脳梗塞患者に対するtPA療法 ナースでも初期評価は可能?

脳梗塞は、動脈内に血栓が生じ、動脈を詰まらせてしまう疾患。脳細胞の壊死発生を抑えるもしくは壊死の範囲を最小限にするためには、できるだけ早い段階で血栓を溶かし、血流を再開させる必要があるのはご存じの通りです。

 

一刻を争う脳梗塞治療――アメリカでは、そんな脳梗塞治療(tPA療法)の初期評価を看護師に任せようとする動きがあります。

 

脳梗塞患者に対するtPA療法 ナースでも初期評価は可能?|看護師専用Webマガジン【ステキナース研究所】

 

tPA療法とはどのような治療か

アメリカでの現状を紹介する前に、まずはtPA療法についておさらいしておきます。

 

血栓溶解療法(tPA療法)とは、tPA(tissue-plasminogen activator:組織プラスミノゲン活性化因子)製剤を静脈内に投与する治療法。日本国内では2005年10月から治療の認可が下り、脳梗塞の画期的治療法として近年注目を集めています。

「強力に血栓を溶かす」ことがこの治療の最大のメリットではありますが、一方で

 

  • 出血性合併症のリスクがある
  • ●梗塞が起きてから3時間以内に製剤を投与する必要がある

 

など、医療側の「慎重さ」や「見極め」を強く求められる治療でもあります。

 

看護師の役割に革命を!イノーバ・ヘルスケア・システムによる取り組み

米国バージニア州にあるイノーバ・ヘルスケア・システムでは、tPA療法が実施できるか否かの初期評価を行うために、看護師の脳梗塞チームに対して専門的な訓練を行いました。患者の救命率を向上させ、高い治療効果を得るためには、看護師らを脳梗塞患者の一次対応者にさせることが最も近道であると考えたわけです。

 

訓練の結果、当該病院では、tPA療法を施す必要のある患者が、病院に搬入されてから治療を受けるまでの時間を大幅に縮小させることができたと報告しています。

 

また、このような時間短縮の効果により、同じくバージニア州にあるイノーバ・フェアファクス病院においては、tPA療法を受けた患者の割合が、2006年は2.1%だったものが、2012年には14.8%まで増加したとのことです。

 

訓練された看護師、実際にどのような行動を取るのか?

訓練を受けた看護師は、脳梗塞と思しき患者を発見した際、同じチームの他のメンバーに通知します。そして、すばやくCTスキャンで患部を撮影し、脳内出血がないことを確認します。その後、tPA療法を実施するに値するかどうかの判断を下します。

この行為はもともと内科医が行っていたのですが、医師は同時に他の救急患者を診なければならないことも多く、結果として、脳梗塞患者が病院に到着しても、tPA療法をすぐに始められないこともありました。

 

病態の把握や治療の是非、現在は医師との共同作業

「脳梗塞チームの看護師は、非常に有能なエキスパートになりました――」

そう述べるのはフェアファクス病院の神経科管理者バーバラ・マンシーニさんです。彼女は、こういった有能な看護師たちの位置づけについて、次のようにも述べています。

 

「現在、内科医らはすべての情報を正確に分析するために看護師たちの情報を頼りにしています。そして医師と看護師は一緒になって、患者がtPA療法の候補になり得るかどうかを判断しています。」

 

例えば、内科医が自宅や他施設など遠隔地にいた場合、看護師はテレストロークと呼ばれる電子機器を通じて内科医と患者情報を共有し、どう対処すべきかを相談したうえで最終決定を下します。

多くの患者の診断や治療に追われる医師に代わって、看護師だけでできることは積極的にやろうという姿勢がよく見受けられるアメリカ。tPA療法に関しても看護師の考えや判断が臨床上重要な位置づけにはなっているようです。

 

看護師単独によるtPA療法 今後の展望は

そんなアメリカにおいてでも、tPA療法の介入にはやはりやや慎重な姿勢が見られます。しかし看護師の能力と技術がさらに向上すれば、医師の助言なしでの診断、処置が可能になる日もそう遠くないかもしれません。

 

先にも述べた通り、tPA療法は日本でも導入されている治療法。しかし、実施には「画像診断が24時間可能であること」「十分な人員と設備を有する」「脳外科的処置が迅速に行える」などクリアすべき指針が多く、現在は限られた病院でしか治療の機会は与えられていません。とはいえ、今後広く普及していく治療の1つとなることは間違いないでしょう。

 

日本の看護師はどういう形でこの治療に関わっていくのか、今後の動きを注視したいところです。

 

(文)宮川梨沙

 

(参考)

Role revolutions: Nurses find ways around obstacles in stroke care

 

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