最終更新日 2023/10/31

梅毒

梅毒とは・・・

梅毒(ばいどく、syphilis)とは梅毒トレポネーマによって引き起こされる性感染症のことである。なお、梅毒は第五類感染症(全数把握対象疾患)であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出る。

 

【症状】
梅毒は大きく早期梅毒と後期梅毒に分けられ、早期梅毒はさらに第1期梅毒と第2期梅毒に分けられる。

 

(1)1期梅毒:感染後10~90日
第1期梅毒では、口唇、口腔咽頭粘膜、陰部周辺、肛門周辺などの感染部位に硬性下疳(こうせいげかん)と呼ばれる無痛性の潰瘍をを伴うしこりを認めることがある。。
硬性下疳は自然に消失するため気づかれないことも多い。

 

(2)2期梅毒:1期の症状出現後410週間
硬性下疳の出現後4~10週間で第2期梅毒となり、発熱、頭痛、咽頭痛などの全身症状やリンパ節腫脹が見られる。また、手掌や足底、体幹部に「バラ疹(ばらしん)」とよばれる淡い赤い色の発疹をみとめるほか、脱毛症や消化管障害、肝腎障害、神経学的異常や視覚聴覚の異常も時折見られる。

 

(3)3期梅毒:感染後2年以上
心血管症状、ゴム腫(ゴムのような腫瘍)、進行麻痺脊髄癆(せきずいろう)などがみられ、死に至ることがある。しかし、現在は、早期梅毒の時期に発見・治療が行われることが多く、ここまで進行した状態は極めてまれである。

神経梅毒(や神経に影響する梅毒)は長年、遅発性梅毒の症状とされていたが、近年はどの病期でも出現し得ることがわかっている。

 

(4)先天梅毒
妊婦が梅毒にかかることで、母子感染する場合を先天梅毒という。先天梅毒では胎児の流産や死産、低体重や骨の異常などの症状が見られる場合がある。

 

【検査・診断】
梅毒の検査には通常、血清学的検査が行われる。血清学的検査には非トレポネーマ試験(RPR)とトレポネーマ試験(TPLA、FTA-ABS)がある。両者を併用して診断を行う。

 

そのほかにも暗視野顕微鏡検査や直接蛍光抗体検査PCR検査なども診断に用いられることがある。

 

【治療法】
基本的に、抗菌薬で治療する。

 

・第一選択薬
ベンジルペニシリンベンザチンを早期梅毒では単回、後期梅毒では週1回で計3回を筋肉注射する。もしくは、アモキシシリンを28日間内服する。治療の初めごろにヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(発熱、発疹、頭痛)が見られることがある。

 

・第二選択薬
テトラサイクリン系のミノサイクリンを4週間内服するが、妊婦には使用しない。

 

・第三選択薬
マクロライド系のスピラマイシンを4週間内服する。ただし、マクロライド耐性の報告も多く、他の薬剤が使用できない場合のみ考慮する。

 

【原因】
ほとんどは性行為もしくは経胎盤で感染する。皮膚や粘膜から感染し、リンパ節に達した後、そこから血液をめぐり全身に広がる。
理論的には輸血でも感染するが、梅毒トレポネーマは温度や湿度の変化には弱いため、輸血の保存条件下では48時間以上生存できないため、まれである。

 

【予防】
梅毒の感染経路のほとんどは、性行為などの粘膜接触による感染である。そのため、コンドームなどを使用し、直接的な粘膜の接触を避ける。

 

【引用・参考文献】
1)Kimberly A. Workowski,et al.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021.
2)日本性感染症学会. 性感染症 診断・治療ガイドライン2020.診断と治療社,2020,p136.

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