーション病棟です。
回復期の看護師の役割
回復期で働く看護師の役割は、日常的なケアだけでなく、リハビリ支援や退院に向けた調整まで多岐にわたります。
- 観察・合併症予防
廃用症候群、肺炎、褥瘡などを予防するために、全身状態の変化を細かく観察し、早期対応につなげます。
- リハビリ促進・生活支援
リハビリ職と連携し、「リハビリの時間だけ」ではなく、起立・歩行・移乗の支援、嚥下・排泄動作の見守りなど入院生活のあらゆる場面を通じて、患者さんの自立度向上を目指します。
- 退院支援・地域連携
家屋状況の確認、福祉用具の調整、家族への説明・支援など、生活全体を見据えた包括的なケアが求められます。
- 心理面のサポート
長期入院のストレス、障害受容への不安、復職・介護の心配など、患者さんとご家族のさまざまな悩みにじっくり時間をかけて寄り添います。
これらの看護実践は単に医学的なケアではなく、「患者さんが再び自分らしく生活できるようになる」ことを目指すものです。
急性期のような緊急性はありませんが、長期的な視点でその人らしい回復を支えるための深い関わりが必要となります。そのため、回復期リハビリテーションの看護師には、コミュニケーション力や観察力、多職種との連携力が特に求められるでしょう。
回復期と急性期・地域包括ケア・慢性期病棟との違い
回復期リハビリテーション病棟と「急性期」「慢性期」「地域包括ケア病棟」はどう違うのでしょうか。それぞれの特徴を比較すると、回復期の立ち位置や役割がはっきり見えてきます。
【表】回復期と急性期・地域包括ケア・慢性期病棟の違い
| 回復期リハビリテーション病棟 | 急性期病棟 | 地域包括ケア病棟 | 慢性期病棟 (療養病床) | |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 機能回復・在宅復帰 | 治療・生命の維持 | 医療的対応・在宅復帰 | 症状安定・生活の維持・向上 |
| 入院期間(目安) | 最大60~180日(疾患ごとに異なる) | 16~21日以内 | 最大60日 | 特に制限なし |
| 看護配置 | 13対1 または 15対1 | 7対1 または 10対1 | 13対1 | 20対1 |
| 主な対象患者さん | 症状安定後、リハビリが必要な患者さん (対象疾患あり) | 積極的な治療が必要な患者さん | 急性期を過ぎて、もう少し医療的ケアが必要な患者さん | 症状が安定しているものの、医療依存度が高く長期療養が必要な患者さん |
| 看護の特徴 | リハビリ支援、ADL支援、退院支援 | 急変対応、処置が多い | 在宅復帰を見据えた包括的な支援 (医療+生活支援のバランス型) | 日常生活援助、褥瘡予防など |
出典:厚生労働省「病床機能報告」「令和6年度診療報酬改定説明資料等について」

