流産を経験した女性にPTSD発症の危険性

流産を経験して間もない女性には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する危険性が高いといいます。イギリスではなおざりにされてきたという、流産を経験した女性へのメンタルケアについて、この必要性を報じた英BBCニュースの内容をご紹介します。

 

 

見落とされてきた流産経験によるPTSD

イギリスでは、正常な妊娠の状態が継続している場合は、妊娠6週目に妊婦の精神的状態がスクリーニングされます。しかし、流産した妊婦には、何のフォローも行われていないのが現状です。

 

ニコル・マーティンさんは現在2児の母親ですが、第2子を希望したとき、彼女はすでに38歳でした。ニコルさんは高齢出産に伴うリスクについて認知しており、多くの友人が最低でも1回の流産に苦しんでいたこともあって、とても不安だったと話しています。

 

妊娠4件に1件の割合で、初めの23週までに妊娠損失が起こるといわれていますが、ニコルさんも第2子を出産するまでには、1年に3回の流産を経験しました。流産した場合は当然ながら、医療的な処置が必要になります。彼女にも、流産の後に全身麻酔下の手術で処置を受けたり、処置のための内服薬が処方されたりしました。内服薬による処置では、ニコルさん自身が自宅のトイレで処理をしなければならなかったそうです。彼女はその経験について「それはとてもつらい経験でした。自分の赤ちゃんをトイレに流さなければならなかった。本当に恐ろしいことです」と語ります。

 

彼女が無事に出産した待望の第2子はまもなく2歳を迎えようとしているのに、「これまでの苦難を思うと、今でも家族を失うのではないかという強い不安から抜け出せない」と言います。

 

PTSDは、強烈なストレスや恐怖体験、悲惨な出来事などが原因となって生じるもの。ニコルさんの場合は、今もなお、度重なる流産経験によって生じた不安感から逃れることができず、認知行動療法を受けているそうです。

 

不十分な支援体制にある現状

ジェシカ・ファレン医師は、British Medical Journal Open(イギリス医師会雑誌のオープンアクセスジャーナル)で、インペリアル・カレッジ・ロンドンの産科を受診している90人近くの患者を対象とした調査の結果を発表。彼女は、調査の結果をもとに「深刻なPTSDが確認された女性は少数だったものの、対象者のほとんどが精神的な苦痛に苦しんでいた」と話しました。

 

専門的な支援を必要としている女性が多いのにもかかわらず、イギリスの医療制度National Health Service(国民保健サービス)では十分な対策が講じられてないことをファレン医師は問題視しています。現在、カウンセリングをはじめとする女性たちのケアは、慈善団体の活動に頼るしかない状況にあるようです。

 

妊娠中の最大の合併症であるともいわれる流産は、その原因が分からないために治療の難しい患者さんもいます。先行研究では、妊娠前や妊娠中にメンタルケアを行うことで、妊娠の予後が改善されることが報告されているそうです(メンタルケアを受けた群の方が明らかに生児出産率は高い)。不妊や不育症に悩む女性が増えるなか、必要とするときに十分な支援が受けられるような、サポート体制を整えていく必要がありそうです。もちろん、そのサポート体制には、看護師としてのケアの技術も含まれています。

 

(文):A.Brunner

(参考):

Miscarriage can trigger post-traumatic stress disorder(BBC)

反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル(PDF)

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