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2018年06月13日

中心静脈栄養(TPN)輸液投与中、なぜ頻繁に血糖をチェックするの?|輸液管理

『エキスパートナース』2017年3月号<バッチリ回答!頻出疑問Q&A」>より抜粋。
中心静脈栄養輸液投与中の疑問について解説します。

 

竹内 淳
さっぽろ糖尿病・甲状腺クリニック院長

 

中心静脈栄養(TPN)輸液投与中、なぜ頻繁に血糖をチェックするの?

静脈に直接グルコースを投与しているため、血糖の急上昇・急降下が起こりやすい状態です。
1日複数回の血糖チェックが必要です。

〈目次〉

栄養を投与する際、体内ではどういう影響が起こっている?

栄養素は、「糖質(炭水化物)」「タンパク質」「脂質」に分類されます。食後の血糖上昇は、主に糖質の影響を受けます。

経口摂取の場合:血糖変動はおだやか

経口で食事を摂った場合、糖質は消化管内で分解され単糖(グルコースなど)となり、小腸で吸収され、門脈を通過し、約50%が肝臓で取り込まれます。肝臓で処理しきれないグルコースは末梢の血液に流出し、血糖値が上昇します。

つまり生体には、食後に血糖が急激に変化しないように途中にいくつもの緩かん衝しょうする臓器(、小腸、肝臓など)が備わり、血糖変動がおだやかになるしくみとなっています(図1- ①)。

図1血糖上昇の違い

血糖上昇の違い 経口摂取

 

血糖上昇の違い 中心静脈栄養

 

高カロリー輸液の場合:血糖変動は急激

一方、静脈より高カロリー輸液で栄養を投与した場合には、グルコースが静脈血に直接入ります。そのため、経口摂取で栄養素を摂った場合のような、血糖変動に緩衝する臓器の介入がありません(図1- ②)。したがって、高カロリー輸液では血糖値が急に上昇しやすく、点滴終了後に急に血糖値が下がりやすいのです。

また、高カロリー輸液使用時には、糖尿病患者でなくても高血糖をきたすことをしばしば経験します。

 

高カロリー輸液投与時の注意点

高カロリー輸液の導入方法を理解する

経口摂取のカロリーと輸液のカロリーが同じでも、輸液のほうが血糖上昇しやすいことを理解しておく必要があります。

なお高カロリー輸液の導入時には、血糖値を十分確認しながら、1号液から2号液、3号液と徐々に糖質濃度が増やされていきます。

 

血糖測定のタイミングを知る

高カロリー輸液が開始された場合には、1日複数回の血糖チェックが必要です。全身状態と血糖値が安定した場合でも、血糖チェックは最低でも週2~3回は必要です。

朝の血糖値が低くても日中の血糖値が高いこともあるので、定期的な昼と夜の血糖チェックも欠かせません。

 

高血糖のサインを見逃さず血糖チェックを

高カロリー輸液を行っている患者さんで、尿量増加が続く場合、口渇やだるさを訴えた場合には、高血糖を疑い、血糖チェックを行います。高血糖を見逃すと高浸透圧高血糖症候群(hyperosmolarhyperglycemic syndrome、HHS)など重い合併症が発生することがあります。また、ふだんと違う症状が確認された場合にも、迷わず積極的に血糖測定をすることが大切です。

高カロリー輸液が日中のみの使用となっているときに、夜間の発汗、動悸、せん妄などが観察された場合、夜間低血糖の可能性を考え血糖チェックを行います。

 

高カロリー輸液施行中の“インスリン投与”の注意点

単独ルートでの投与の場合

糖尿病患者に高カロリー輸液を使用する場合や、高カロリー輸液使用時の高血糖状態に対しては、原則、インスリン静注療法を行います。

インスリン静注速度が不安定だと血糖コントロールが乱れるため、単独ルートで行うことが大切です。このとき、高カロリー輸液自体も、輸液ポンプを用いて、単独ルートで24時間一定速度で落とすように調節します。

また、高濃度のグルコース輸液とインスリンを同時に使用すると低カリウム血症を起こす可能性があるので、電解質のチェックも必要となります。

 

シリンジポンプを使用する場合

速効型インスリン(ヒューマリンR、ノボリンR)50単位を生理食塩液に混和し、計50mLにします(生理食塩液1mLに対してインスリン1単位)。

高カロリー輸液とは別の単独ルートからシリンジポンプを用いてインスリンを1~3mL/時で開始します。

血糖値が安定するまで1~2時間ごとに血糖値を測定して、インスリンの注入速度を変更し、血糖値が100~200mg/dLになるように調節します。

表1中心静脈栄養中のインスリン静脈内持続投与の進め方【シリンジポンプ】

  • インスリンは、速効型インスリン「R」を使用する
  • 静脈内注射開始後2~3分で効果が発現し、通常は投与後20~30分で血糖が最も低下するため、具体的には以下の手順で行う
  • 投与に際しては、あらかじめ糖尿病専門医にコンサルトすることが望ましい

