LGBTの看護師、職場で理解してもらえるか不安…|LGBTと看護のキホン(3)
この連載では、LGBTの患者さんが医療にかかるとき、どんな場面のどんなことに困っているのか、トランスジェンダーの現役看護師、浅沼智也さんと考えます。
今回は、患者さんだけでなく、医療スタッフにもLGBT当事者はいるという視点からも見てみます。
浅沼智也さんは1989年生まれ、トランスジェンダー男性(FtM)の現役看護師。「カラフル@はーと(@LGBTCatH)」共同代表
ホルモン療法を受けていること、伝えないとダメ?
トランスジェンダーの患者さんは、身体の性を変えるための治療をされている方もいると思います。医療の面で何か気をつける点はありますか?
トランスジェンダー当事者は、望む性に近づくためにホルモン療法を受けている方が多いです。
男性ホルモン/女性ホルモンを注射などで投与するホルモン療法は、強い副作用が伴うことがあり、肝機能障害や血栓症、糖代謝異常などのリスクが上昇します。
ほかの診療や処方に影響する可能性があるので、全身状態を確認することが必要です。患者さんがホルモン療法を受けている医療機関と連携して、診療情報を共有するなどの対応も検討するところかと思います。
ただ、当事者たちからは「医者にかかったとき、ホルモン療法を受けているって伝えた方がいい?」と、よく相談されるんです。
もちろん「伝えてください!」と答えますが、なぜ、当事者たちは申告をためらうのでしょうか。
実は、当事者たち自身は、副作用のリスクにそれほど自覚的ではないことも多いんです。
さらに、きちんとした医師の指導を受けず、ネットなどで個人輸入したホルモン剤を投与している人も多いという現実があります。
性同一性障害に対するホルモン療法は、保険が適用されない自由診療です。専門的な医療機関も少なく、継続して受診する負担が大きいという事情があり、半ば自己流のホルモン治療をされている方も少なくありません。
こうした事情に、医療者の無理解や偏見への恐れも加わって、「できれば言いたくない」という気持ちが働きがちです。
なので、トランスジェンダーの患者さんが来院されたときは、医療者の側がホルモン療法の可能性を想定して対応してくれれば安心だと思います。
ここはLGBTに理解のある医療機関?
「うちの病院はLGBTの患者さんに配慮しています」ということが伝われば、当事者の方が受診しやすくなるのかも…。どんなことをしたら、「ここなら安心して受診できそう」と思ってもらえるでしょう?
LGBT当事者にとって「ここなら安心」という医療機関が増えるのは、本当に心強いと思います!
そうした情報を発信している医療機関は「LGBTフレンドリーな医療機関」なんて言われたりしていますね。
たとえば、
- 医療機関の公式サイトに、LGBT患者さんへの対応方針などに関する情報を掲載する
- 院内の患者さんの目に留まるところにレインボーフラッグを飾る
- 待合室などに啓発リーフレットなどを置く
といったことがあれば、ひとつの目安になると思います。
もちろんアピールだけでなく、行動も伴わなければLGBTフレンドリーとは言えませんから、対応マニュアルを整備したり、院内研修をしたりといった取り組みも進めてほしいです。
ただ、医療機関の理解はまだ低く、実際には難しい面も多いとは思います。
僕も勤務する病院でマニュアルをつくることを提案しているんですが、院内外の研修や勉強会がほかにもたくさんある中で「病院として取り組むべき優先度が高い」とは、なかなか理解してもらえません。
できるところから一歩一歩、進めていくしかないかなと思いますが、一人でも多くの医療者に応援してもらえたら心強いです。
LGBT当事者の看護師です。職場で受け止めてもらえるか不安
LGBT当事者は別に患者さんだけではなくて、一緒に働く看護師や医療スタッフにもいる、ということですよね。
そうなんです。います、普通に。
僕がまだ戸籍変更をしていなかった新卒のころ、職場ではカミングアウトはしませんでした。管理者にだけ伝えて、望む性(男性)で対応してもらっていました。
ところが、いつの間にか、病院全体の人に知られていたんです。
ある日、医師から、
「実は女なんだって? おなべなんだろ?」
「アソコはどうなってんの?」
と侮蔑的な言葉を投げつけられました。
いま振り返ると「それはセクハラ、パワハラです」と抗議できればよかったんですが、当時は新人の看護師で、仕事を覚えるだけでもいっぱいいっぱい。とても医師に言い返せるような状況ではなくて…。医師だけでなく、同僚の看護師にも差別的なことを言われました。
僕はうつ病になり、結局その職場を辞めることになりました。
LGBT当事者が医療機関で働く場合、そもそも周囲にカミングアウトするのか、トランスジェンダーであれば望む性で働きたいのか、まずは本人の意向が大切です。
そのうえで、必要に応じて更衣室や仮眠室、トイレなど、本人の希望やパス度(見た目が望む性にどれだけ近いか)、同僚の気持ちなども考慮して対応を決めることになるでしょう。
実際に決めるのは本人と管理者だと思いますが、「同僚にLGBT当事者がいる」ということを周囲も受け止めてほしいと思います。
「あの人、LGBTなんじゃない?」と興味本位で本人に確認して強制的にカミングアウトを引き出し、「やっぱり! 当たった当たった~!」と騒いだり、「○○さん、やっぱりそうなんだって」と言いふらしたりは、医療の職場でもありがちなパターンです。
「HIVの患者さんだって、絶対ゲイの人だよね」
「え~、気持ち悪い~」
「同性愛とかすごいよね、マジ理解できないわ」
ナースステーションで交わした会話が知らず知らず、差別的な言葉、傷つける口調になっていないでしょうか。LGBTの患者対応を考えるのをきっかけに、一度、振り返ってみてもらえたらと思います。
浅沼智也さん
1989年生まれ。トランスジェンダー男性(FtM)。高校卒業後、短大(看護専攻)に進学。新卒で入職した急性期病院では周囲の無理解にさらされ、うつ病を発症し、退職。23歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性に変更。現在は東京都内の病院に勤務している。
精神障害・発達障害・依存症の問題を抱えるLGBT当事者の自助グループ「カラフル@はーと(@LGBTCatH)」の共同代表。自殺未遂やうつ病を経験した自身の体験から、ダブルマイノリティ、トリプルマイノリティへの理解を広げる活動を展開している。著書『虹色ジャーニー 女と男と、時々ハーフ』(文芸社)。
取材・文・写真/看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko)
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(参考)
「LGBT調査2018」(電通ダイバーシティ・ラボ)
LGBTと医療福祉<改訂版>(QWRC)
学校・病院で必ず役立つLGBTサポートブック(はたさちこ/藤井ひろみ/桂木祥子編、保育社、2016)
看護教育 2018年4~2019年3月号連載「NとEとLGBTQ」(浅沼智也、医学書院)
介護や医療、福祉関係者のための高齢期の性的マイノリティ理解と支援 ハンドブック(特定非営利活動法人パープル・ハンズ)
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