◯mab+FOLFIRI療法(看護・ケアのポイント)/大腸がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、大腸がん(大腸癌)の患者さんに使用する抗がん剤「◯mab+FOLFIRI療法」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。

 

第1話:『◯mab+FOLFIRI療法(化学療法のポイント)/大腸がん

◯mab+FOLFIRI療法

 

神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:46時間の持続投与のレジメンです。ポートを事前に留置しておくことが必要です。
  • ポイントB:イリノテカンによる消化器系の副作用に注意!
  • ポイントC:イリノテカンによる早期型下痢は予防できます。次のコースに投与する前に、ブスコパンを予防投与することで防ぐこともできます。

 

〈目次〉

 

必ず覚えて! ◯mab+FOLFIRI療法の注意点

投与前の注意点

◯mab+FOLFIRI療法は、進行がんの患者さんに対して行いますので、全身状態について十分評価しましょう

 

多量の腹水や胸水がある患者さんには、イリノテカン(カンプト)の投与は禁忌ですので注意しましょう。また、腹膜播種がある患者さんでは、イリノテカン(カンプト)により腸閉塞が誘発されることがあるため注意が必要です。

 

memoイリノテカンを投与するレジメンはココに注意!

イリノテカンの代謝酵素に関連するUGT1A1という遺伝子について事前に検査して調べておくことが推奨されます。特定の遺伝子型では副作用が強く出ることがわかっており、副作用の予測につながります。

 

また、フルオロウラシル(5-FU)は、46時間持続投与するため、一般的には中心静脈ポート(CVポート)を留置して外来で行います(図1)。

 

図1CVポートの留置例

CVポートの留置例

 

CVポートは、中心静脈カテーテルの一種で、小手術で皮膚の下に留置します。
使用する際には、セプタム部分を外表から穿刺することで、カテーテルを通して点滴を中心静脈に投与します。

 

memoCVポートのメリットとデメリット

【メリット】

 

・点滴漏れや血管障害が起こりにくい

 

・末梢血管よりは穿刺が簡単で、患者さんに与える苦痛だけでなく、穿刺する医療者側のストレスも軽くなる

 

・長時間の投与でもポンプを使用すれば、自宅で持続投与できる

 

【デメリット】

 

・人工物のため、感染や破損などの合併症が起こる可能性がある

 

・身体に対する負担は軽いものだが、手術が必要

 

◯mab+FOLFOX療法のポイントA

  • 46時間の持続投与のレジメンのため、CVポートを事前に留置しておくことが必要です。

 

投与中の注意点

イリノテカン(カンプト)の投与中は、早期型下痢(コリン作動性下痢)を主体とした消化器症状が出ることがあります。重度の下痢の場合は、脱水をきたして全身状態が悪化することがあります。投与直後にお腹が痛くなって下痢をするような患者さんは、この病態である可能性が高いため、ブスコパンの投与を検討しましょう。

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントB

  • イリノテカンによる消化器系の副作用に注意!

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントC

  • イリノテカンによる早期型下痢は予防できます。次のコースに投与する前に、ブスコパンを予防投与することで防ぐこともできます。

 

投与後の注意点

遅発性の下痢に注意を促し、食事摂取がままならない場合は、脱水の補正のために点滴が必要となることを説明しておきましょう。骨髄抑制が強く出る患者さんがいるため、突然の発熱などの症状が出た場合には、受診するように説明しましょう。

 

◯mab+FOLFIRI療法時の申し送り時のポイント

アレルギー反応の有無や急性期下痢の有無など、バイタルの変化などについて申し送りましょう。

 

申し送り例

本日より、進行大腸がんに対して◯mab+FOLFIRI療法を開始しています。本日の血液検査で抗がん剤の投与開始に問題ないことを確認しています。
イリノテカン(カンプト)投与直後から腹部痛があり、下痢を2、3回されたため、主治医の先生へ連絡し、ブチルスコポラミン(ブスコパン)投与の指示をもらいました。すぐにブチルスコポラミン(ブスコパン)を投与しましたが、それ以降は腹痛や下痢も治まっています。
現在は、フルオロウラシル(5-FU)の持続投与がされており、今後も継続してバイタルに注意して経過をみてください。

 

◯mab+FOLFIRI療法時の看護記録に記載すべきこと

来院時の発熱の有無、食事や排便、睡眠の状況、抗がん剤投与中のアレルギー反応の有無や嘔気や嘔吐などの症状やその程度などについて記載しましょう。

 

腹膜播種がある患者さんには、注意して使用する必要があるため、その有無や腹水の程度についても記載しましょう。

 

患者ケア・看護ケアはココを押さえる

早期型下痢、遅発型下痢の2つに注意して、継続して抗がん剤治療が受けられるようにケアしましょう。患者さんにもその点を説明し、下痢がひどい場合には、受診するように説明しておきましょう。

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医薬学総合研究科消化器・肝臓内科学

 


*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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