最終更新日 2018/01/25

パーキンソン病

パーキンソン病とは・・・

パーキンソン病(ぱーきんそんびょう・PD・Parkinson disease)とは、中の黒質細胞が変性することによりドパミン産生が低下し、これによって大脳基底による運動の制御が障害され、スムーズに体が動かせなくなる神経変性疾患である。

患者数は人口10万人あたり100~150人と推測されており、変性疾患の中では最も頻度が高く、特定疾患に指定されている。中年以降に好発し65歳以上の高齢者では、有病率は数倍になる。今後、社会の高齢化に伴い重要度が増す重要な疾患と言える。

【症状】
一側上肢や下肢から発症する安静時の震え(安静時振戦)が生じ、次第に動作が乏しくゆっくりとなる(無動)。そのため、無表情になり目は一点をみつめるような仮面様顔貌や、声が小さく、字もだんだん小さく小字症が生じる。また立位になると前傾姿勢となり転倒しやすくなり(姿勢反射障害)、受動運動に対しては、関節の歯車様または鉛管様の抵抗(筋強剛)が認められる。上記のような安静時振戦、無動、姿勢反射障害、筋強剛はパーキンソン病の四大症状と言われる。

このような特徴からパーキンソン病の患者は歩行しようとすると、足がすくみ(すくみ足)、前かがみで床をするように小刻みに歩行する(すり足歩行、小刻み歩行)。そして一旦歩き始めると、姿勢が前のめりになって加速し止まれなくなる(加速歩行)ため、転倒しやすく要注意である。

その他、便秘や排尿障害起立性低血圧といった自律神経症状や抑うつ、不安など神経症状も生じる。

【診断】
パーキンソン病は上記のような臨床症状から疑われ、病歴や画像から脳血管障害や薬剤性、その他変性疾患を除外し、抗パーキンソン病薬で症状の改善を認めて初めてパーキンソン病と診断される。補助診断としてMIBG心筋シンチグラフィーでMIBG取り込み低下を確認する方法もある。

パーキンソン病と診断された患者のうち、Hoehn & Yahr分類(ホーン・ヤール分類/パーキンソン病の臨床症状の重症度スコア)がⅢ以上で、かつ生活機能障害ⅡからⅢを有するものは特定疾患に認定される。

【治療】
薬物療法として、①L-dopa、②ドパミンアゴニスト、③抗コリン薬、④アマンタジン、⑤MAO-B阻害薬、⑥COMT阻害薬、⑦ゾニサミドが使用される。

L-dopaは最も強力な抗パーキンソン病薬で第一選択薬となりやすいが、長期使用でL-dopaの有効時間が1~2時間に短縮し、効果が切れるとパーキンソン病症状の悪化を認めるwearing off(ウェアリング・オフ)が起こりやすいため、70~75歳以下の認知機能障害などの合併症がない場合は、ドパミンアゴニストから治療を開始する。また薬物療法でコントロール困難な場合は、脳深部刺激療法(deep brain stimulation: DBS)を行う場合もある。

執筆: 神谷侑画

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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