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2019年05月22日

せん妄になっている人に身体拘束をすると,どんなことが起こるのですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄患者さんに対する身体拘束の影響について解説します。

せん妄になっている人に身体拘束をすると,どんなことが起こるのですか?

多くのせん妄患者さんは,認知機能障害があっても身体拘束を認識しています.
そのため,①身体拘束から抜けようと試みて皮膚や粘膜の損傷,窒息や転倒・転落,死亡などの重大事故のリスクが高まります.
また,②関節可動域や身体活動を制限し廃用症候群を引き起こすリスクも高まります.

〈目次〉

せん妄時も周囲のできごとや身体拘束されている状況を認識している

せん妄の患者さんは,認知機能の低下で混乱した意識の中でも,周囲のできごとや身体を拘束されている状況を認識しています1-4).集中治療を受けた患者さんのインタビュー2)でも,4割の患者さんは身体拘束された体験を覚えていました.

患者さんは,幻覚・妄想と気管挿管がもっともつらい体験で,医療者から「これをしてはいけない」と言われたことを覚えているものの,でも「それをせざるを得なかった」と述べていました2)

 

せん妄による恐怖の体験が身体拘束による重大事故のリスクとなる

別のせん妄患者さんへのインタビュー3)では,せん妄体験の多くは恐怖に満ちており,逃亡したい心理が働くことが報告されています.

そのため,拘束から抜けようと試みて自身の皮膚や粘膜を傷つけたり,拘束帯が首や胸腹部に絡まって窒息の危険につながる行動をとったり,ベッドを乗り越えようとして転倒・転落したりして,最悪の場合死亡する危険があります4,5)

実際,身体拘束の影響として,せん妄に限らず一般的な高齢患者さんのデータから,拘束をしない患者さんよりも転倒は6.7倍,転倒に伴う重大な受傷は3.6倍,転倒による骨折は4.9倍,死亡は11.2倍,リスクが高まることが報告されています.さらに,身体拘束を減らす取り組みによって,転倒や受傷が有意に増えないなどの研究結果も報告されています4)

 

身体拘束による廃用症候群のリスク

また,身体拘束されることにより,拘束された患者さんの上肢・下肢の関節可動域が当然制限されますし,身体全体の活動性も低下します.

身体拘束により入院期間が長期化し,病院から自宅退院ができず療養施設等に転院となる率は12.4倍になると報告されています5).さらに,尿・便失禁,身体活動関連の問題,院内感染,褥瘡も発生しやすくなります5)

このように,身体拘束による廃用症候群のリスクも具体的に示唆されています.

 



[Profile]
綿貫 成明 (わたぬき しげあき)
国立看護大学校

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

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◆高齢者の問題◆廃用症候群の予防的介入として、適切なものはどれでしょうか?

  • 1.お茶碗につがれたご飯が自力で食べにくい場合はおにぎりにするなど、患者さんに合わせた工夫をする。
  • 2.身体の安静のためにできるだけ長く尿道留置カテーテルを挿入しておく。
  • 3.患者さんから「なんとなく食欲がない」という訴えがあっても、一時的なものなので特別な対応はしない。
  • 4.患者さんから「動きたくない」と訴えがあれば、なるべくリハビリは行わないようにする。
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