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2018年08月22日

MRSAのアウトブレイク時、隔離予防策、どれくらい必要?|感染対策

『エキスパートナース』2017年3月号<バッチリ回答!頻出疑問Q&A」>より抜粋。
MRSAの感染対策について解説します。

MRSAのアウトブレイク時、隔離予防策、どれくらい必要?

ガイドラインでは、「MRSA検出患者は、可能な限り隔離する」のが前提です。
“対策が破綻するリスクが高い”場合には、個室収容あるいは集団隔離を実施し、集団隔離できない場合は、病室内での交差感染を防ぐため職員の動線を確保します。

〈目次〉

隔離に対する考え方:原則は個室

MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus 、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、患者さんや患者さんの周囲にある物品・環境との接触によって伝播する、臨床的・疫学的に重要な多剤耐性菌です。

米国のCDCガイドライン(医療現場における隔離予防策のためのCDCガイドライン;2007)1では、MRSAのような多剤耐性微生物(multidrug resistance organizm、MDRO)には、標準予備策に接触予防策を付加した感染対策を実施することを勧告しています。

接触予防策における患者配置とは、「MDRO保菌・感染者は、原則個室に収容する。個室が利用できない場合は、集団隔離(コホート)する。コホートもできない場合は、MDROを獲得する危険性も低く、かつ感染した場合の有害結末の危険性も低く、かつ滞在期間が短いであろう患者をMDROの患者と同室させる」というものです(図1)。

図1接触予防策における患者配置

接触予防策における患者配置

集団隔離(コホート):同一の病原体が検出された複数の患者を1つの空間(多床室など)に隔離・収容すること

 

つまり、CDCガイドラインにおいては、基本的に「MRSA検出患者は、可能な限り隔離する」という考え方が前提となっています。日本においても、MRSA検出者は可能な限り、個室収容することが望ましいと考えられます。

 

MRSA検出者の「個室隔離」が優先される理由

MRSAの主な感染経路は接触伝播で、患者さんの皮膚や患者さんの周囲の環境→医療者の手指→次の患者さんへ伝播する、という様式が主なものです。

しかし、忙しい医療現場では、“つい手洗いをせずに次の患者ケアに行ってしまった” “うっかり手袋やガウンなどの防護具を着け忘れてしまった”“MRSA検出者に使用した医療器具(血圧計など)を、ほかの患者さんでも使ってしまった”などが起こりがちです。

MRSA検出者の個室隔離は、患者さんを個室に閉じ込めるためというよりも、むしろ、私たち医療者がこのような対策を忘れずに実施するために、また、破綻のない確実な手技で感染対策を実践するために重要なのです。言い換えるならば、このような対策が遵守され、MRSAの伝播が遮断できるならば個室隔離の必要性は低くなりますし、「対策が破綻するリスクが高い」と判断される場合には、個室収容あるいは集団隔離を実施すべきということになります。「対策が破綻するリスクが高い場合」というのはどのような場合なのでしょうか?

以下が考えられます。

 

①患者のMRSAの拡散リスクが高い場合

最も重要なのは「どのようにMRSAの拡散リスクをアセスメントするか」です。

MRSA拡散リスクのアセスメントは、「MRSAの菌量」「排出門戸の大きさや開放性」「患者さんの条件」の3つのポイントを総合して判断するとよいでしょう(表1)。

表1MRSAの拡散リスクのアセスメント

MRSAの拡散リスクのアセスメント

 

例えば、「喀痰から大量のMRSAが分離されている」「気管切開を行っており吸引の際に激しくき込む」「ベッド上の生活で看護ケアの量が多い」などという場合“拡散リスク大”と判断します。同じように喀痰からMRSAが検出されている場合でも、「挿管を行っておらず、咳もなく、十分に手洗いのできる場合」は“拡散リスク小”と考えます。

つまり、前者は「個室収容が望ましいケース」となります。後者の場合は「拡散リスクが低いので、手洗いの遵守、患者さんへの濃厚接触時の防護用具の着用、高頻度接触表面の環境消毒などを確実に実施し、多床室に収容する」などと、事例ごとに判断していくことができます(表2

