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2019年03月07日

患者の自己コントロール支援|鎮痛・鎮静管理時に注意すべき看護ケア

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮痛・鎮静管理における患者の自己コントロール支援について解説します。

患者の自己コントロール支援

1)自己コントロールを高める目的

気管チューブやドレーンなどを患者さんに抜去されないために,鎮静薬で不動にしたり,上肢を抑制したりしてしまうことがあります.

これらは,チューブやドレーンが留置されていることをオリエンテーションしても患者さんが理解できない,理解しているようでも抜去されてしまってはインシデントになってしまうなど,管理面での事情から行うことが多いと思います.

しかし,抑制されることで,患者さんは自己コントロール感を失い,それが多大な精神的ストレスとなります.

ストレスフルな体験は生理的反応も引き起こし,内因性カテコラミンの増加や,血圧の上昇,頻脈,呼吸数の増加,異化亢進など,身体的なリスクにもなります.

また,自己コントロール不足により精神的に安寧が保てないでいると,患者さんに治療やケアに参加する気力が起こらず,早期回復に向けたケアやリハビリテーションへの参加も阻害されます.

患者さんは自分で自分のことを行いたいものです.日常生活を取り戻してあげれば,混乱することはなく,せん妄を予防できるかもしれません.患者さんのせん妄を防ぎ,早期回復を促すためには,自己コントロール感を高める必要があります.

 

2)気管挿管中の患者さんの自己コントロールを促す前提

意識が清明で,安寧な状態を保持できていれば,患者さん自身で体位を調整したり,口元の気管チューブの位置を調整したりするなどのセルフケアをすることができます.

またこのような状態の場合,気管チューブなどの自己抜去の危険性は低く,抑制の必要も生じません(いきなり気管チューブを抜く患者さんはまずいません).

つまり,最適な鎮痛・鎮静によって不安や苦痛を軽減し,浅い鎮静でコントロールし,患者さんのニードに応えることが,気管挿管中の患者さんの自己コントロールを促す前提となります.

 

3)気管挿管中の患者さんの自己コントロールを促すケアのコツ

まずは,患者さんが自分の状況を受け入れることで,自己コントロールへの気持ちが高まります.

たとえば急変して意識を消失し,気管挿管され鎮静された患者さんが覚醒した場面を想像してください.

気管挿管により声が出ず(さらに抑制されているかもしれません),よく状況が飲み込めない時に,「口の管や点滴は重要なので抜かないでくださいね」と口頭で説明されただけでは,患者さんは現状を十分に理解できないでしょう.口元が気になり,気管チューブを抜去しようとするかもしれません.

「 人工呼吸管理を行っている」という認識を促すため,鏡などで自身の置かれている状況を見せながら説明したり,機器を患者さんの視界に入る場所に設置したりすることで,繰り返し気管チューブなどの存在を認識させ,状況を理解してもらうことが大切です.

鎮静中にチューブ類の説明をしても,チューブ類の存在をすぐに忘れてしまうことが多くあります.鎮静されていること自体も忘れてしまっていることもあります.

鎮静薬にはそれだけ健忘作用があるからです.繰り返し説明し,理解を促す必要があります.

デバイスなどについて説明し理解を促す際には,「期間」「予定」など具体的に説明し,患者さんと目標を共有します.そうすることで,セルフケアへのモチベーションが上がることも期待されます.

体位や口元の気管チューブの位置の調整だけではなく,可能な範囲で,ベッド上での日常生活行動を患者さんの思うように行ってもらうとよいでしょう.

気管挿管中でも,自分で身なりを整えたり,本を読んだり,文字を書いたり,痒いところを掻いたりできます.日常生活行動を行うことは,自己コントロール感を高めてくれます.

気管挿管中の患者さんの自己コントロールを促すケアのコツ

 


[引用・参考文献]

  • 1)パトリシア・ベナー著,井部俊子監訳:ベナー看護論,新訳版,医学書院,p.56,2010
  • 2)福田友秀ほか:集中治療室入室を経験した患者の記憶と体験の実態と看護支援に関する研究.日クリティカルケア看会誌 9(1):29-38,2013
  • 3)卯野木 健ほか:ICU 退室後の神経精神障害―外傷後ストレス障害と認知機能障害. 日集中医誌 17(2):145-154,2010

[Profile]
嶋田 一光 (しまだ いっこう)
日本医科大学付属病院救命救急センター

剱持 雄二 (けんもつ ゆうじ)
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU
集中ケア認定看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

著作権について

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50代の女性。呼吸回数24回/分。血圧80/40mmHg。脈拍120回/分。
橈骨動脈微弱で末梢冷感あり。声かけに容易に反応あり。『お腹が痛い』と話している。
右上腹部打撲痕および、右腹部圧痛あり。

  • 1.生理学的評価では循環に異常があるため、カテゴリーは赤。解剖学的評価は腹部圧痛、右上腹部打撲痕があることから、カテゴリーは赤となる。
  • 2.意識レベルは低下していないため、生理学的評価ではカテゴリーは黄。解剖学的評価は、右上腹部に打撲痕があるため、カテゴリーは黄となる。
  • 3.橈骨動脈微弱のため、生理学的評価ではカテゴリーは赤。解剖学的評価は、右上腹部打撲痕があることから、カテゴリーは黄となる。
  • 4.呼吸回数24回/分、意識レベル清明で生理学的評価は黄色のため、最終的な優先順位のカテゴリーは黄となる。
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