最終更新日 2023/10/31

眼瞼下垂

眼瞼下垂とは・・・

眼瞼下垂(がんけんかすい、blepharoptosis)とは眼瞼の挙上筋または、その支配神経の障害により、目を開けた時に正常位置よりも瞼縁(けんえん:まぶたのふち)が下がる病態である。

 

原因

主に先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂に分類される。

 

先天性眼瞼下垂

上眼瞼挙筋の先天的な形成不全に伴うもの。

 

後天性眼瞼下垂

以下のような種類がある

・腱膜性眼瞼下垂:加齢や白内障手術、長期のコンタクトレンズ使用によるもの。
・神経原性眼瞼下垂:動眼神経麻痺やホルネル症候群(Homer症候群)によるもの。
・筋原性眼瞼下垂:重症筋無力症など。
・症候性眼瞼下垂:外傷や腫瘍など。

 

偽眼瞼下垂

先天性眼瞼下垂や後天性眼瞼下垂のような異常が認められない眼瞼下垂。

 

症状

自覚症状として疲労感、霧視、涙液の増加が挙げられる。
眼瞼下垂の代償期は、目を開けるために頭皮や前頭部の筋肉を継続的に動かす。そのため、眼精疲労や緊張型頭痛を自覚することもある。

 

検査

眼瞼下垂の原因となる疾患(脳梗塞脳動脈瘤糖尿病などほかの疾患による動眼神経麻痺など)の精査を行う。

 

上眼瞼挙筋機能検査

上眼瞼挙筋の機能を調べる検査である。
眉毛部の上を固定し、前頭筋の使用の影響がないように下方視をした状態と上方視した状態の上眼瞼縁の移動距離を測定する。正常値は10mm以上であり、4mm以下は上眼瞼挙筋不応例と判断する。

 

フェニレフリンテスト

ホルネル症候群の鑑別に有用な検査である。
ホルネル症候群であれば交感神経の異常で縮瞳した状態となっている。その状態からフェニレフリン点眼薬を両眼に点眼し、瞳孔が散大するかどうかを評価する。散瞳が認められればホルネル症候群と診断可能である。

 

診断

角膜中央(光反射がある一点)から上眼瞼縁までの距離をMRD(Margin reflex distance)といい、MRDの正常範囲内は3.5〜5.5mmとされている。MRD<3.5mmであれば眼瞼下垂と診断できる。
また、眼瞼下垂の原因を特定するためには病歴・身体所見に加えて追加の検査が必要となる。

 

図1眼瞼下垂

眼瞼下垂

 

治療法

治療方法は年齢、病因、重症度、両側性かどうか、上眼瞼挙筋の機能、眼科的または神経学的なほかの異常所見の有無によって異なる。

 

治療法には非手術療法と手術療法がある。

 

非手術療法

重症筋無力症やHorner症候群などの治療可能な原因疾患がある場合に考慮される。

 

手術療法

眼瞼下垂症を認め、かつ、視野障害を認めた場合に適応となる。また、整容的な理由で手術療法が選択される場合もある。

 

手術療法にはミュラー筋切除術、挙筋腱膜短縮術、前頭筋吊り上げ術などがある。

 

【引用・参考文献】
1)大鹿哲郎ほか編.眼科学. 第3版.文光堂,2020,23-25.
2)Josef Finsterer.Ptosis:causes,presentation,and managementAesthetic Plast Surg.2003.27(3),193-204.
3)Julian D Perryet al.A new algorithm for ptosis repair using conjunctival Müllerectomy with or without tarsectomy.Ophthalmic Plast Reconstr Surg.2002,18(6),426-9.

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