呼吸不全の理解

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』より転載。
今回は呼吸不全について解説します。

 

 

平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師

 

 

呼吸不全とは

呼吸不全とは、室内気吸入時の動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr以下となる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害を呈し、意識障害、呼吸数の増加、呼吸困難、チアノーゼなどの症状をきたす異常状態のことをいいます。

 

呼吸不全は、動脈血ガス検査の値により診断します。動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が45Torr以下となるもの(Ⅰ型呼吸不全)と、PaCO245Torrを超えたものⅡ型呼吸不全)に分類されます(図1)。

 

図1 呼吸不全の分類

呼吸不全の分類

 

呼吸不全の状態が1か月以上持続するものを慢性呼吸不全といい、1か月未満のものを急性呼吸不全といいます。

 

慢性呼吸不全の急性増悪は、急性呼吸不全ではなく、急性呼吸不全と慢性呼吸不全では、病態も治療方針も異なります。

 

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呼吸不全の治療

急性呼吸不全と慢性呼吸不全とでは病態と治療が異なるので、基礎疾患の把握が必要になります(表1)。

 

表1 呼吸不全の治療

呼吸不全の治療

★1 NPPV

 

PaO2が60Torr以下の場合には酸素療法を考慮し、PaO260Torr以上酸素飽和度を90%以上)に保つように酸素流量を設定します。ただし、CO2ナルコーシスに陥る危険(図2)を考慮し、不要な高流量酸素投与は避けるようにします。

 

図2 CO2ナルコーシス

CO2ナルコーシス

★1 中枢化学受容野

 

PaCO2が50Torrを超えている場合には、人工呼吸療法を考慮する必要があります。

 

慢性呼吸器疾患の増悪は、気道感染を契機に発症する場合がほとんどなので、気道感染の原因微生物を推定して検査をオーダーする必要があります。

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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