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2019年11月09日

せん妄研究会から多職種チームへの発展の実例

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄研究会から多職種チームへの発展の実例を紹介します。

〈目次〉

「せん妄ケア」を語り合うことの重要性

筆者は,病棟看護師長として勤務していた2002年,部署内でのせん妄発生状況と行われているケアを分析し,医師も看護師もせん妄に関する認識が十分でなく,アセスメントが不足しているために,せん妄の発症を予測したケア計画が立てられていないことに気づきました.そして,せん妄ケアに病棟スタッフ全員でかかわる必要性を感じていたとき,このような状況を知った当時の上司と大学教員の発案で,有志による自主的なせん妄に関する勉強会が発足しました.この会には同じようにせん妄ケア充実の必要性を感じていた数名の看護師長も加わり,月に1回せん妄ケアに関する事例を参加者が提供し検討する「せん妄ケア研究会」となりました.

せん妄ケア研究会は,事例提供者がナラティブベースで自らのケアを語り,参加者は自由に意見や感想を述べ合う自由な雰囲気の中で行われました.ここでは,大学教員が常にアドバイザーとして参加し,事例提供者の行ったケアに肯定的なフィードバックと意味づけを行ったことで,事例提供者は自分の行ったケアについて新たな見方ができ,自信をもってケアが行えるようになりました.この経験は,毎晩繰り返されるせん妄患者さんのケアに自信を失いそうになっていた看護師にとって大切なものとなっていきました.また,事例提供者が語るせん妄ケアの困難感は参加者にとっても共感できる内容であり,悩みを共有するとともに,ほかの参加者の経験を自らの経験と併せて活用できるきっかけともなりました.

 

自主的な研究会成功のコツ

自主的な研究会成功のコツは,参加者の負担感がないこと.さらには,この会に参加すると何か1 つは明日のケアに使える情報を得られることが大切です.

自分の考えや発言が否定されない,がんばってきたことが認められる体験,つまりは心地よい体験ができる場でありたいものです.事例提供者のケアの不足点だけを取り上げて追求するような検討会では,苦労して事例を発表してくれた方が「二度と来たくない」会になってしまうかもしれません.仕事が終わって疲れていても参加したくなるように,ちょっとした飲み物やおやつの準備は欠かせないものでした.

 

看護師のみでの検討の限界と多職種チームへの発展

このような事例検討会は10年近く続き,せん妄ケアに関する知識の普及,アセスメントツールの活用を含めたケア基準の作成など多くの成果を上げました.

しかし,事例検討を行う中で,医師や薬剤師,作業療法士などの多職種との連携の重要性が話題に上ることが多く,当然のことながら,せん妄ケアは多職種チームで行わなければ十分な成果は得られないことを痛感しました.しかし,看護師が中心となって行っている自主的な研究会では,多職種の参加を継続して得ることができない状況が続きました,さらに,研究会の参加者が固定化するなど,会のあり方について考える必要が生じてきました.

そのようなときに,病院内の常置委員会の1つでせん妄患者さんによる看護職員への暴力行為の発生が報告され,職員の安全を守るという視点でのせん妄対策の必要性から,多職種によるせん妄ケアチーム結成の機運が盛り上がっていきました.多職種チーム結成にはせん妄ケア研究会の中心メンバーが参加することになり,自主的な研究会から始まったせん妄ケア研究会は,2012年,院内公認のワーキンググループ「多職種せん妄ケアチーム」へと発展することになりました.

 

多職種せん妄ケアチームについて

このチームの目的は以下のとおりです.

・ せん妄の予防,早期警告徴候の把握,発症後のすみやかで安全な介入,退院までの集学的な支援を行い,またエビデンスの集積,解析,新しいケア・治療手法の開発を主導し,さらに院内外にせん妄対応技術の啓発を継続的に行うことを目的としたせん妄ケアマネジメントシステムを構築する.
・ もって本院における入院医療の質の向上を図る.

この目的のもと,医師,看護師,看護教員,薬剤師,作業療法士,事務職員で構成される多職種チームが組織され,「啓発・教育チーム」「診療・ケア支援チーム」「臨床統計,研究支援チーム」の3 つのチームが活動を開始しました.

 

各チームは,それぞれ達成目標を設定して活動し,全体会議でチーム間の情報共有と進捗管理を行います.各チームの達成目標は以下のようになっています.
① 啓発・教育チーム:せん妄対応の知識普及の研修会,症例検討会などの生涯学習のしくみの構築
②診療・ケア支援チーム:せん妄対応多職種チームの構築と実施
③ 臨床統計・研究支援チーム:ハイリスク者またはせん妄発症者のデータベース(情報集積システム)の構築と臨床研究への援用

それぞれのチームはチームリーダーのもと,ミーティングを行って現状での課題を確認し課題解決に向けての活動を行っています.

 


[Profile]
瀧口 章子 (たきぐち しょうこ)
千葉大学医学部附属病院看護部

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

著作権について

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