1. 看護roo!>
  2. 看護・ケア>
  3. 鎮痛・鎮静管理マスター講座>
  4. 早期離床に向けた上手な鎮痛・鎮静管理とは?

2018年08月09日

早期離床に向けた上手な鎮痛・鎮静管理とは?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮静,可動化,せん妄,睡眠の関係について解説します。

これだけはおさえておこう

  • ガイドライン,バンドルケア,プロトコルの特徴を理解して,適切なケアを構築する必要があります.
  • 鎮静,可動化,せん妄,睡眠は関連しているため,可動化(早期離床)により,鎮静が減り,せん妄を予防し,睡眠障害を改善することが期待できます.

〈目次〉

上手にガイドラインやバンドル,プロコトルを活用する

バンドルケアは,ガイドラインなどから抽出してきたよいと思われるケアを単独ではなく,いくつかのケアセット(これをバンドル(束)という)にして行い,最大限の効果を得ることを目的とします.

プロトコルは,手順を決めて誰でも同じ水準のケアができるように定めたものです.

ICU-AWもせん妄も不眠もすべて,症状とケアが1 対1 で対応して改善するものではありません.また,それらの発症メカニズムも1 つでなかったり,明確になっていなかったりする場合もあります.

たとえば,ICU-AWへのアプローチとして行った早期離床の介入が,結果的にはせん妄や,過鎮静を予防し,患者さんの睡眠改善につながる場合もあります.

このように,重症患者さんに起こる合併症の発症やそれに対するケアは関連が深いため,予防するケアをバンドルとして取り組むことや,毎日行う必要のあることをプロトコルとすることが,患者さんの合併症発症のリスクを減らすことにつながるかもしれません.

 

不動化,せん妄,鎮静,睡眠障害の負のサイクルを断ち切る

重症患者さんがせん妄を発症したらどうなるでしょうか.

もしかしたら,過活動型せん妄で患者さんが暴れ,鎮静薬が再開されるかもしれません.点滴ルートや気管チューブの自己(事故)抜去予防のために身体抑制も行われるかもしれません.

結果的に安静臥床の状態になり,鎮静薬が切れない状態になってしまうかもしれません.その間に患者さんの筋力低下は進むでしょう.

このように,患者さんの離床に対して,せん妄の発症が影響を与えてしまっています.

一方で,鎮静薬の使用はせん妄の発症に関係すると言われますので,せん妄に対してそのまま鎮静薬を使用することは,患者さんの離床がさらに遅れることとなります.

図1を見てください.

図1重症患者さんにおける鎮静,可動化,せん妄,睡眠の関係

重症患者さんにおける鎮静,可動化,せん妄,睡眠の関係

[IHI:Sedation, Delirium, and Mobility in ICU Patients. より筆者翻訳して引用 http://www.ihi.org/topics/SedationDeliriumMobility/Pages/default.aspx(2014 年4 月5 日検索)]

鎮静,可動性,睡眠,せん妄の4つは互いに関係し合っています.

鎮静管理は,睡眠障害やせん妄のリスクを高め,患者さんを不動の状態としてICU-AWのリスクを高めます.

一方,患者さんを可動化(モビリゼーション)することは,鎮静を減らし,睡眠を改善させ,せん妄が改善するということです.鎮静が減れば,患者さんは自分で動くことができます.せん妄のリスクも減り,睡眠障害も改善するということです.

実線のような負のサイクルを断ち切り,破線のような改善のサイクルを回すことで,患者さんは不要な合併症を発症することなく,ICUから退室できるでしょう.

 

one point

鎮静薬の減量や終了は,プロトコルやバンドルといった“決まり”があれば達成できるわけではありません.鎮静を中止した時に,まずは患者さんの苦痛の理解に努める必要があります.

鎮静中止の前
に,「人工呼吸管理を受けているから辛いに決まっている」「今起こしたら辛いに決まっている」という決めつけや思い込みをなくすことから始めないといけないのかもしれません.

人工呼吸管理を受けていること自体が,根源的な苦痛の原因かもしれません.しかし,患者さんが覚醒していることにはメリットがあります.

