クレームの多い家族は「面会禁止」!?

英BBCの報道テレビ番組「ビクトリア・ダービーシャー」により、英国内の何百もの高齢者ケア施設が、医療の質に対するクレームが多い家族の面会禁止措置を行っているという衝撃の事実が判明しました。

 

 

衝撃の事実

番組では、サマセット州とエセックス州の高齢者ケア施設で、入居者の家族に面会を禁止していたことが明らかになりました。例えば、サマセット州では入居者の家族が施設にクレームを申し入れたところ、面会禁止が明記された電子メールを受け取ったそうです。

 

このリポート内容はラジオでも放送され、視聴者の大きな注目と関心を集めました。施設に入居している家族や知人がいる人たちの不安を急激にあおる事態を招いたのです。この番組に対して、CQC(Care Quality Commission:ケアの質委員会)は異例のコメントを発表しました。具体的には、「家族は施設のケアの質に対してクレームや提案することを恐れてはならないこと」「よいケア施設では、クレームや提案は質の向上のために利用されていること」「CQCが行う現場のケアの質のチェック、評価システムを改善し、不適切な施設には改善を指導する」というものでした。

 

家族と施設の訴え

父親(93)が施設に入居しているポール・ドーランさんが、視覚障害、難聴、がんを患い、車いす生活となった父親に面会したとき、彼の補聴器が作動せず、電池が切れていることに気づきました。補聴器は父親にとっては、生活をサポートするための不可欠な機械です。これを見たポールさんは施設自体のケアの質に対する不信感を抱き、施設のスタッフに機械が正常に作動するか確認して欲しい旨を伝えました。

 

ポールさんは面会を重ねるたびに「父親は、最小限のケアしか受けていないのでは?」という不信感が募っていったといいます。面会を続けて3年後、ポールさんが施設から受け取ったメールには「施設のスタッフに受け入れ難い行為をしたため面会を禁止する」との内容が書かれていました。ポールさんの父親はその後、別の施設への移動を余儀なくされ、3カ月後に亡くなったそうです。

 

一方、施設の広報担当者は、この一連のポールさんと父親の件について「私たちは自治体とCQCのガイドラインに沿って対応しただけ」と説明しています。

 

これからの課題

ダンカン・ルイス弁護士事務所のガーサイド弁護士は、ドーランさん家族の件と類似したケースを担当することがあるそうです。「相談に来られる皆さんに施設の入居者は自分の家と同様に過ごすことはできないことを説明すると驚かれます」と述べたうえで、入居者、施設、公共団体が出資して、契約を結んだ場合は、家族は施設が定めた規約と利用条件を守り、指示に従う必要があるとガーサイド弁護士は説明します。

 

元介護福祉士で、現在はドーランさん家族の件に類似する相談を年間50~60件受けているアイリーン・チャブさんは「施設は、クレームが重なると『クレーマー家族』のレッテルを貼り、それが正当なクレームであっても抑え込もうと動きます。施設の利用者と家族は一番の弱者です」と指摘しています。

 

イギリスの介護ケアに詳しいマーティン・グリーン教授は「CQCが、施設からの転居を強いられた入居者家族が本当のクレーマーかどうかの事実を追及できるのであれば、ケアの質の向上につなげていける」と言います。つまり、ケア施設のほとんどが居住者に必要な適切な治療やケアを提供することができない現状を指摘しているのです。

 

イギリスの高齢者ケア施設の問題点を理解している専門家たちでも、具体的な対策や対応はできていないのが現状のようです。これからの課題としては、CQCがどこまで「施設のケアの質を管理していけるか」という点が問題解決のカギになりそうです。

 

「クレーマー」や「モンスター・ペイシェント」などといわれる患者さんや家族への対応に時間をとられてしまう経験を持つ看護師も多いはずです。今回紹介した例では、家族と施設の言い分に食い違いが見られましたが、どんな訴えであっても、クレーマーだからと聞き流さずに、患者さんやその家族の真の思いを理解できるように冷静に対応していくことが必要なのかもしれません。

 

(文):A.Brunner

(参考):
Care homes ban relatives who complain(BBC)
Information for people on their visiting rights in care homes(CQC)
 

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