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回復期で働く看護師の仕事内容&1日の流れ
回復期リハビリテーション病棟で働く看護師は、リハビリや退院支援を中心に、多職種と連携しながら患者さんの「生活を取り戻す力」を支えます。ここでは仕事内容・1日の流れ・この仕事ならではの魅力をまとめて紹介します。
回復期リハビリテーション病棟の看護師の仕事内容
回復期の看護師は、日常のケアを行うだけでなく、患者さんが再び自宅で生活できるように「生活機能」の回復を支援することが重要な役割となります。
急性期や地域包括ケア病棟に比べると患者さんの入院期間が長く、一人の患者さんとじっくり関わる時間が多いのが特徴です。
回復期リハ病棟看護師の主な仕事内容
- バイタルサインの確認・状態観察
日々の体調変化に気づき、リスクを早期に察知します。 - ADL支援(移乗・排泄・食事・清潔ケア)
自立度に応じた介助や声かけを行います。 - リハビリ前後のサポート
起立・歩行練習の付き添いや、疲労・不安へのケアも大切な役割です。 - 記録・情報共有
リハビリ職やMSW(医療ソーシャルワーカー)との連携を円滑に進めるための情報共有を担います。 - 退院支援
カンファレンスへの参加や家族との調整など、在宅復帰を見据えた支援を行います。
回復期リハビリテーション病棟の看護師の1日
回復期では急変が少ないため、ある程度予測できるスケジュールの中で看護を行います。しかし、単調というわけではなく、患者さん一人ひとりの異なる生活背景や価値観などを深く理解した看護が求められます。
| 回復期リハビリテーション病棟で働く看護師のスケジュール例(日勤) | |||
| 08:30 | 情報収集・申し送り・カンファレンス | ||
| 09:00 | バイタルチェック・処置・清潔ケア・環境整備など | ||
| 10:00 | リハビリ前後のサポート・観察 | ||
| 11:30 | 看護記録・経管栄養の準備 | ||
| 12:00 | 昼食配膳・食事介助・嚥下観察・口腔ケア・与薬 | ||
| 13:00 | 交代で休憩 | ||
| 14:00 | リハビリ前後のサポート・観察・午前できなかったケア・入浴介助など | ||
| 15:00 | 多職種カンファレンス・看護記録・家族対応 | ||
| 16:30 | 申し送り | ||
| 17:00 | 退勤 | ||
回復期看護の魅力
回復期は、急性期のようなスピード感や処置が中心の看護とは異なり、「患者さんの生活を再建するため」の看護です。その魅力は、大きく分けて次の3つです。
一人ひとりにじっくり関われる
長期入院の中で信頼関係を築き、患者さんの在宅復帰を間近で支えられます。
回復のプロセスを共有できる
初めはほとんど寝たきりだった方が、車椅子に移乗し、歩行器で立ち上がり、退院時には歩いて帰るー。その過程を一番近くで見守れるのは、回復期ならではのやりがいです。
チーム医療でサポートする達成感
回復期は、PT・OT・STのリハビリ職やMSWなど多くの職種が関わります。看護師は、患者さんの状態を的確にキャッチし、他職種へ伝える重要な橋渡し役です。多職種との密な連携の中で、看護の専門性を感じられるでしょう。
実際に働く先輩たちのやりがいとは?




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回復期看護に向いている人・向いていない人

回復期看護が自分に合っているかどうかは、就職先選びの重要な視点です。ここでは、回復期に向いている人・向いていないかもしれない人の特徴を解説します。
回復期に向いている人の特徴
小さな変化に気づける観察力がある
バイタルや表情、動作などのわずかな変化を拾い上げる力は、その人らしい回復を支えるカギとなります。
丁寧に関わる看護にやりがいを感じる
回復期は急性期より入院期間が長いため、信頼関係を築きながら関わる姿勢が活かされます。
コツコツ継続することが得意
リハビリ支援や生活支援は積み重ねが基本。継続的なケアを楽しめる人に向いています。
チームで成果を出すことにやりがいを感じる人
回復期はリハビリスタッフとの連携が密です。看護師が多職種連携の中心に立つ機会も多く、協働志向の人が活躍しやすい環境です。
回復期に向いていないかもしれない人は?
処置や急変対応をたくさん経験したい人
回復期は医療処置が少なめなので、医療処置や急変対応の経験を多く積みたい人には合わないかもしれません。
スピード感や変化の多さを重視する人
回復期は状態の変化が緩やかなため、日々の刺激や速いテンポを求める人には物足りなさを感じやすいかもしれません。
単調な業務を退屈に感じやすい人
ADL支援などルーティン業務も多いため、変化や新しさを重視する人はギャップを感じることがあります。
ただし、「向いていない=絶対に合わない」というわけではありません。実習や見学で実際の雰囲気を体感し、自分の成長や看護観とどうつながるかを考えることが大切です。
回復期から広がるキャリアの選択肢
回復期で得られる「観察力」「関係構築力」「連携力」は、将来的に次のようなキャリアにもつながります。
- 地域包括ケア病棟で、幅広い疾患・病態の患者さんの在宅復帰を支援する
- 訪問看護ステーションで、退院後の在宅療養をサポートする
- 認定看護師などの資格取得で、キャリアアップを目指す
資格の例:回復期リハビリテーション病棟協会が認定する「回復期リハビリテーション看護師」、日本看護協会が認定する「脳卒中看護認定看護師」「摂食嚥下障害看護認定看護師」
「病棟から在宅へ」の視点を持って知識・スキルを学び、実践してきた回復期の看護師は多くの場面で必要とされます。
面接&志望動機は?「回復期を選んだ理由」の伝え方

