患者のそばには私1人。人工呼吸はする?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は一人のときの人工呼吸に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
患者のそばには私1人。人工呼吸はする?
一人のときは人工呼吸は行いません。
〈目次〉
人がまだ集まらない! できることは?
質のよい胸骨圧迫(強く[少なくとも5cm]、速く[1分間に100~120回])を続けましょう。
人と救急カートが来ました。することは?
モニター装着、人工呼吸、静脈ルートの確保を行いましょう。
人工呼吸の方法は
2人以上の人が集まり、バッグバルブマスクが準備できたら始めましょう。図1のように患者の頭部を後屈させ、マスクを鼻と口にぴったりと当て、30回の胸骨圧迫、2回の人工呼吸をくり返します。
図1胸骨圧迫と人工呼吸


空気が肺にしっかり入るように、患者の頭部を後屈させ、EC法でマスクを空気が漏れないよう顔にぴったりと当てつつバッグバルブマスクを押さなければなりません。
EC法とは、マスクを保持した手の中指から小指までを「E」、母指と示指を「C」の形にして行うマスクフィッティング法です(図2)。小指を患者の下顎角に当てて、下顎骨を上に突き上げるようにして下顎を挙上させて行います。
これを1人で行うのは難しいので、マンパワーが許せば図2bのように、右手と左手でそれぞれ「EC」の形をつくってマスクに添え、1人で実施する際と同様に下顎角に小指を当て下顎骨を挙上させ、もう1人がバッグバルブマスクを押すようにするとよいです。慣れないと難しいので、日ごろより人形を使って練習しておきましょう。
図2バッグバブルマスクによる人工呼吸

人工呼吸をするとき、どうしても一生懸命バッグバルブマスクを押してしまいますが、多くの空気を送ると、胃に空気がたくさん入ってしまい嘔吐させてしまう可能性があります。また、入れすぎた空気で胸腔内圧が上昇し、心臓に血液が戻りにくくなり血流が悪くなる可能性もあります。
人工呼吸は1回1秒、軽く胸が上がる程度の空気を送ります。バッグバルブマスクを軽く押す感覚を人形を使って覚えましょう。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術 第2版』 (編著)江口正信/2024年5月刊行/ サイオ出版


