専門看護師になるには?|大学院受験・合格率・費用・働きながら目指せる?

「専門看護師になるには」タイトルイラスト

 

専門看護師になるには、看護系の大学院に進学し、日本看護協会が実施する認定審査に合格する必要があります。

 

認定看護師よりも資格取得の難易度は高いですが、より高度な知識・技術を究めることができるでしょう。

 

専門看護師になるための条件のほか、気になる費用や合格率について解説します。

 

 

専門看護師 資格取得までの流れ

専門看護師になるための流れは下の図の通りです。

 

専門看護師の資格取得の条件や流れの解説図。看護師免許を持っている→看護系大学の大学院(修士過程)で専門看護師教育過程を修了する、かつ実務研修が5年以上ある(うち3年以上は専門看護分野)→認定審査(書類審査・筆記試験)→専門看護師認定証の交付・登録→5年ごとに更新(看護実践の実績、研修実績、研究業績等の書類審査)

出典:専門看護師(日本看護協会)

 

専門看護師になるには、

 

1)看護系の大学院に入って2年間学ぶ

2)認定審査に合格する

 

の2つが大きな条件となります。

 

※長期履修コース(3年かけて修了する)を設けている大学院もあります

 

このほか「目指す専門分野での実務研修(実務経験)が3年以上」なども必要です。

 

一般的なパターンとしては、看護師として臨床現場を10年ほど経験し、「この領域の専門性を深めたい」と専門看護師を目指す――という方が多いでしょう。

 

 

1)看護系の大学院に入る

 

専門看護師になるには、

「専門看護師教育課程(専門看護師コース)のある看護系大学院」に入る必要があります。

 

2023年4月現在、107大学327課程があります。

目指す専門分野によって「どこの大学院で学ぶか」は異なります。

 

専門看護師コースのある大学院

専門看護師教育機関・教育課程 一覧・PDF(日本看護協会

専門看護師を目指せる大学院検索(日本看護協会)

高度実践看護師教育課程検索(日本看護系大学協議会)

 

大学院の入試は、おおむね次のようなスケジュールです(大学院によって異なります)。

看護系大学大学院(専門看護師コース)入試スケジュール例の図表。7~8月に出願。9月に入学試験(外国語・専門科目・小論文・面接など)、合格発表、翌年4月に入学。※二次選抜や推薦入試がある大学院もある

 

 

専門看護師コースは修士課程(2年~)です。

看護教育論・看護管理論・看護理論・看護研究・コンサルテーション論・看護倫理・看護政策論・フィジカルアセスメント・病態生理学・臨床薬理学や各専門分野について学ぶほか、実習などを行います。

 

 

Point

専門看護師コースの大学院入試を受験できるのは、基本的には「大学卒」の看護師が対象ですが、「専門卒・短大卒・5年一貫校卒」の看護師でも一定の条件をクリアすることで受験が可能です。

専門学校卒でも専門看護師を目指せる

 

 

2)認定審査を受験する

 

大学院を修了したら、いよいよ「専門看護師認定審査」を受験します。

 

専門看護師の認定審査は日本看護協会が毎年1回行っています。認定審査には「書類審査」と「筆記試験」があり、例年の日程は以下の通りとなっています。

 

専門看護師 認定審査のスケジュール(目安)

6~7月 Web申請、申請書類の提出
9~10月 書類審査の合格発表
10~11月 筆記試験
12月 筆記試験の合格発表
1~2月 認定証の受領

出典:専門看護師(日本看護協会)

 

 

専門看護師の資格を取得した後は、5年ごとに更新審査を受ける必要があります。

 

専門看護師を目指すのにかかる費用は?

専門看護師を目指すのにかかる費用は150万~200万円ほどです

 

専門看護師の資格取得にかかる費用例の図表。大学院進学にかかる費用は2年間で約200万円(受験料3万円、入学金30万円、授業料60万円×2年、教科書代など20万円、その他(施設費・実習費など)30万円。専門看護師の認定審査にかかる費用は約10万円(受験料51,700円、認定料51,700円。5年ごとの更新にかかる費用は約5万円(審査料30,800円、認定料20,900円))

参考:専門看護師(日本看護協会)、2021年度(2022 年度実施)看護系大学に関する実態調査(日本看護系大学協議会)

 

やはり大学院の2年間の学費が大きい金額になります。

このほか、自宅から遠い大学院に進む場合は、住居費や交通費などが別途かかることもあるでしょう。

 

 

働きながら専門看護師を目指せる?

