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2018年08月29日

口腔ケアで消毒薬を「使うといい?」「使わないほうがいい?」

『エキスパートナース』2017年3月号<バッチリ回答!頻出疑問Q&A」>より抜粋。
口腔ケアにおける消毒薬の効果について解説します。

口腔ケアで消毒薬を「使うといい?」「使わないほうがいい?」

消毒薬の誤嚥性肺炎に対する効果は不明です。
一律に使用するのではなく、部位や目的に応じて消毒薬を用いましょう。

〈目次〉

はじめに

口腔ケアにおいて、「含嗽」や「粘膜の清拭」時に消毒薬を用いる場合があります。
“本当にその消毒薬が必要かどうか”について検討してみましょう。

口腔ケア

消毒薬についての検討

①「ポビドンヨード」による消毒は、歯垢や舌苔への効果はあまりない

口腔内や咽頭の細菌を、唾液や食物とともに誤嚥してしまって起こるのが「誤嚥性肺炎」です。

患者さんの全身状態によって発症が左右されますが、誤嚥性肺炎は重篤な感染症であり、高齢者にとっては死亡率の高い疾患です。よって、これらのリスクを低減させるために、含嗽などに消毒薬を用いるとする考え方があります。

例えば、ポビドンヨードはほとんどすべての口腔内細菌に対し強い殺菌作用(表11を示します。

表1各種消毒薬の殺菌力

各種消毒薬の殺菌力

*ポビドンヨードはヨードホール・ヨード系の消毒薬(編集部注)。
文献1・p.128より引用、一部改変)

 

インフルエンザウイルスに対しても有効なことがわかっており、口腔内や咽頭を遊離する菌には強力な作用を発揮します。

ただし、ポビドンヨードは口腔内や咽頭の細菌叢を有するバイオフィルムの性質を有するデンタルプラーク(垢)や舌苔への直接の効果はあまりありません。口腔ケアで、歯面や粘膜に固着しているバイオフィルムを破壊するためには、機械的清掃(ブラッシングやスポンジブラシなどでの清拭)が必須となります2

また、ポビドンヨードは0.1%濃度において殺菌作用を発揮します(図11

図1ポビドンヨードの有効な濃度(ヨードホールの遊離ヨウ素濃度)

ポビドンヨードの有効な濃度(ヨードホールの遊離ヨウ素濃度)

文献1・p.130より引用、一部改変)

 

これが0.1%を超えると殺菌作用は低下します。さらに、比較的短時間のうちに揮発し、失活するという性質もあります。

実際の口腔内や咽頭では有機物で濃度が薄められる可能性があり、口腔内の状況に合わせて濃度の調整が必要です。しかしポビドンヨードは、遊離したヨードイオンの濃度と殺菌作用は相関しますが、ポビドンヨードの濃度が高いほど殺菌作用が強くなるわけではなく、またポビドンヨードの濃度が高いほど、粘膜への為害作用が強いということが示されています3

また含嗽剤としてよく用いられているポビドンヨード(イソジンガーグル)はエタノールを含有しており、口腔内の乾燥を助長させる可能性があります。

 

②「オキシドール」は乾燥付着物や舌苔除去に有効だが、効果は短時間

オキシドールは、組織や細菌、血液、膿汁などをカタラーゼによって分解し、酵素を生じ殺菌作用を呈します。また組織、血液成分を融解するので、乾燥付着物をはがしやすくするため、舌苔除去にも有効です。しかし効果は短時間です。

 

③ 消毒薬の「肺炎予防」に対する効果は不明

ポビドンヨードを含めた他の消毒薬についても、肺炎予防に関する明確な効果を示すデータは現在までにありません。

 

口腔ケアの目的に合わせて“いい部分”を活用しよう

一言で口腔ケアといっても、「誤嚥性肺炎予防」「創傷治癒・改善」「口腔疾病予防」「口腔機能維持・向上」「摂食嚥下リハビリテーション」などさまざまな目的があります。まずは口腔ケアの目的を明らかにすることが大切です。

結果を出すための口腔ケアではなく、コミュニケーションツールの1つでもかまいません。

患者さんが必要とするケアは、ケースバイケースで判断されることが多いと思います。口腔ケアも同様で、何のために口腔ケアを行うのか、この患者さんにはどういう口腔ケアが必要なのかを考えてみると答えはおのずと見つかります。一概に“消毒薬はいい・悪い”ではなく、その口腔ケアの目的に合わせて選択するのが一番です。

例えば、すべての患者さんに消毒薬を用いるのではなく、上記のようなリスクを知って、患者さんに応じた、または部位に応じた選択肢をもてるといいと思います。

以下にその例を示します。

  • 口腔内に創傷があるのでポビドンヨードを使用する
  • 舌苔が厚いので、舌苔除去にオキシドールを使用する
  • 口腔乾燥が強いので乾燥を助長するような消毒薬は使用しない
  • 摂食嚥下リハビリテーションの一環であれば消毒薬は不要

なお、消毒薬を用いる場合は、アレルギー等にも十分配慮をしましょう。

 

誤嚥性肺炎の予防が目的なら“口腔ケアの手技”も見直そう

口腔ケアの目的に“誤嚥性肺炎の予防”がありますが、使用する道具や消毒薬が正しくても、手技に不手際があるとせっかくの口腔ケアの行為も台なしです。

看護師が口腔ケアを行うような患者さんは全身状態も低下していることが多く、摂食嚥下機能の低下も予想されます。口腔ケアを行う前の口腔内からはさまざまな情報を得られます。例えば脱水や逆流、嚥下障害などの徴候を見つけることもできるので、口腔内の状態に常にアンテナを張るといいと思います。

また、口腔内清拭1つとっても、口腔ケアで使用する水分に対する配慮を行っているかどうかの差は、ケア後に現れます。

例えば一般的なスポンジブラシに含まれる水分の量は約3mLです。しかし、嚥下機能が低下している患者さんに水分を“たっぷりと”含ませたスポンジブラシで清拭すると、その水分と口腔内の細菌を一緒に誤嚥させてしまうこともあり、かえって口腔ケア後に痰絡みが増えたりすることもあります。使用するスポンジブラシや歯ブラシの水分はよく絞ってから使用する、汚れを咽頭に落とさないようにするなどの配慮が大切です。

また、使用している歯ブラシなどの器具が汚染されたままの状態である場合もありますので、器具への配慮も必要です。

ぜひ“何のために行っているか”を考えながら、適切な口腔ケアを実践していきましょう。

 


[引用文献]

  • 1)石塚紀元,小林寛伊,尾家重治:消毒薬.小林寛伊編,感染制御学,へるす出版,東京,1996:125-156.
  • 2)奥田克爾:バイオフィルムを知る.デンタルハイジーン2005;25(6):554-557.
  • 3)岩沢篤郎,中村良子:ポビドンヨード製剤の使用上の留意点.インフェクションコントロール 2002;11(4):376-382.

[Profile]
中根綾子
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 助教

戸原 玄
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 老化制御学系口腔老化制御学講座
高齢者歯科学分野 准教授

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2017照林社
[出典]エキスパートナース2017年3月号

P.46~48『口腔ケアで消毒薬を「使うといい?」「使わないほうがいい?」』

著作権について

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