回復期の病院を志望する場合、「なぜ回復期なのか?」を自分の言葉で説明できることが大切です。
志望動機の書き方のコツ
回復期病院の志望動機は次の3つのポイントを意識して、実習や自分の価値観と結びつけられるとよいでしょう。
回復期病院の志望動機
3つのポイント
- きっかけを明確にする
実習・家族の経験など、回復期に興味を持った理由を具体的に述べる - そこで感じた看護のやりがい・学び
どんな関わりが印象に残ったか、どんな看護がしたいと思ったか(看護観)を伝える - 病棟の特徴と自分の目指す看護との一致
生活支援・多職種連携・回復のプロセスなど、共感できる点を伝える。
【例文】回復期リハビリテーション病棟の志望動機(新卒向け)
回復期リハビリテーション病棟での実習で、患者さんが少しずつ歩けるようになり、在宅復帰へ向かっていく過程に寄り添う看護に感動しました。特に、リハビリ後に疲れた表情をされていた患者さんに声をかけ、少し笑顔が見られた場面が印象的で、回復期ならではの関わりの深さを感じました。
私は、患者さんの生活全体を支える視点を大切にしたいと考えており、回復期でのADL支援や退院支援、多職種との連携を通して、看護師としての基礎を丁寧に築いていきたいです。
貴院の◯◯研修や◯◯制度を活用しながら積極的に学び、患者さんの回復に貢献できる看護師として成長していきたいと考え、志望いたしました。
回復期リハビリテーション病棟 見学ではここをチェック
病院見学は現場の空気感を知る貴重な機会です。特に回復期では、患者さんの回復プロセスに寄り添うからこそ、現場の雰囲気やチームの姿勢が自分に合うかを見極めることが重要です。次のような視点で見学してみるのがおすすめです。
看護師が患者さんの生活にどう関わっている?
リハビリ前後の声かけや離床支援など、単なるケアにとどまらず生活全体に踏み込んだ関わりがあるか。
多職種との連携の様子は?
回復期は、PT・OT・STなどリハビリ職との連携が重要。リハ職とのコミュニケーションや、看護師が意見を出せる雰囲気があるかを確認しましょう。
退院支援の体制や看護師の関わり方は?
退院支援・在宅復帰に向けた具体的な支援(家族指導・環境調整など)に看護師がどう関わっているかも意識してみるとよいでしょう。退院後の生活を見据える回復期ならではのやりがいを感じられるポイントです。
新人看護師への教育・支援は?
プリセプター制度などの教育体制、新人看護師のサポート体制がどうなっているかは働きやすさに直結します。自分が働く姿をイメージして確認してみましょう。
患者さんとスタッフの距離感・声かけは?
患者さんが在宅復帰を目指してリハビリに取り組む回復期は、退院後の生活も視野に入れた支援が求められます。看護師・リハスタッフと患者さんとの間に前向きな関係性が感じられるか、実際のコミュニケーションの様子を感じてみましょう。

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まとめ
回復期は、「自宅での生活に戻る」ことを支える看護を実践できる場所です。派手さはなくても、患者さんや家族の「ありがとう」がやりがいに変わります。回復期からのキャリアスタートが少しでも気になったら、まずは情報収集や見学から始めてみましょう!




