心臓を栄養する冠動脈と刺激伝導系

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』より転載。
今回は冠動脈と刺激伝導系について解説します。

 

中嶋ひとみ
新東京病院看護部

 

 

 

〈目次〉

 

 

心臓を栄養する冠動脈

冠動脈(冠状動脈)は、心臓を栄養する終動脈(細動脈で吻合をもたない血管)です。

 

心臓自身を栄養するために、心拍出量の約1/20(250mL/分)の血液が冠動脈へ流れています。

 

心臓を養った大部分の血液は冠静脈洞に集まり、右心房に流入します。一部の血液は冠静脈洞を介さず、小心静脈(テベシウス静脈)を通って直接、右心房、右心室に流入します(図1)。

 

図1おもな心臓の血管

おもな心臓の血管

 

 

 

心筋内での冠動脈

冠動脈は、心臓の内側に向かって根をはるように走っています。

 

心筋が発達した左心室に走行する左冠動脈は、心臓の拡張期に血流が増加します。右冠動脈は心筋があまり発達していないので、収縮期・拡張期ともに血流は保たれています(図2)。

 

図2左冠動脈と心筋の内部のイメージ

左冠動脈と心筋の内部のイメージ

 

 

 

心臓の溝

心臓の表面には、心房・心室の4つの部屋の境界に一致して溝があります(図3)。

 

図3心臓の3つの溝

心臓の3つの溝

 

 

 

刺激伝導系のしくみ

心臓には、刺激伝導系(特殊心筋)という、自ら活動電位を生みだす心筋が存在しています(図4)。

 

この刺激伝導系により、自発的に電気を発生させる機能を自動能といいます。

 

心収縮は刺激伝導系の刺激を受け、固有心筋作業心筋)が興奮することで起こります。固有心筋は刺激を受け、実際に収縮し、ポンプとしてはたらく心筋です。伝達速度は0.3~1.0m/秒で、心臓はゆっくりと収縮してたくさんの血液を送り出すことができます。

 

図4刺激伝導系(特殊心筋)のしくみ

刺激伝導系(特殊心筋)のしくみ

 


文献

  • 1)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017:2-29.
  • 2)稲田英一,医療情報科学研究所:イメカラ 循環器 ̶イメージするカラダのしくみ.メディックメディア,東京,2010:2-19.
  • 3)堀正二監修,坂田泰史編:図解 循環器用語ハンドブック 第3版.メディカルレビュー社,東京,2015.
  • 4)小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫 他 編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014:632-654.
  • 5)坂井建雄,河原克雅編:カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
  • 6)増田敦子編著:身体のしくみとはたらき̶楽しく学ぶ解剖生理.サイオ出版,東京,2015.
  • 7)大谷修,堀尾嘉幸:カラー図解 人体の正常構造と機能 第2巻 循環器 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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