手順

  1. 50mLシリンジに生理食塩液を50mL吸引し、専用注射器で吸引した50単位の速効型インスリンをシリンジの先端から注入する(この際、生理食塩液のシリンジ内筒を引きながら注入するとスムーズに入る)
  2. シリンジを数回転倒させ、生理食塩液とインスリンを混和する(不均一なインスリン濃度による血糖変動を避けるため)
  3. 混和したシリンジより空気を抜き、シリンジポンプにセットする
  4. 通常「0.5~5単位/時」の範囲内で血糖コントロール可能であるが、血糖値が安定するまでは1~2時間毎にチェックし、インスリン注入量を少量(「0.1~0.5単位/時」程度)ずつ増減する
  5. 血糖管理は100~200mg/dLを目標とし、血糖値が安定したら血糖測定回数を段階的に4~24時間おきに減らしていく

 

輸液ポンプを使用する場合

輸液量が多くなりますが、生理食塩液500mLに速効型インスリン50単位を混入し(生理食塩液10mLに対してインスリン1単位)、輸液ポンプを用いてインスリンの注入速度を調節して血糖コントロールを行う方法もあります。

表2中心静脈栄養中のインスリン静脈内持続投与の進め方【輸液ポンプ】

  • インスリンは、速効型インスリン「R」を使用する
  • 小児用滴下セット(60滴/mL)を用いると点滴速度の調節はより容易である
  • 単独ルートからの投与が基本である

手順

  1. 生理食塩液バッグ500mL内に、専用注射器で吸引した50単位の速効型インスリンを注入する
  2. バッグを数回転倒させ、生理食塩液とインスリンを混和する
  3. 混和したバッグを、輸液ポンプにセットする
  4. 通常「0.5~5単位/時」の範囲内で血糖コントロール可能であるが、血糖値が安定するまでは1~2時間毎にチェックし、インスリン注入量を少量(「0.5単位/時」程度)ずつ増減する
  5. 血糖管理は100~200mg/dLを目標とする。血糖値が安定したら、血糖測定回数を段階的に4~24時間おきに減らしていく

 

単独ルートでの投与が難しい場合

高カロリー輸液の中にインスリンを直接入れることがありますが、いくつかのチェックポイントがあります。

速効型インスリンを用いる

点滴に入れるインスリンは、速効型インスリン製剤「R」を用います。

中間型インスリン製剤「N」、混合型インスリン製剤「30R」「30mix」、持効型インスリン製剤「ランタス」「レベミル」などは、点滴の中に入れてはいけません。

 

インスリンを輸液にきちんと混ぜる

インスリンをきちんと混ぜないと、点滴内のインスリン濃度にばらつきが生じ、血糖値が不安定となります。

バッグを数回転倒させ、輸液とインスリンをよく混和しましょう。

 

点滴の場合はインスリンの吸着分を足す

インスリンは、高カロリー輸液の点滴バッグに用いられるポリエチレン、エチレンビニルアセテートに吸着する性質をもっています。

そのため、点滴内に入れる場合には、皮下注射や持続静注で使用していた量より多い量が必要となります。医師の処方によりますが、10~30%程度のインスリン増量が多いでしょう。

 

***

点滴速度によっても血糖値は大きく変動するので、高カロリー輸液中に速効型インスリンを混注する場合も、24時間・同一速度で落とす必要があります。血糖値が安定しない場合には、以上の点を再確認してください。

 


[参考文献]

  • 1)日本糖尿病学会 編著:糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第6版.診断と治療社,東京,2014:364-366.

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2017照林社

P.11~13「中心静脈栄養(TPN)輸液投与中、なぜ頻繁に血糖をチェックするの?」

[出典] 『エキスパートナース』 2017年3月号/ 照林社

著作権について

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  • 1.「照射赤血球濃厚液(RCC)」は温度管理が不適切になると、機能低下が生じるため、冷凍した保冷剤を入れた保冷搬送容器を用いて搬送した。
  • 2.「照射赤血球濃厚液(RCC)」と「新鮮凍結血漿(FFP)」を1つの保冷搬送容器に梱包して丁寧に搬送した。
  • 3.「新鮮凍結血漿(FFP)」は、温度管理が不適切になると、機能低下が生じるため、保冷剤を入れた保冷搬送容器で搬送した。
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