痛風に関するQ&A

 

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「痛風」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

痛風ってどんな病気?

痛風とは、尿酸が血中に異常に増加して高尿酸血症をきたし、尿酸Na結晶が関節腔に蓄積し、急性関節炎や痛風結節を起こす病気です。関節炎が起こると、風に当たっただけでも痛むことから、痛風と名付けられました。

 

痛風は、40〜50歳代の男性に多く発症します。また、痛風の家族歴があると高率に発症するので、発症には遺伝的素因が関与しています。

 

痛風の原因になる尿酸って何?

尿酸は、プリン体代謝産物です。プリン体は、細胞のや染色体の中にある、遺伝情報を担う核酸の成分です。また、プリン体はエネルギー伝達物質でもあり、生体には欠かせない物質です。そのプリン体が肝臓で分解されて尿酸が生成されます。

 

なぜ尿酸が血中に異常に増加するの?

尿酸は生体の代謝産物であり、腎臓から尿中に排泄されます。ところが、尿酸の生成過剰、尿酸の排泄低下、あるいは両者により、高尿酸血症となります。

 

尿酸の生成過剰は、プリン代謝の異常、白血病多発性骨髄腫などで細胞崩壊が亢進した場合、プリン体の含有量が多い食品の多食などにより起こります。尿酸の排泄低下は、腎機能障害の他、尿酸排泄を阻害する薬剤(チアジド系降圧利尿薬など)の投与によっても起こります。

 

痛風はどんな症状が出現するの?

通風の主な症状は、痛風発作(関節炎)と痛風結節です(図1)。突然、関節に激しい痛みが起こる痛風発作は、足の母趾(足趾)関節に最も多く起こりますが、その他、膝関節やアキレス腱などにも起こります。激痛は2〜3日でピークを過ぎ、約1週間で治まります。

 

図1痛風の症状

痛風の症状

 

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.340、医学芸術社、2007より改変)

 

その後、無症状に経過しますが、高尿酸血症が改善されなければ再び痛風発作が起こり、次第に頻発するようになります。

 

痛風発作を頻回に繰り返すうちに、痛風結節が生じます。結節は次第に大きくなり、関節の破壊に至ることもあります。

 

痛風発作が起こるメカニズムは?

尿酸は血中に増加すると、血中に溶けきれなくなって結晶化し、関節に沈着します。

 

すると、沈着した尿酸を白血球が異物とみなして貪食します。同時に、白血球から炎症の基になるプロスタグランジンなどの物質が放出され、炎症が激しくなります。

 

その結果、激しい痛みが起こったり、腫れが生じたりします。また、血管内皮から炎症性サイトカインが分泌され動脈硬化が起こります。

 

痛風の検査と診断は?

血清尿酸を測定し、男性、女性とも7.0mg/dL以上を高尿酸血症です。高尿酸血症に加え、痛風発作の発現、あるいは痛風結節に尿酸の結晶が認められれば、痛風と診断されます。

 

痛風発作が起こっているときは、血清尿酸の値が低下しているので注意が必要です。

 

痛風にはどんな合併症があるの?

尿酸が尿細管に蓄積するため、ネフロンが萎縮し、腎障害を起こします。また、痛風では尿のpHが酸性に傾くことが多いため、尿路結石を合併しやすくなります。

 

さらに、肥満症、脂質異常症糖尿病といった生活習慣病を合併しやすく、高尿酸血症が動脈硬化症の原因になることから、脳卒中心筋梗塞を合併することがあります。

 

痛風ではどんな治療が行われるの?

通風に対しては、薬物療法と食事療法が行われます。

 

薬物療法は、痛風発作に対する治療と、高尿酸血症に対する治療に分かれます。

 

痛風発作に対する薬物療法では、発作の予感時には痛風発作予防薬であるコルヒチニンを使用し、発作への進展を防ぎます。コルヒチニンは、好中球の遊走や貪食などを抑制する作用があります。痛風発作が出現した場合は、炎症の進展を早急に抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬を投与します。

 

高尿酸血症に対する薬物は、原因によって使い分けます。尿酸が過剰に産生されている場合はアロプリトール、フェブキソスタットなどの尿酸生成抑制薬を、尿酸の排泄が阻害されている場合はプロベネシド、ベンズブロマロンなどの尿酸排泄促進薬を用います。

 

食事療法は、かつては、かなりきびしいプリン体制限食が指導されていました。しかし、痛風患者は肥満症などの生活習慣病を合併することが多いことや、食品中のプリン体の大部分は腸管内で細菌に分解されることなどから、最近では、生活習慣病の予防や治療に重点をおいた食事指導を行うようになっています。

 

具体的な食事指導の内容は、①摂取エネルギーは、理想体重1kgあたり25〜30kcalとし、バランスよく栄養素を摂取すること、②尿路結石や腎障害を予防するため、十分に水分を摂取すること、③高血圧予防のため、塩分を控えること、④アルコール飲料を控えることなどです。また、適度な運動も指導します。

 

痛風の看護のポイントは?

通風発作が出現しているときは、患部を安静にして、冷却に努めます。痛風発作が起こっていないときは、服薬管理や食事・運動指導を行うことが大切です。

 

食事や運動といった生活習慣を改善することは、容易ではありません。患者のこれまでの生活習慣を把握するとともに、なぜ改善しなければいけないのか、という理由を説明し、どうすれば改善できるか患者と一緒に考えていきましょう。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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