最終更新日 2018/10/10

下痢

下痢とは・・・

下痢(げり、diarrhea)とは、24時間以内に3回以上、軟便または水様便が繰り返し排出されることである。症状の持続期間により急性、持続性、慢性の3つに分類される。14日未満は急性下痢、14日以上30日未満を持続性(遷延性)下痢、30日以上持続する場合を慢性下痢と定義される。

【病態】
下痢の病態としては、主に浸透圧性、滲出性、分泌性、腸管運動異常の4つに大別される。

浸透圧性下痢は腸管内に多量の高浸透圧性物質が流れ込むことで、水が腸管内に引き込まれて起こる。薬剤性(マグネシウム製剤、ラクツロースなど)や吸収不良症候群などがこれに当たる。

滲出性下痢は腸の炎症により腸管壁の透過性が亢進し、多量の浸出液が腸管内に流出することで起こる。血性下痢を来すことも多い。細菌性大腸炎(サルモネラ、カンピロバクターなど)、ウイルス性大腸炎(エンテロウイルスなど)、虚血性大腸炎偽膜性大腸炎などの炎症性腸疾患がその例である。

分泌性下痢は、消化管粘膜の分泌が異常に亢進することにより引き起こされる。主な原因は、コレラ菌や赤痢菌などの細菌が産生する毒素(エンテロトキシン)による腸炎である。

腸管運動異常による下痢は、過敏性腸症候群の腸管運動の亢進や、糖尿病などによる腸管運動の低下などが原因である。

【症状・治療】
急性下痢は主に感染性と薬剤性に分かれるが、感染性がほとんどであり、自然軽快するものが多い。ただし、その中でも細菌性大腸炎は重症化する場合や合併症を来すものがあるため、病歴を確認する必要がある。特に海外渡航後の下痢や血便を伴っている場合などは便の培養検査を行い、原因菌を同定することが重要である。

また、抗菌薬の投与歴や入院歴がある場合は偽膜性腸炎や非感染性が原因のこともあるため、病歴聴取が診断に有用となる。
高齢者などは下痢で体内の水分が奪われて脱水を来すこともあるため、脱水所見がないか診察を行い、必要に応じて入院も考慮する。

執筆: 大久保祐希

兵庫県立尼崎総合医療センター ER総合診療科フェロー

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