 

専門看護師は、資格取得までの経済的な負担が小さくないため、「働きながら資格取得を目指せるか」が気になるところです。

 

ただ、日本看護協会の調査によると、専門看護師の資格を取得した人のうち約6割は「大学院に通っている間は退職・休職した」と回答しています。

 

専門看護師が大学院に通っている間の就労状況についての円グラフ。勤務を継続した29%、休職した22%、退職した42%、その他7%

出典:2019年度専門看護師活動実態調査結果(日本看護協会)

 

退職した理由は「働きながらでは学業のための時間が取れない」「大学院が遠かった」「入学の要件で就業が禁止されていた」「病院が進学を許可しなかった」などです。

 

働きながら専門看護師を目指すのは、なかなか簡単なことではないようです。

 

 

大学院進学の支援制度を活用する方法も

 

多くの大学院では、長期履修コース(3年かけて修了するコース、授業料は2年分で可)を設定しており、働きながら学ぶナースを応援しています。

 

また、医療機関によっては、入学金や学費を負担したり、休職中でも基本給を支給したりなど、専門看護師を目指す方への支援制度を設けているところもあります。

 

このほかに、日本看護協会の奨学金各種団体の奨学金都道府県の奨学金それぞれの大学院が独自に設けている奨学金なども活用できます。

 

 

専門看護師を目指す難易度・合格率は?

専門看護師は、大学院で学ぶ必要があることや就学に関する経済的な負担などを考えると、看護師のキャリアアップとして難易度は低くはありません。ですが、その分、より深く看護を学ぶことができ、チャレンジしがいのある資格と言えます。

 

 

専門看護師 認定審査の合格率

 

専門看護師の認定審査の合格率は約78%となっています

 

※2016~2018年度の平均です。2019年度以降の合格率は日本看護協会が公開していません。

 

専門看護師認定審査の合格率のインフォグラフ

出典:専門看護師認定審査および認定更新審査結果について(日本看護協会)

 

 

専門学校卒でも専門看護師を目指せる

専門看護師になるには、大学院への進学が必須条件です。そのため、基本的には「大卒」の資格がまず必要になります。

 

ですが、「専門学校卒」など、大卒以外の看護師さんでも専門看護師を目指すことは可能です

 

Point

専門卒の看護師が専門看護師を目指すには?

 

【方法①】通信制大学で「看護学士」の学位を取る

【方法②】専門卒でも受験資格のある大学院で「出願資格の審査」を受ける

 

 

方法①通信制大学で「看護学士」の学位を取る

 

専門卒で専門看護師を目指す方法のひとつは、通信制大学(放送大学など)で「学士(看護学)」の学位を取得することです。

 

3年制の専門学校を卒業した場合、最短1年で必要な単位を学び、小論文試験などに合格すれば学士の学位を取れます。

 

看護学士の学位があれば、大学院の専門看護師コース受験資格が得られます

 

もちろん4年制の大学に編入する方法もありますが、働きながら目指す場合は通信制大学での学士取得のほうが負担は少ないでしょう。

 

 

方法②専門卒でも受験資格のある大学院で「出願資格の審査」を受ける

 

看護系大学院の多くは、

 

「3年課程の看護学校を卒業し、看護師として◯年以上の実務経験がある人」

 

などであれば、専門看護師コースの受験資格を認めています。

 

この場合、大学院独自の審査(出願資格審査、個別入学資格審査など)を受けるというワンステップが挟まります。資格審査は小論文や書類審査などが多く、この審査をパスすると、大学院入試を受験できる仕組みです。

 

[記事更新日:2023年8月24日、記事初出:2021年3月25日]

 

(看護roo!編集部)

 

(参考)

専門看護師(日本看護協会)

高度実践看護師教育課程について(日本看護系大学協議会)

2019年専門看護師活動実態調査結果(日本看護協会)

奨学金制度(日本看護協会)

助成金等(日本看護協会)

『看護系大学に関する実態調査』(日本看護系大学協議会、日本私立看護系大学協会)

 

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