表2拡散リスクに応じた病室配置のめやす

拡散リスクに応じた病室配置のめやす

 

②MRSA検出患者の数が多い場合

MRSA検出患者の数が多いケースを見きわめるには、「いつもよりMRSA患者が多い」という判断材料が必要です。

観察力が鋭いナースは、「いつもよりMRSA検出者が多い気がするなぁ。感染対策をしっかり行わなくては」とふだん以上に注意するかもしれません。しかし、個人の能力や主観的判断に依存する方法は、不安定な管理方法といわざるをえません。できれば病院組織としてサーベイランス*を行い、MRSAの増減を統計的な基準から判断していくことが望ましいでしょう。

サーベイランス

ある時期、ある集団において発生した感染症の発生頻度を、感染の数を分子、対象集団の数を分母にした「率」で表して観察し、対策に活用すること。

 

③ 医療者の感染対策に対する理解度や技術レベルが未熟な場合

③の医療者の感染対策に対する理解度や技術レベルが未熟なケースは、現場で感染対策が、どの程度遵守されているかにより判断します。

例えば、たくさんの新採用者が就職した時期などは、一時的にリスクが高まった状態といえます。

 

MRSA検出者の「集団隔離(コホート)」で注意したいこと

病室内での職員の動線を確保して、交差感染を防止する

MRSA検出患者は可能な限り、個室収容することが望ましいと前述しました。

しかし、実際には重症患者に個室が使用され、隔離のために個室が使えないこともよくあります。そこで、個室を準備できない場合、次の対策として集団隔離(コホート)を行います。

同じ病室に集団隔離した患者間を移動してケアを行うときには、手指衛生を省略したり、防護具を交換せずに処置を行ったりしてはなりません。同じMRSAが検出されている患者間でも、それぞれの患者さんの持っている細菌叢は異なっていますし、MRSA以外の耐性菌を持っている患者さんが含まれているかもしれないのです。そのため、同じ病室に集団隔離した患者間においても、医療者による微生物の伝播を遮断するために、手洗いや防護用具の適切な使用に努めなくてはなりません。

図2に示すように、4人部屋であれば、1ベッド分を空きスペースにして、1人の患者ケアが終了したら必ずこのスペースに戻り、汚染した防護用具を廃棄し、手指衛生を行って、新しい防護具を着用し別の患者ケアへ、という動線のルールを決めると、病室内外の患者さんに対して、医療者が微生物を伝播させることを防げます。

図24床室のコホート時の医療者の動線

4床室のコホート時の医療者の動線

 

また、清拭消毒が可能なプラスチックケースにこれらの物品を収納しておくと、清潔に保管でき、病室内に入り手袋やガウンを着用した後で「アレがない!コレがない!」と走り回ることもありません。

 

「集団隔離もできない」ときに注意したいこと

①動線がMRSA未感染者と混じらないようにする

個室隔離も集団隔離もできないときは、MRSAが検出されている患者さんと検出されていない患者さんを一緒の多床室に収容せざるをえません。現場での対策に迷うのは主にこのような場合であると思います。

この際は、その場に応じた感染対策を実施することになります。長期療養型施設であれば、MRSAが検出された入居者に対して、標準予防策に接触予防策をどこまで付加するかは、個々の患者さんの臨床的状況および施設におけるMRSA発生状況を考慮して決めるといいでしょう。それぞれの施設である程度のルールをあらかじめ決めておくことをお勧めします。

例えば、施設内でMRSAのまん延がなく、患者さんのMRSA拡散リスクも低いと判断した場合、標準予防策と高頻度接触表面の定期的な消毒を徹底し、コントロールできない分泌物、圧迫潰瘍、排膿している創、便失禁、人工瘻孔チューブ・バッグへの接触には手袋とガウンを確実に用いる、といった対応も可能であると考えられます。

 

