最終更新日 2017/09/12

迷走神経反射

迷走神経反射とは・・・

迷走神経反射(めいそうしんけいはんしゃ、vagal reflex)とは、さまざまな生理的反応を引き起こす内臓反射の一つである。精神的ストレス、過度な疼痛、排泄、腹部内臓疾患などによる刺激が、迷走神経の求心枝(末梢から中枢にシグナルを伝達する神経)を介し、幹部の血管運動中枢を刺激することで、反射的に遠心枝(中枢から末梢にシグナルを伝達する神経)から末梢の内臓等に伝達されて起こる。基本的には迷走神経反射は生命の防衛反応であるが、過剰な反応をきたした場合には異常な症状が出現する。

過度の心拍抑制により徐脈となったり、急激な血管拡張により血圧低下となったりすることがある。一時的な全脳虚血となるため、ふらつきを自覚したり、失神したりすることもある。臨床的には過緊張状態や排泄時の刺激で失神することが多い。

【迷走神経】
迷走神経(vagus nerve)は、脳神経(第1~12脳神経)の1つで、第10脳神経をさす。延髄下部から出て下降して、頸部・胸腔内臓器と腹腔内臓器の一部を支配する副交感神経である。頸部への支配神経は胸腔内で反回し、頸部臓器を支配する(反回神経)。支配領域を見ると、さまざまな部位を支配するのでラテン語の“vagus(放浪)”神経と命名され、日本語でも“迷走”神経と呼ばれている。また、迷走神経は消化管の多くを支配しており、消化・吸収を亢進する機能があるので、食後は副交感神経が優位に働く。食後の午後の授業で眠気がさす理由はこれである。

【内臓反射】
内臓反射は、恒常性の保持と調節を行う防御的反応である。この反射は自律神経系によるもので、交感神経系と副交感神経系に分けられる。一般的に交感神経は活動性の上昇、副交感神経は活動性の低下に働くが、副交感神経である迷走神経は腸管運動を亢進させる。他には対光反射などがある。外界からの光の量を自動的に調整する反射で、網膜神経節細胞が受容した刺激を視神経は網膜視床下部路を介して求心性に伝達し、この刺激により 動眼神経が遠心性に伝達することで瞳孔括約筋を収縮させる。

執筆: 守田誠司

東海大学医学部付属病院 外科学系救命救急医学講座教授

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