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2020年01月12日

なぜ抗コリン作用薬でせん妄が生じやすいのか

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、抗コリン作用薬でせん妄が生じやすい理由について解説します。

〈目次〉

①アセチルコリン合成の阻害でドパミンの作用が強まる

抗コリン作用が強い薬剤が患者さんに投与された場合,患者さんの体内でアセチルコリンの合成が阻害されます.そうすると,抑制系の神経伝達物質であるGABA(γアミノ酪酸)の活性が低下します.しかし,興奮性の神経伝達物質であるドパミンの量は不変なため,活性が低下したGABAと比べるとドパミンの方が相対的に増えた状態になります.このようにして神経伝達物質のバランスが崩れ,精神的な興奮状態がつくり出されます.

 

②大脳基底核のコリン作動性ニューロンの機能不全

認知症の既往や抗コリン性の薬剤投与量の増加があると,大基底にあるコリン作動性ニューロンに機能不全がみられます.それが,せん妄の発症と深い関係にあることが報告されています.たとえば,コリン作動性ニューロンに機能不全のあるマウスを使った動物実験によると,マウスに急性の全身性炎症が加わると,コリン作動性の機能がさらに低下しせん妄が起きるという仮説を裏付けるデータが示されました1)

そして,アセチルコリン・エステラーゼ拮抗薬であるドネペジルは,認知症の治療薬としても用いられていますが,マウスにおいて,コリン作動性機能を向上させ,コリン作動性の急性認知機能障害を軽減させることが示されました1)

 


[文献]

  • 1)Field RH et al:Prior pathology in the basal forebrain cholinergic system predisposes to inflammation-induced working memory deficits : reconciling inflammatory and cholinergic hypotheses of delirium. J Neurosci 32(18) : 6288-6294, 2012

[Profile]
綿貫 成明 (わたぬき しげあき)
国立看護大学校

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

著作権について

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