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2019年09月08日

せん妄ケアにおける看護師のストレスマネジメント

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄ケアにおける看護師のストレスマネジメントについて解説します。

せん妄ケアの際の看護師のストレスマネジメントについて,効果的な方法はありますか?

自身の中でわいてきたネガティブな感情を否認・抑圧せず,信頼できる(否定的,説得的でない)関係の中で言語化できるところから始めます.

〈目次〉

ストレスマネジメントとは

ストレスマネジメントとは「ストレスを大きくしないための工夫や,ストレスによって生じている緊張状態やストレス反応の緩和など,ストレス生成のあらゆるプロセスに包括的に働きかけること」1)といわれています.

いくつか方法はありますが(☞「そのほかのストレスマネジメントの方法」へ),とくに「ネガティブな感情の意識化・言語化」をお勧めしたいと思います.

 

「せん妄ケア」で看護師に起こりやすい感情体験(ネガティブなもの)

時間的な切迫感(「あの人もこの人も」),無力感(「それでも自己抜去,それでも転倒」),孤独感(「今この場を自分で何とかしなければ」),倫理的葛藤(「避けたいけど拘束が必要?」),自己コントロール感の低下(「予期せぬ患者さんの行動」「提供したいケアの組み立てが混乱し立て直せない」)などから怒りや悔しさ,悲しみ,心もとなさなどを一度は感じたことがあるのではないでしょうか.

そしてまた“ 自分は医療従事者なのだから,あれは症状なのだからそんなこと思ってはいけない” と自分自身に言い聞かせたことはありませんか?

そうやって生じた受け止め切れない感情をなかったことにしようとしたり(否認),無意識に押し込めたり(抑圧)という防衛機制が,自我を守るために働きます.

 

我慢しているネガテイブな感情を意識化,言語化してみる

抑圧された感情が解決されずに蓄積されていくとストレスフルな状態になっていきます.そうなると自分にとって受け止めきれない感情が,あらぬところで衝動的に表出されることがあります.

たとえば,せん妄患者さんが「もうこんなところには居られない!家に帰る!タクシーを呼べ!」と夜中に騒ぎ出したとき,看護師がイライラした感情を我慢して対応し続けると「もう夜中にタクシーなんかいません! 夜なんだから寝てください!」と大声に大声で対応して有無を言わさずベッドに誘導してしまったり…….これでは患者さんはますます興奮してしまいます.

そこで重要なのは,怒りや悔しさ,悲しみ,心もとなさなど感じている自分を認め言葉にして,それを同僚や先輩などに聞いてもらうことです.

信頼できる場で開示することで“ 自分だけがこんな気持ちじゃない” といった共感をもらえたり,自己洞察のきっかけをもたらしてくれることもあります.

 

せん妄について知識を深め,対応力を高める

専門職である私たちは,現場で発揮できる熟練した技術や知識を得ていくことでの自己肯定感の高まりは何にも代えがたいものがあります.

どんなストレスマネジメントの方法よりも,看護師ができる最善のケアがせん妄患者さんに提供でき,多職種との協働がスムーズに行えたというチーム全体の対応力向上につながることが,もっともストレスをためない方法かもしれません.

 

そのほかのストレスマネジメントの方法

セルフモニタリングの意識をもつ

私たち医療従事者は,患者さんのモニタリングには訓練を積みます.その一方で,セルフモニタリングは怠りがちになっていませんか?

パワーが枯渇してきた状態,いわゆるストレスが蓄積されてくると,前ページで示したようないらいら感や衝動的な行動につながりやすくなります.

心身のエネルギーチャージは十分ですか?

その気づきによって対応が後手に回らずに済み,自己コントロール感も保たれます.

 

アンガーコントロール

自分自身のコントロールのためには怒りがある自分に気づくことからがスタートであり,表出のしかたは社会的に適切かどうかを検討します.

自身の怒りという感情の前後にどのような認知・行動が存在するか客観的に観察できると,他者の怒りの表出に対しても目の前の感情に操作されず“ 何がこの人をそうさせているのか” の分析に目を向けられるようになります.

怒りはネガティブな感情だけのように受け止められがちですが,コミュニケーションにおいて肯定的な機能ももっており,重要な感情表出といえるでしょう.

 

自分の考え方の傾向を知る

“ 自分の受け持ち患者さんのケアはどんなに大変でも自分で行わなければ” このような“〜であらねば” の自身の独特な考え方で自分を縛り付けていませんか?

「責任感」も大切ですが,正確に現状を見極め患者さんに提供できる最適なケアのために,タイムリーにSOS をチームメンバーに出せることも自身の能力です.

日頃から自分の考え方のくせについてちょっとずつ考えてみることもお勧めです.

 

デイリーハッスルを放っておかない“ 自身へのケア” を意識する

特別なトラブルがあるわけではないけれど,毎日毎日なんだかんだと余計なできごとがあって,たくさんの仕事で神経を使い,時間に追われていらいらする状況のことをデイリーハッスルといいます2)

“ このくらい(大丈夫!)” の日々のストレスの蓄積は放っておくとやがて大きな負担になる可能性は十分にあります.

日々に対応できる簡便なコーピング(ストレス要因や負の感情に働きかけてストレスを除去・緩和する方法)や,自分にあったリラクセーション法をぜひ活用しましょう.

 


[文献]

  • 1)島 悟ほか:ストレスマネジメント入門,p.66,日本経済新聞出版,2007
  • 2)鈴木安名:スタッフナースの離職を防ぐメンタルヘルスサポート術,p.5,日本看護協会出版会,2009

[Profile]
瀬尾 智美 (せお ともみ)
千葉大学医学部附属病院看護部

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

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