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2018年12月27日

術後の鎮痛・鎮静管理の必要性

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、術後の鎮痛・鎮静管理の必要性について解説します。

術後になぜ鎮痛・鎮静が必要か

1)術後の疼痛

疼痛は原因によって,侵害受容性疼痛と神経因性疼痛に分類され,侵害受容性疼痛はさらに体性痛と内臓痛に分類されます.

表1侵害受容性疼痛と神経因性疼痛

侵害受容性疼痛と神経因性疼痛

 

術後の疼痛では,皮膚や筋層の傷害によって起こる侵害受容性疼痛(体性痛)が最も多く出現します.また,術後の疼痛の原因には,手術などの医療的処置による因子に加え,不安などの精神的因子・環境的因子が考えられます.

 

2)術後の鎮痛の必要性―術後疼痛の身体への悪影響

術後の疼痛は,肺活量や1回換気量を減少させ,咳嗽力の低下につながります.その結果,気道分泌物の喀出が困難となるため,無気肺などの肺合併症につながります.

また,疼痛は体動を制限し,離床の阻害因子(離床の遅れ)となるため,リハビリテーションの遅延・不動化により,肺合併症の発生リスクを高めます.

疼痛は,せん妄や不穏の誘発因子となります.

不十分な鎮痛は,交感神経の興奮をまねき,カテコラミン分泌を亢進させます.これが,さらなる生体侵襲となる一方,発痛物質の生成から疼痛の増強につながります.

図1術後疼痛の身体への悪影響

術後疼痛の身体への悪影響

 

以上のようなことから,術後の適切な鎮痛はとても重要です.

 

3)術後の鎮静と過鎮静の影響

過大侵襲手術後では,呼吸状態・血行動態が安定するまで,人工呼吸管理をすることがあり,鎮静が行われます.

ただし,過鎮静の影響は多数あり,生体にとって害をもたらします.

術後は早期離床によって合併症の予防や回復の促進を図りますが,過鎮静の状態では早期離床が行えません.また,随意的に筋肉の収縮を促すこともできず,ICU-AW(早期離床はなぜ必要か?参照)などの骨格筋萎縮をまねくことになります.

過鎮静の状態では,人工呼吸器関連肺炎誤嚥性肺炎,せん妄の発症のリスクを高めます.

術後の離床援助や患者さんの意志(ニード)を把握するためにも,アセスメントツールを適切に用いて,浅い鎮静管理をすることが重要です.

 

4)術後における鎮痛・鎮静管理のポイント

術後は,鎮痛管理が中心となります.鎮痛管理は,術後の早期回復のために重要であり,ERASプロトコルでもその重要性が示されています.

患者さんの術式や病態に応じて,術後の早期離床が安全かつ効果的に実施できるように,「十分な鎮痛」と「浅い鎮静」を組み合わせて管理することが必要です.

前述のように,術後の疼痛は,創部のみの痛みではありません.神経因性疼痛や同一体位による疼痛,内臓痛などさまざまです.患者さんの痛みに気づき,痛みの種類を適切に評価して対応する必要があります.

ERAS(enhanced recovery after surgery)プロトコル:術後の回復強化を意味し,術後の早期回復につながるとされる手法を総合的に取り入れた,計画的で包括的な周術期管理方法

 


[Profile]
増居 洋介 (ますい ようすけ)
北九州市立医療センター 集中ケア認定看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

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