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2018年08月08日

中心静脈栄養、フィルター「いる?」「いらない?」|輸液管理

『エキスパートナース』2017年3月号<バッチリ回答!頻出疑問Q&A」>より抜粋。
中心静脈栄養のフィルターについて解説します。

 

井上善文
大阪大学国際医工情報センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門特任教授

 

中心静脈栄養、フィルター「いる?」「いらない?」

原則的に、中心静脈ルートにはインラインフィルターを使用します。
インラインフィルター使用時は、「フィルターを通してはいけない薬剤」「フィルターを通さないほうがいい薬剤」に注意が必要です。

〈目次〉

インラインフィルター使用の是非に関する議論

議論の中心は「カテーテル感染症予防対策におけるフィルターの役割」です。

1996年のCDCのガイドライン(血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン)1において、『Do not use in-line filters routinely forthe purpose of infection control. (感染予防目的にルーチンにインラインフィルターを使うべきではない)』という条項が発表されて以来、本邦においても議論が続いています。

TPNが開発され普及しはじめた1970年代、カテーテル感染が頻発し、TPN自体の実施を中止すべきである、ということが議論になりました。しかし、栄養管理法としてTPNは絶対に必要であるとして、TPNを安全に実施するための対策が講じられるようになりました。

その重要な対策の1つがインラインフィルターだったのです。輸液・輸液ライン内に混入して増殖した微生物を捕捉し、カテーテルを経由して血管内に侵入するのを予防する効果を期待してのものです。

その後、1996年のCDCの前述の条項をきっかけとして、フィルター使用に関する議論が起こりました。しかし、この議論の根底には、米国では末梢輸液ラインにまでインラインフィルターが使用され、費用面で大きな負担になっている、という問題があり、それに対する警告としての意味です。

1996年1と2002年2のCDCガイドラインに引用されている論文は非常に古く、また、臨床的には末梢静脈ルートに関するもので、あとは実験的なものばかりです。

論点は、『インラインフィルターをルーチンに使用するとコストと作業時間が増加し、感染症の可能性を高くする可能性がある』ということですが、当時使用されていたフィルターは0.45μm(マイクロメートル)で、空気抜きがないため、閉塞してルート交換を余儀なくされ、操作の回数が増えます。この条件であればフィルターを使用することにより感染率が高くなるのは当然の結果、と解釈できます。

 

0.2μmの輸液フィルターの微生物除去能:対称膜を用いる

フィルターは、輸液・輸液ライン内で増殖した微生物を完全に捕捉することができなければ、感染予防対策として有効とは言えません。

フィルターの微生物除去能において問題となったのが、Candida albicans(カンジダ)が仮性菌糸を伸ばして0.2μmのフィルターを貫通した、という報告3です。Candida albicans はTPN輸液内で増殖できます。これが真実であるなら、TPNの輸液ライン内にフィルターを組み込むことには意味がないことになります。

この問題は、私自身が解決しました。フィルターには流入側と流出側の孔径が等しい「対称膜」と、流入側が孔径の大きな多孔質層、流出側が孔径の小さい緻密層から構成された「非対称膜」があります。

非対称膜ではカンジダが貫通しました。カンジダには仮性菌糸を伸ばすという特徴があるため、仮性菌糸を伸ばしてフィルターを貫通したという現象を証明しました。一方、対称膜から構成されたフィルターを用いれば、Candida albicansの貫通を阻止することができるのです。30年前のカンジダが貫通したと報告されたときに用いられたフィルターは0.2μmグレードの非対称膜であったのです。

 

感染予防を目的としたインラインフィルターの使用に関する結論

以上より、CDCガイドラインにおけるフィルターに関する勧告は、中心静脈ラインに関するエビデンスに基づいたものではありません。

また0.2μmのフィルターでもCandidaalbicans が通過した、という問題は、対称膜から成るフィルターを使用すれば解決できることが立証されています。

よって、本邦の輸液および輸液ラインの管理状況を考慮すると、TPNラインにはインラインフィルターを使用するべきであり、Candida albicans の貫通を阻止することができる対称膜から成るフィルターを用いるべきである、という結論になります。

完全な輸液の無菌調製ができていない場合には、感染予防を目的としたインラインフィルターを使用することが、理論的にも適正な管理方法であると思われます。

本邦では、多くの施設で看護師が病棟でTPN輸液を調製し、さまざまな薬剤が混注されているという現状があります。無菌調製が行われている施設の割合は増えていますが、その輸液にも病棟で薬剤の混注が行われています。この輸液調製の現状を考えると、インラインフィルターを用いるべきである、と考えています。

輸液調製の方法、輸液ラインの管理方法とフィルター使用の効果についての考察を表1にまとめます。

表1無菌調製の状況別の輸液ライン管理・フィルター使用

無菌調製の状況別の輸液ライン管理・フィルター使用

 

フィルターを通してはいけない薬剤があることに注意

もう1つ重要なことは、「フィルターを通してもよい薬剤」と「通してはいけない薬剤」があるということです(表24

表2輸液フィルターと相互作用を起こす代表的な医薬品

輸液フィルターと相互作用を起こす代表的な医薬品

文献4より引用)

「 脂肪乳剤」「血液製剤」「グリセオール®」「ヘスパンダー®」などはフィルターを通してはいけません。「ラシックス®」「ソル・メドロール®」「ソルダクトン®」などはフィルターを通すことは可能ですが、投与前後に、生理食塩液によるフラッシュが必要な薬剤と言われています。

しかし、これらの薬剤はフィルターを通さないほうがいいだろうと私は思います。フィルターが詰まれば交換しなければならず、そのために感染の機会を増やすことになります。

重要なのは、フィルターを過信しないことです。“フィルターがあるから、ちょっとぐらい汚染してもよい”という考え方は間違いです。

基本的に、日本ではTPN輸液にさまざまな薬剤を混注する傾向があります。この傾向を是正することも重要です。そのうえでインラインフィルターを用いた管理をすれば、無菌的管理の技術が確実に向上すると思います。


[文献]


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2017照林社

P.30~32『中心静脈栄養、フィルター「いる?」「いらない?」』

[出典] 『エキスパートナース』 2017年3月号/ 照林社

著作権について

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