患者の「大丈夫」は大丈夫ではない?認知症の症状を見落とす危険性

今回はアメリカ・オクラホマの内科医の、ある体験談を紹介します。いつも問診時に「特に問題ありません」と言っていた患者が、実は認知症だったというお話です。医師だけでなく看護師も、患者さんを注意深く観察しなければならないと改めて感じる事例です。

 

多くの認知症はゆっくりと進行するために、気付くのに時間を要することがあります。加齢に伴う記憶力の低下はだれにでも起こり得ます。「軽度認知障害」はどの時点から「認知障害」へと進行するのでしょうか?

 

ジョン・へニング・シューマン医師は、ある70代の患者さんとの関わりを振り返りながら、「異変」と気付くべき兆候について語ります。

 

患者の「大丈夫」は大丈夫ではない?認知症の症状を見落とす危険性

 

問診時の答えはいつも「大丈夫です」

シューマン医師が担当した元警察官の男性は、診察開始当初73歳。高血圧、2型糖尿病、高脂血症を患っていましたが、病状は処方薬によってコントロールされている状態でした。

 

そのため、定期受診で「何か体調に問題を感じることはありますか?」と問いかけても、いつも「特に何も」「大丈夫です」という答えが返ってくるだけだったそうです。

また、彼は早朝にウォーキングを行うグループに参加しており、それは身体的にも社会的にも良い兆候に見えました。

 

確かに、社会での活動にも参加している患者さんですし、このような会話をにしただけなら、ごく普通の医師と患者の会話に聞こえます。

 

医師に手渡される奥さんからのメモ-真の意味は? 

医師が奥さんについて尋ねると、患者さんは「これをあなたに渡すように言われました」と答え、メモを手渡しました。

そこには薬のリストがあり、再処方の必要なものには星印がついていました。そのほかに、右膝の疼痛についての質問や、ヘモグロビンA1cの検査(血糖コントロールのため)を促すようなことも書かれていたそうです。

 

全ては理にかなっているように見えましたが、膝の痛みについて話すのに奥さんのメモが要る点が疑問だったとか。

 

このとき、シューマン医師は、この患者さんのある兆候を見過ごしていたのです。

 

別の医師に「アルツハイマー病」と診断される

シューマン医師が担当となってから4年後、この患者さんは消化管出血を起こしました。入退院を繰り返し、3度目の入院で出血の原因と思われる部位の切除手術を受けることに。

この間、奥さんや親戚を認識できなくなるなどせん妄状態に陥ったものの、リハビリ後に退院。以前のようにウォーキングや家事ができるようになりました。

 

ところがその後、彼の様子に変化が見られました。

 

診察時には奥さんも一緒に訪れるようになり、シューマン医師への質問リストは一段と長くなっていきました。

そのような中、奥さんから「夫はアルツハイマー病と診断されました」と告げられたのです。

 

奥さんは、夫に見られるさまざまな兆候に疑問を持っていたため、別の医師(神経科医)に診てもらっていました。

 

シューマン医師はこれまでを振り返ってみて、患者さんが認知症であることを上手に隠していたことに気付きます。

 

彼には、まだ場に応じたちょっとした会話ができる能力がありました。そのため、詳しい検査も行わず、記憶喪失の程度も調べませんでした。

もちろん奥さんからのメモは大きな手掛かりとすべきだったのですが、大切なことを見過ごしていたようです。

 

シューマン医師は、振り返ってみると危険信号がいくつもあったことに思い当たります。

 

いつも病訴がなく型にはまった診察で、患者さんは世の中の出来事に関心が薄く前に会った時の記憶の範囲も限られていた―など。

こうした問題とすべき兆候がいろいろとあったにもかかわらず、自分はそれを見たくなかったのだ、と悟ったのです。

 

早期に診断を下すべきだった…それはなぜか?

進行性の病であるアルツハイマー病の診断は、患者さん自身や家族にとって非常に重いものとなります。シューマン医師は、その重荷を負わせたくなかったそうです。

ところが、今回のことがきっかけで自分は間違っていたと気付きます。早く診断を下すことは、逆に患者さんや家族のためになったはずだと思い直したのです。

 

「早期に診断できていれば、切除手術後、患者さんがせん妄状態に陥ることを防げていたかもしれないし、奥さんが将来のことを考えて準備する時間も、もっと与えられたのではないか……」

 

問題の早期発見を目指すには…

病気の治療でできることは限られていても、患者さんに潜んでいる問題を見出せれば、本人とその家族をサポートする方法を考えていけるでしょう。そして対応が早いほど、選択肢をより増やせるはずです。

 

問診や観察がスムーズに進んだときでも、患者さんの症状をしっかりとチェックできていなければ、結果的に本人や家族を苦しめてしまうことになりかねません。アセスメント技術を磨き、看護師としての直感を研ぎ澄ませるよう常に意識していく必要があるのではないでしょうか。

 

(文)A.Brunner

(参考)When A Patient Says 'Everything's Fine,' A Doctor Should Be Wary

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