肝臓はどのような構造になっているの?

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。

 

今回は肝臓の構造に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

肝臓はどのような構造になっているの?

肝臓は三角錐を横にしたような形をしています。成人では体重の1/50くらいの重量があり(1.2〜1.5kg)、40歳頃に最大の大きさになります。

肝臓

 

肝臓は、肝細胞と血管の集合体です。肝細胞の数は2,500億個です。この肝細胞が50万個ほど集まって直径1〜2mmの六角柱の集合体を作り出します。これを肝小葉といいます。 

肝小葉

 

肝小葉は肝臓全体で50万個ほどあります。肝小葉の周囲にあるグリソン鞘(しょう)には、門脈の枝である小葉間静脈、肝動脈の枝である小葉間動脈、胆汁を胆管に送り出す小葉間胆管が並び、この3つは肝3つ組とも呼ばれます。

 

小葉間動脈と小葉間静脈は、肝小葉に入る前に合流します。血液は類洞(洞様毛細血管)を流れるうちに、肝細胞に種々の合成素材や肝細胞自体のための栄養成分を渡し、細胞からの不要物を受け取って肝静脈へ流れ込みます。 

 

肝臓には毎分約1Lもの血液が流れ込んでいます。そのうちの80%が門脈血、20%が肝動脈血です。門脈には、胃腸管(消化管)などの腹部臓器で吸収された栄養素や、経口摂取した薬物などを含む静脈血が流れ込んでいます。これらの物質は肝臓で代謝され、肝静脈を通って下大静脈から心臓に戻り、全身へ分配されます。

 

肝臓の機能に係わる物質を送るための血管であるところから、門脈は肝臓の機能血管とも呼ばれます。 肝臓に流れ込んでいるもう1本の血管である肝動脈は、酸素に富む動脈血を肝臓に供給するのが役割です。そのため、肝臓の栄養血管とも呼ばれます。

 

肝細胞は予備能力や再生能力に優れており、80%近くが障害されても症状が現れないため、時に沈黙の臓器といわれますが、その能力にも限度があります。肝臓が障害されて肝機能が低下すると、黄疸、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝肝硬変、肝臓癌などを発症します。

 

MEMO急性肝炎、慢性肝炎

ウイルス感染、薬物、アルコールなどによって生じる急性炎症性肝障害を急性肝炎といいます。慢性肝炎は、自己免疫や代謝異常など、様々な原因によって炎症性肝機能障害が6カ月以上続くものを指します。

 

MEMO脂肪肝(しぼうかん)

中性脂肪が肝臓に異常に沈着した状態が脂肪肝です。肥満、アルコール、糖尿病などが原因になることが多く、AST、ALT、γGTPなどの値が増加します。なお、アルコールを摂取しない場合でも非アルコール性脂肪肝が起こることがあります。

 

MEMO肝臓癌(かんぞうがん)

肝臓に発生する原発性肝臓癌(肝細胞癌、胆管細胞癌、嚢胞性腺癌など)と、肺癌子宮癌、癌、膵臓癌などが転移した転移性肝臓癌があります。

 

COLUMN肝硬変(かんこうへん)と門脈圧亢進症状

慢性進行性肝障害の末期症状が肝硬変です。肝臓が線維化して硬くなり、門脈圧亢進(門脈から先の小血管に血流が行かなくなり、門脈内に血液がうっ滞し、門脈の血圧が高くなる)状態になります。門脈圧亢進状態では側副路に大量の血液が流れようとし、その場所の血圧が異常に高くなります。そのため次のような症状が現れてきます。

 

  1. 食道静脈圧が高くなり、食道静脈瘤ができます。
  2. 腹壁表皮静脈に大量の血液が流れるために、静脈瘤ができます(メデューサの頭といわれます)。
  3. 直腸静脈圧が高くなり、痔になりやすくなります。
    肝硬変になると浮腫、腹水、消化管出血などが生じ、肝臓癌発生の危険率も高くなります。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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