血胸

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』より転載。
今回は血胸について解説します。

 

 

齋藤美和
さいたま赤十字病院救命救急センター外来・HCU看護師長
集中ケア認定看護師・呼吸療法認定士

 

 

血胸とは?

血胸は、穿通性外傷・鈍的外傷による血管損傷(胸部大動脈・上下大静脈・肺動脈・肋間動静脈・内胸動静脈・奇静脈)、肺損傷、心損傷、食道損傷、胸郭損傷(肋骨骨折・胸骨骨折・椎骨骨折など)、横隔膜破裂による腹腔内損傷などからの出血が、胸腔に貯留した状態をいいます。

 

ショックに陥る状態を、大量血胸として区別します。

 

 

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患者さんはどんな状態?

患者さんは大量出血による循環血液量の減少と、胸腔内圧の上昇により静脈還流障害から循環不全に陥ります(図1)。

 

同時に大量の血液が肺を圧迫するため、呼吸不全に陥ります。

 

図1 血胸の病態

血胸の病態

 

 

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どんな検査をして診断する?

身体所見では、患側胸部の聴診で濁音を認めます。

 

エコーにより胸腔内の液体貯留の有無を確認します(FAST)。

 

memo:FAST

Focused Assessment with Sonography for Trauma。外傷の初期診療における迅速簡易超音波検査法。心嚢、腹腔、胸腔の出血を調べる目的で行う。異常がみられなくても、時間をおいて繰り返し実施することが重要。

 

X線・CTでは、患側肺野のびまん性透過性低下がみられます。

 

 

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どんな治療を行う?

呼吸管理をしっかりと行い、酸素化の状況を判断して、適応と判断された場合は酸素療法を行います。

 

出血量によっては、胸腔ドレナージを行うことで虚脱した肺を再膨張させ、呼吸の安定化を図ります。

 

同時に循環血液量の減少をアセスメントし、循環の維持に努めます。輸液・輸血管理に伴い、止血術の必要性を検討します。

 

大量血胸の場合、1,000mL以上の出血が急速に起こると、呼吸と循環に影響を及ぼします。経動脈的塞栓術、開胸術などの治療の選択が必要となります(表1)。

 

表1 血胸に対する開胸術の適応

血胸に対する開胸術の適応

 

経動脈的塞栓術

胸部CTで造影剤の血管外への漏出が認められる場合、大腿動脈からカテーテルを挿入し、直接的に出血源となる血管の塞栓を行います。

 

術後は、胸腔ドレナージからの出血量の変化を経時的に確認し、穿刺部からの新たな出血や血腫の形成などの合併症に注意して観察します。

 

 

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看護師は何に注意する?

呼吸数・呼吸パターン、肺の聴診、酸素飽和度、呼吸困難の有無を継続的に観察し、変化を見逃さないようにします。

 

血胸は循環動態にも影響を与えるため、ドレーンからの排液量にも注意し、止血術や開胸手術などの必要性を早期に判断できるよう、観察を継続します。

 

疼痛による呼吸抑制にも注意し、過不足なく鎮痛を行います。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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