患者さんが苦痛を表出でき,看護師はそれをできるだけ緩和するように努めるという当たり前のケアが,患者さんに安心と安楽を提供することにつながると考えます.

 


[引用・参考文献]


[Profile]
山田  亨 (やまだ とおる)
邦大学医療センター大森病院特定集中治療室
急性・重症患者看護専門看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

著作権について

この連載

  • ABCDEバンドル [09/06up]

    『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。 今回は、ABCDEバンドルについて解説します。 これだけはおさえておこう 「鎮静よりも鎮痛,隙あらば鎮静薬からの離脱と自発呼吸トライアル,脱安静,その... [ 記事を読む ]

  • PADガイドライン [08/23up]

    『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。 今回は、PADガイドラインについて解説します。 これだけはおさえておこう PADガイドラインとは,重症治療で生じる痛み(Pain),不穏(Agitat... [ 記事を読む ]

  • 早期離床に向けた上手な鎮痛・鎮静管理とは? [08/09up]

    『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。 今回は、鎮静,可動化,せん妄,睡眠の関係について解説します。 これだけはおさえておこう ガイドライン,バンドルケア,プロトコルの特徴を理解して,適切な...

  • 早期離床のためにはどのような鎮痛・鎮静管理がよい? [07/26up]

    『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。 今回は、早期離床のための鎮痛・鎮静管理について解説します。 これだけはおさえておこう 早期離床のためには,鎮痛を主体とした鎮静管理により鎮静薬を減らす... [ 記事を読む ]

  • 早期離床はどのように行う? [07/12up]

    『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。 今回は、早期離床の進め方について解説します。 これだけはおさえておこう 早期離床を行う前に,患者さんの状態や,輸液ルートやドレーン類などの挿入状況など... [ 記事を読む ]

もっと見る

関連記事

いちおし記事

MCIがアルツハイマー病に発展する原因は?

ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」を題材にわかりやすく解説。 [ 記事を読む ]

ドレーンの種類と管理方法

ドレーン排液の異常や固定部のずれ、ゆるみの有無を観察しましょう! [ 記事を読む ]

人気トピック

看護師みんなのアンケート

看護師辞めようかと思うほどに怖かったインシデント、経験ある?

投票数:
1084
実施期間:
2018年11月27日 2018年12月18日

最初の患者さんのこと、覚えてる?

投票数:
1087
実施期間:
2018年11月29日 2018年12月20日

【クリスマス】サンタにお願いしたいプレゼントは?

投票数:
1139
実施期間:
2018年11月30日 2018年12月21日

人生で一番号泣した作品は?

投票数:
1023
実施期間:
2018年12月04日 2018年12月25日

感情を一生出せないとしたらどれが一番つらい?

投票数:
987
実施期間:
2018年12月07日 2018年12月28日

安楽死に賛成?反対?

投票数:
800
実施期間:
2018年12月11日 2019年01月01日

今年一番の個人的なニュースは?

投票数:
530
実施期間:
2018年12月14日 2019年01月04日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者3361

Bさんは独居の80歳代男性です。発熱のため、精査入院となりました。既往歴は糖尿病で、持参薬は3種類でした。担当看護師が、Bさんの持参薬を確認し、持参薬確認報告書を作成して主治医に提出しました。主治医からは、糖尿病治療薬を中止し、インスリンスケール対応とする指示を受けました。担当看護師は、Bさんの認知機能が良好であったことから持参薬の自己管理は可能であると判断しました。そこで、Bさんに糖尿病治療薬の服用中止を口頭で伝え、持参薬を自分で管理してもらうことにしました。その2日後、担当薬剤師がBさんに服薬確認したところ、服用中止のはずの糖尿病治療薬を現在も服用していることが分かりました。今後のBさんの服薬管理について、最も適切なものはどれでしょうか?

  • 1.Bさんにもう一度服薬指導をする。
  • 2.自己管理は中止し、看護師管理とする。
  • 3.Bさんにもう一度服薬指導をし、中止した薬は付箋を貼って分かるようにした。
  • 4.Bさんにもう一度服薬指導をし、中止した薬は看護師が預かった。
今日のクイズに挑戦!