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2019年02月21日

脳低体温療法の鎮痛・鎮静管理|鎮痛・鎮静管理時に注意すべき看護ケア

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、脳低体温療法の鎮痛・鎮静管理について解説します。

 

脳低体温療法の鎮痛・鎮静管理

1)脳低体温療法の目的

低体温療法とは,1次性脳損傷(発熱,高体温,頭部外傷,脳虚血など)の後に,患者さんの体温を積極的に下げることによって,脳障害の進行を防ぎ,中枢神経系の保護作用や代謝抑制効果などを期待する治療になります.

中枢神経系の保護のために体温管理を行う対象となる心肺停止症候群や頭部外傷などでは,侵襲が加わった時点の体温は正常です.この時点で,神経細胞の1次性脳損傷に対して医療者は介入できません.脳低体温療法は,その後進行していく2次性脳損傷の進行を遅らせる,あるいは食い止めると言われています.

いまのところ頭部外傷に対する低体温療法の有効な方法は確立されてはいませんが,2010年改訂米国心臓協会(AHA)によるガイドラインでは,心疾患を誘因とする自己心拍再開の体系化された治療の1つとして勧告されています.

心停止後の中枢神経系の高体温は脳の障害の増悪の原因とされており,発症後の48時間以上の低体温維持と時間をかけて復温を行うことで予後を改善できる可能性があると言われています.

 

2)脳低体温療法の実際

①冷却方法

冷却ブランケットを用いて全身を覆う方法や,冷却ジェルパッドを体幹や大腿部に直接装着する体表冷却法,中心静脈カテーテルの先端にあるバルーンの中に冷却液を還流させることで体温管理をする体内冷却法があります.

 

②温度管理

患者さんの疾患や循環動態などを考慮して,医師によって決定されますが,34~ 35度の設定された温度まで冷却を行い(冷却期),約24~ 48時間はその温度を維持します(維持期).

24~ 48時間後は1 ~ 2時間に0.1度を目安に復温させていき,36度を最終目標に目指します(復温期).

 

3)脳低体温療法と鎮痛・鎮静管理

①鎮静の必要性

脳低体温療法は,導入時では短時間で低体温にすることが必要とされ,また低体温の状態を維持しなくてはならないため,覚醒している状態では生体にとっても大きなストレス・侵襲となることが想像できます.そのため,鎮痛管理だけでなく,持続した鎮静管理が必要になります.

低体温療法の適応となる心肺停止後や重症頭部外傷では,治療として人工呼吸管理が必要となります.人工呼吸器を装着することでさらにストレスが加わり,脳酸素代謝率を大きく増加させ,脳血流量(CBF)の増加と頭蓋内圧(ICP)の上昇をまねくおそれがあります.その点でも,鎮静管理が必要と言えます.

 

②シバリング対策に筋弛緩薬

低体温療法導入時から復温期にかけて,冷却によるシバリングの発生により,せっかく脳保護を目的に行っているのに脳代謝の増大,頭蓋内圧(ICP)の亢進が起こってしまうと問題です.

そのため,鎮静薬に加え筋弛緩薬での鎮静管理が行われることもあります.

 

③鎮痛・鎮静の目標値

鎮痛・鎮痛管理において鎮痛は十分に行われていると思いますが,BPSでは最低スコアである3 点が目安になると思われます.

また鎮静では,深い鎮静が導入時期から行われることが予想されるため,RASSでは- 4 ~- 5 の範囲での管理がなされることが予想されます.

 

④長期的な鎮静管理の流れを決めておく

低体温療法中は過鎮静状態であるため,低体温療法が終わってからでなく,通常体温に戻る前から,鎮静管理を治療の流れの中でどうするのかを医師と事前に決めておくことが大切です.

 


[引用・参考文献]

  • 1)パトリシア・ベナー著,井部俊子監訳:ベナー看護論,新訳版,医学書院,p.56,2010
  • 2)福田友秀ほか:集中治療室入室を経験した患者の記憶と体験の実態と看護支援に関する研究.日クリティカルケア看会誌 9(1):29-38,2013
  • 3)卯野木 健ほか:ICU 退室後の神経精神障害―外傷後ストレス障害と認知機能障害. 日集中医誌 17(2):145-154,2010

[Profile]

嶋田 一光 (しまだ いっこう)
日本医科大学付属病院救命救急センター

剱持 雄二 (けんもつ ゆうじ)
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU
集中ケア認定看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

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