パーキンソン病に関するQ&A
【大好評】看護roo!オンラインセミナー
『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は「パーキンソン病」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
〈目次〉
- 1.パーキンソン病ってどんな病気?
- 2.パーキンソン病って何が原因なの?
- 3.パーキンソン病ではどんな症状が出現するの?
- 4.パーキンソン病に特徴的な検査所見は?
- 5.パーキンソン病にはどんな治療が行われるの?
- 6.薬の効果はずっと続くの?
- 7.パーキンソン病の看護のポイントは?
パーキンソン病ってどんな病気?
パーキンソン病は、大脳基底核の黒質から放出される神経伝達物質であるドパミンが減少し、随意運動がうまくできなくなる状態です。
正常な状態では、黒質の神経細胞には、神経伝達物質であるドパミンが大量に貯蔵されています。ドパミンは、黒質の神経線維を介して、大脳基底核の線条体に輸送され、細かな運動を調整しています。ところが、パーキンソン病では黒質のドパミンが減少し、線条体に十分なドパミンが届かなくなるのです。
パーキンソン病は高齢者に発症しやすい進行性の病気です。
パーキンソン病って何が原因なの?
パーキンソン病の原因は、黒質のドパミン作動性神経細胞の変性や脱落です。
パーキンソン病ではどんな症状が出現するの?
パーキンソン病になると、静止時振戦(しんせん)、筋固縮(こしゅく)、無動(寡動/かどう)、姿勢反射障害などの錐体外路症状を示します(表1)。
①静止時振戦:静止時に不随意的に起こる震えのことです。初期には手足が震え、進行すると頭部、口唇、下顎にも現れます。振戦は、緊張時に強くなります。
②筋固縮:関節を他動的に動かしたときに、屈曲・伸展の両方に抵抗を感じる状態で、四肢や頚部によく現れます。ギコギコといった歯車のような抵抗を感じることを歯車様固縮といい、パーキンソン病の代表的な症状です。
③無動(寡動):動こうとしてもサッと動けない、というように、動作の開始に時間がかかるような状態のことです。また、すべての動きが緩慢になります。
④姿勢反射障害:椅子から立ち上がるときにバランスを崩す、姿勢を保持することができない、などの症状が現れます。病状の進行に伴い、徐々に姿勢が前屈みになり、膝関節が屈曲してくるようになります。
その他、自律神経障害(排便・排尿障害、嚥下障害、起立性低血圧など)や、歩行障害も現れます。歩行障害には、歩幅が小さくなる小刻み歩行、最初の一歩がなかなか踏み出せないすくみ足などがあります。
パーキンソン病に特徴的な検査所見は?
パーキンソン病では、頭部の画像検査(CTやMRIなど)、血液検査、脳波などでは、明らかな異常はありません。臨床症状が診断の大きな鍵になり、そのほか、神経学的所見や薬の効果などから診断されます。
パーキンソン病にはどんな治療が行われるの?
パーキンソン病は、原因がまだ明らかになっていないため、症状の改善とQOLの維持・向上を目的とした対症療法が行われます。
対症療法には、薬物療法、リハビリテーション、外科的治療があります。
薬物療法には、主として、ドパミン補充薬、ドパミン受容体刺激薬、ドパミン放出促進薬などが組み合わせて与薬されます。
リハビリテーションは、歩行、姿勢の保持、関節可動域維持のために実施されます。
振戦などの症状が著しい場合には、外科的治療である脳深部を刺激する脳深部電気刺激術が行われます。
薬の効果はずっと続くの?
ドパミン補充薬の服用が長期間に及ぶと、効果が減弱してきたり、効いたり効かなくなったりするなど、様々な現象が現れます。
ウェアリング・オフ現象がその1つです。これは、薬効時間が短縮することをいいます。服用後2〜3時間で効果が切れて症状が悪化し、服用すると症状は改善します。また、服用時間に関係なく、薬が効いて症状がよくなったり、悪くなったりするオン・オフ現象も現れます(図1)。
さらに、自分の意思とは関係なく手足や口などが動くジスキネジアや、筋の緊張が異常に亢進するために、足が持続的に引っ張られたりするジストニアなどの不随意運動が見られるようになります。
ドパミン補充薬を長期間服用すると以上のような現象が現れるため、ドパミン補充薬を減らし、ドパミン受容体刺激薬やドパミン放出促進薬を併用することが推奨されています(表2)。
パーキンソン病の看護のポイントは?
パーキンソン病には、さまざまな治療法が行われていますが、徐々に日常生活に困難が生じます。そのため、患者は予後に不安を感じ、抑うつ的になることがあります。そのような患者の心理を理解して接することが基本です。そのうえで、日常生活の援助や工夫、服薬指導など、療養生活を支援します。
抗パーキンソン病薬の治療を突然中止すると、悪性症候群(高熱、や発汗、頻脈、唾液分泌過多症、血圧変動などの自律神経症状、筋固縮、無動、振戦などの錐体外路症状、嚥下困難、失声、意識障害)が起こり、きわめて危険な状態に陥ることがあります。患者の服薬状況と、症状の観察を行う必要があります。
⇒〔病気のなぜ?〕記事一覧を見る
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版