②カーテンにMRSA伝播を遮断する効果なし。基本的対策が重要

“カーテンで空間を仕切ること”そのものに、MRSAの伝播を遮断する効果はありません。

カーテンで仕切られたベッド周囲のスペースはかなり狭いものです。実際には、手袋や防護用具をつけたままでカーテンを開け閉めし、仕切ったはずのスペースをあわただしく出入りしながら医療ケアを行っているのが現状ではないでしょうか。カーテンは、毎日交換したり消毒したりすることが難しく、清潔に管理しがたい環境の1つです。筆者は、俗に「カーテン隔離」といわれる状況下でカーテンが高頻度接触表面になっている場合、逆にカーテンそのものが病原体の伝播リスクを高めているように思えてなりません。

また、療養環境のアメニティを考えると、「カーテンで隔離する」=「対策実施中、カーテンを開けてはいけない」という状況は、患者さんにとっての不利益となるのではないでしょうか。

重要なことは“カーテンを引くこと”ではなく、確実な手指衛生、適切な防護具の使用、器具の専用化など、MRSAの伝播を遮断するために必要な対策をいかに実践するかです。MRSA検出者は個室隔離を行うことが理想です。しかし、病室の多くが個室、もしくは2床室となっている米国の病院と、ほとんどの病室が4床以上の多床室で構成されている日本の病院では、施設環境が大きく異なることも事実です。

重要なことは、まずMRSAの拡散リスクをアセスメントし、個室隔離や集団隔離の必要度を判断して、伝播遮断に必要な感染対策を選択し、実践することだと考えます。

 


[参考文献]

  • 1)CDC:Guideline for Isolation Precautions in Hospitals.;2007.(2017.1.20アクセス)
  • 2)CDC:Management o f Multidrug-resistant Organisms In Healthcare Settings;2006.
  • 3)坂本眞美:実践編MRSAへの基本的な対応―隔離の基本的な考え方―.インフェクションコントロール2001;別冊:52-58.
  • 4)賀来満夫:基礎編MRSA対策の基本的な考え方―リスク別対応の基本的な考え方―.インフェクションコントロール 2001;別冊:14-21.
  • 5)朝野和典,他:MRSAの予防―MRSA病院感染対策の基本的考え方―.インフェクションコントロール2007年春季増刊:154-158.

“他の多剤耐性菌(VRE等)”が出たときは、感染対策はMRSAと同じになるの?

本文中に解説したMRSA、またVRE(Vancomycin Resistant Enterococci 、バンコマイシン耐性腸球菌)、MDRP(Pseudomonas aeruginosa )等は、同じ「多剤耐性病原性微生物(MDRO)」の中にカテゴライズされます。伝播経路も「接触感染」ですので、基本的な感染対策の手法は同じと考えられます。

ただし、疫学的なインパクトが異なります。MRSAは日本の市中にも保菌者が多く、かなり日常的に検出される、疫学的発生頻度が高い微生物です。しかしVREは、まだそこまでポピュラーではなく、めずらしい耐性菌です。VREは1例でも報告された場合、かなりの緊張感をもって感染対策を進める必要があります(このことは、MRSAもVREも感染法上の「5類感染症」ですが、MRSAは“月1回の定点報告”であるのに対し、VREは“7日以内の全数報告”である1ことが物語っています)。

めずらしい微生物は、それに病原性があり集団感染を引き起こすリスクがあれば、1例検出であってもアウトブレイク(つまり非常事態)として対応しなければなりません。個室隔離のうえ、標準予防策+接触予防策を行いつつ、施設外からの(あるいは海外からの)持ち込みか、院内で伝播したものか、遺伝子型は何かなどの追跡サーベイランス、保菌者スクリーニング、抗菌薬使用の見直しなどの対策2を早急に行う必要があります。

このような疫学的な判断は施設の感染管理担当者が行うと思われます。すみやかに対策の指示を受けましょう。


 


[Profile]
石角鈴華
北海道医療大学 看護福祉学部 看護学科 臨床看護学講座 講師 (感染管理認定看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2017照林社
[出典]エキスパートナース2017年3月号

P.39~42「MRSAのアウトブレイク時、隔離予防策、どれくらい必要?」

著作権について

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